マツダ、全国900店のビジュアルアイデンティティー(VI)を…

◆マツダ、全国900店のビジュアルアイデンティティー(VI)を統一へ、3年間でブランドメッセージ「Zoom-Zoom」を徹底する為、壁面デザインなど統一化

◆アウディジャパン、販売店に「接客・サービスの評価」での報奨金制度
トヨタによる「レクサス」ブランドの国内導入に備え、接客態度やサービスの質などの評価を点数化し、最大で新車売上額の1%を報奨金として支払うことで顧客満足度を向上させる。点数化するのは、「期日の厳守」「継続的なコンタクト」「再修理などの点検」「領収書明細の詳しい説明」の4項目。

◆日産、販社に入庫する車の整備データを活用し、整備性の高い車を開発へ整備データをオンラインでメーカーに集約し、販売現場からの情報を生かす

<2005年02月18日号掲載記事>
——————————————————————————–

【経営とは何か】

「経営とは何か」という問いに対する答えは難しい。ある人は「収入と支出の調整・管理」や「キャッシュインフローとアウトフローの調整だ」といった財務的な側面を先ずは強調するかもしれない。また、ある人は「社会貢献の手段」や「自分の夢・志の実現そのものだ」といった価値提供や自己実現を述べるだろう。
「競合を打ち負かす為の行動」や「差別化を如何に図るかの手法」といった競争戦略や、「組織の最適運用と人間作り」といった資源面からのアプローチも可能だ。
筆者は凡そこれら全てが正解であると考えるが、大切なのは全てが「整合性の取れた絶えざる行動でなければならない」ということだ。即ち、上に挙げた全ての繋がりを重視し、優先順位をつけながらも、同時並行に取り組む行動そのものが、経営活動ではないだろうか。
別の言い方をすれば、経営とは顧客が価値を感じるサービスと、それを生み出す源泉である資源との整合性を取りつつ、両者を向上させながら、収支のバランスを維持していく絶えざる行動の全てと言っても良いかもしれない。

【3つの記事にみる、メーカー施策の整合性】

本日取り上げた記事 3 つは、
全て販売店(ディーラー)レベルでのメーカー・インポーターの施策である。

・マツダ
商品コンセプトからはじまり、TV などの宣伝での打ち出しも実施している「Zoom-Zoom」のブランドメッセージと、店舗レベルでの拠点イメージ・デザインなどとの整合性確保が狙い。

・アウディ
ディーラー販売員の接客態度やサービスの質をポイント化して、インセンティブを付与することにより、商品が提供する上質感と販売員が提供するサービス内容のクオリティとの間の整合性確保が狙い。

・日産
顧客が欲する「時間と費用を軽減したサービス商品」を提供する為に、自社新型車開発資源を最適化する。即ち、サービスとその源泉である資源との整合性の確保が狙い。

【ディーラーにおける整合性の取れた絶えざる行動】

メーカー各社は自社内での経営活動の一環として、商品・サービス、拠点、人的資産を統一感を持った形で運用することをディーラーレベルで狙っているわけだが、これらは全てメーカー・インポーターレベルにおいて考えられたものである。よって、実践の最前線に立つディーラーに措いては、「面倒だな、またショールームの改装?」、「しっかりお客様に満足してもらっていればいいじゃない。なんでインセンティブ対象になるの」、「データをまたインプットしないといけないの」といった意見もあるだろう。

しかし、こうしたメーカーの打ち出す施策を基に、ディーラーレベルであっても同様に、整合性の取れた「経営施策」は必要となる。これはメーカー側の経営施策と矛盾するものではいけないが、かといって完全に迎合することがベストなわけでもない。

メーカーは、商品企画・開発、調達、生産、卸売、小売までを統一感のある形で経営することを目標としているが、例えばディーラーにとっては、バリューチェーンにおけるその先である小売以降をメーカー経営施策と統一感を持たせながら経営していくというのはあるだろう。本当の価値の源泉は常に自社の外、顧客に 1 番近い場所に存在することを考えれば、車を保有している顧客に対する継続的なサービス提供が、ユーザーの満足を最大化し、結果として収益に結びついてくるという考えは正しい。

【自動車アフターマーケットの魅力】

自動車関連産業の総市場は約 100 兆円、国内総生産(GDP) 500 兆円の 20%を占める。 この自動車関連産業 100 兆円の内訳を見ると、60 兆円=6 割は流通、整備、サービス、ガソリンステーション、資材関連、駐車場といった所謂アフターマーケット部門が占める。 更に粗利で見ると、全体の 90 %以上がアフターマーケット部門で発生している極めて魅力的な市場である。

しかも、このアフターマーケットの領域では、個々のセグメントで多数の中堅・中小企業がアセットを重複させながら独自の事業を展開している。アフターマーケット内で 最大の規模を有する自動車流通業界(新車ディーラー、買取専門会社、オートオークション、入札会、中古車専業会社、中古車輸出業者など)も同様に、参画企業数が多くバリューチェーン形成には至っていない為、例えば、新車ディーラーが通常新車として取り扱うブランドの信用力を背景に(理論上は)お客様向けの価格を専業店のそれよりも高くポジションさせながら、その後の流通再編に大きな影響を及ぼすことも可能なはずである。

こうしたことを裏付けるように、ディーラーにとっての収益の中心も、新車販売から、中古車を含むアフターマーケットへと移行しつつある。

【おわりに】

私自身、経営について常日頃考える人間として、またお客様が経営について考えるのをお手伝いする立場の人間として、自社若しくはお客様にとってどういった役割を演じるべきかを常に意識しながら、可能な限り多面的に物事を捉えるべく努力をしている。

しかし、経営が「絶えざる行動」である以上、重要なのは「アクションを起こすこと」である。経営を企画したり、計画化したりといったことは重要だが、それらに基づく自らの「行動」こそが、経営そのものであり、全ての原点である。そして、自動車業界におけるこうした「行動」を共に起こせるパートナーとの巡り合いが、我々のやりがいである。

<長谷川 博史>