本文へジャンプ

コラム

オートオークション市場でも先物は有り得るか?

(商品先物市場に「鉄スクラップ」を上場へ。中部商品取引所で10月11日から)

市場規模は年1兆円程度。商品名は今後「鉄スクラップ」に代わる親しみやすい愛称を募集する。取引されるのは、「新断(しんだち)」と呼ばれる主に自動車のボディ・フェンダー等をプレス加工する時に発生する切抜きの残り屑で、取引単位は20t。スクラップ業者や商社などが市場参加者に
<2005年07月26日号掲載記事>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

中部商品取引所が「鉄スクラップ」を商品先物市場に上場し、今年の 10月 11日に取引を開始すると発表した。世界初の試みだそうだ。

取引されるのは、自動車工場でのかたどりの後などに出される「新断(しんだち)」と呼ばれるスクラップで、取引単位は 20 トンを予定している。 市場参加者としてはスクラップ業者や総合商社・専門商社などを想定しており、上場の為の発起人としても 11 人居ればよいところが、その数は既に 20 社を数えるとのことだ。

【先物取引とは】

中部商品取引所のホームページによると、先物取引について以下のように説明されている。

ある将来の一定の日を受渡しの日と定めて、今の時点でのその価格を取り決め(買い契約・売り契約)、その日になったら代金と品物とを受渡しする取引です。ただ、もしもその品物の受渡しをしたくなければ、その最終決済日(納会)が来る前に、買い契約をした人は先物市場で「転売」し、売り契約をした人は 「 買戻し 」 をすれば、物の受渡しをせずに決済(契約の解除)をすることができるルールになっています。これを現物先物取引といいますが、このルールを利用して価格変動によるリスクヘッジや資金運用手段の 1 つとしての商品先物取引があります。

具体的には、何らかの商品を例えば定期的に売っている、若しくは買っているプレーヤーが、同商品の一定期間将来需給分の売り・買いの数量・価格(即ち取引)を約束しておくことで、市場における相場変動リスクを管理することを可能にする仕組みと言っても良いだろう。

【市場規模】

鉄スクラップ全体の市場規模としては 1 兆円という数字が述べられているが、この数字は鉄スクラップの国内需要(供給)全体の数字である。

実際に当面取引対象として上場するのは、この鉄スクラップを(1)加工スクラップと(2)老廃スクラップの 2 つに分けたうちの、(2) 加工スクラップに属する、「新断」と呼ばれる、主に自動車のボディ・フェンダー等をプレス加工する時に発生する切抜きの残り屑である。

因みに、(1)加工スクラップは何らかの生産の際に工場などで発生するもので、(2)老廃スクラップとは使用済み自動車を含む、何らかの使用を経たもの。

中部商品取引所のホームページに掲載されている、「鉄リサイクル資源流通安定化検討委員会報告書」によると、国内購入スクラップ合計 35 百万トンのうち、加工スクラップは 17.9 %の 6.8 百万トン、老廃スクラップは 82.1%の 31 百万トンであり、加工スクラップのうち 50.2 %が自動車を発生源とする。また、同加工スクラップのうち、61 %が今回の先物取引対象である新断と言われるものであることから、数量ベースでは新断の比率は全体の 10.9 %の 4.1 百万トンとなる。

この比率を用いることが妥当であるかは別にして、単純計算をすれば、1 兆円x 10.9 %=1,090 億円が当面の市場規模ということになるだろうか。(同報告書では、新断は流通総量の 17 %という別の数字も存在する)。

【新断からスタートする理由】

先物取引を新断からスタートする理由としては、発生場所の特定可否、当該商品に対する幅広い需要の存在による多くの需要家の取引参加見込みなど、複数の理由が挙げられているが、1 番の理由は「品質要求水準の統一化が可能で、標準品化が用意であること」であろう。

即ち、業界での統一基準が比較的普及しているということである。

【中古車競売(オートオークション)市場と鉄スクラップ先物市場との比較】

さて、こうして 10月に予定されている鉄スクラップ先物市場の状況を見ていると、自動車業界の人間なら、身近な市場との共通点を見出すのではないか?

そう、オートオークション市場である。

オートオークション市場は全て現物で取引されており先物は存在しないものの、実際には現物のみの売買を目的とするプレーヤーに混じって所謂ブローカーと言われるプレーヤーがスペキュレーションを行うことにより流動性を維持しているという実態がある。

その取引台数は年間 6.8 百万台(出品ベース)で、成約率約 55 %。1台当りの平均取引金額を 57 万円と仮定すると、成約ベースでも 2.1 兆円の総市場となっており、現物ベースでの取引額は鉄スクラップ市場の合計である 1 兆円の 2 倍強となっている。

【オートオークションの無限の可能性】

オートオークションという巨大な市場における、先物取引導入というのは、今後の方向性としては十二分に考えられるだろう。マーケットそのもののボラティリティは高く、売り手・買い手共に一定期間の需給をカバーする形での相場リスク管理を必要とし、総市場自体は巨大であるということだけでも、その可能性は十二分にありえるだろう。

先物に限らず、統一の品質に対する期待と基準の導入さえ可能になれば、スペキュレーターも存在することから、付帯する金融商品の開発の可能性は無限に広がるだろう。

その意味でも、鉄スクラップ先物が新断という 1 商品形態からスタートしたように、オートオークション市場の中でも限られた商品形態から次のステージの取引設計を開始しても面白いのではないか。

<長谷川 博史>

  • コラム
  • 業界アンケート
  • 書籍&レポート
メールマガジン

住商アビーム自動車総合研究所が発信する各種情報をご紹介します。当研究所のスタッフが日々移り変わる自動車業界を、経営と現場を結ぶ視点で紐解いた記事やコラム、等です。

無料配信申し込みはこちら
PDF メルマガ見本はこちら

News -プレスリリース・メディア対応 自動車業界ライブラリ

UPページの先頭へ