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コラム

ディーラーの行方(5)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/

第 4 弾は、弊社副社長の長谷川博史が、ディーラーの現状、今後について 5 週に渡って紹介する。今回はその最終回にあたる。

第4弾『ディーラーの行方(5)自動車メーカーへの提言』

(日刊工業新聞 2004年09月01日掲載記事)
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【今回の話】
最終回である今回は、「自動車メーカーがディーラーとの関係を、指導・被指導関係から協業体制へと変えていくべきである」という点について提言したい。

【マーケティングとは】
マーケティングとは価値を提供する企業側の幾つもの活動を融合することにより、これを受け取る・感じる側である顧客を支援する活動と言える。これら諸活動を分類する考え方としては 4 つの P (Product ・商品サービス内容、Price ・価格レベルや条件、 Place ・流通手段や方法、Promotion ・販売営業促進)が有名だが、効果的な支援の為には全ての P を最適な形でミックスする必要がある。

【メーカーとディーラーの関係】
自動車製造販売業にとって、ディーラーは 4P のうち特に Place (流通チャネル)と Promotion (販売営業推進)を担う中心的存在であり、メーカーは Product (商品)と価格(Price)を担う。即ち、製品・サービスの価値を顧客に伝達する為には、自動車メーカーとディーラーはそれぞれが有する 2 つずつの P を互いに提供し合いながら、協力するパートナーでなければならない。 しかし、残念ながら現実にはメーカーとディーラーの関係は「パートナー」とはなっていない。原因は従来の自動車製造・販売業のやり方と、それに基づくメーカー・ディーラー両方で働く人間のマインドセットにある。

【ディーラーは】
例えば、ディーラー経営者の多くは今でも自分たちの命運はメーカーの販売方針・戦略に左右されると考えている。理由は、商品設計及びその割り当て(Product)、インセンティブを通じた価格決定(Price)においてメーカーが大きな影響力を有していること、加えて過去の経営不振の際などにはメーカーからの援助が期待出来たというところにある。

【メーカーは】
一方、メーカーの側でも従来はチャネル別に類似の商品を別ブランド名で販売することにより表面上の差別化を図りつつ、ディーラーチャネル毎の有限な経営資源を計画的に与えたモデルに集中投下させることが成功モデルであったことから、複数ディーラーチャネルを商品やインセンティブを通じてコントロール・維持してきた経緯がある。

【時代の変化】
確かに従来の右肩上がりの市場環境では主にメーカーが有する 2 つの P である Product (商品)と Price (価格)の組み合わせを通じて、新しい顧客に対して「新車販売時に」価値を最大化することが成功の鍵(KFS)であった。 しかし、昨今の新車市場の成熟化に伴い定期的な新規需要の期待が出来ない環境下では、「新車販売以降」の「車両保有期間を通じた」顧客への価値を最大化がより重要になっており、「既存顧客の買い換え率(リテンション・顧客防衛率)」を上昇させながら、これを基盤に他社のシェアをも取り込んでいくことが新しい KFS となりつつある。
即ちこれからのメーカーとディーラーは、古い KFS に基づく固定観念を払拭し、主要カスタマータッチポイントである(1)新車購入ステージ、(2)保有ステージ、(3)車両下取り(買い換え)ステージの全てにおいて、4 つの P を効果的に配分しながら顧客向け提供価値を最大化する諸活動を共同で取り進めていかないと成功を掴むことは出来ない。

【残価率について】
ここで筆者は、この諸活動の成果を表す重要な指標として「残価率」を挙げたい。
* 残価率とは新車価格に対する一定期間経過後(一般的には 3年)の中古車市場取引価格の率を言う。残価が高ければ、買い換え時に顧客が実質的に負担する必要のあるコストは最小化される為、買い換え促進効果も高くなる。

【メーカーへの提言】
残価率は、顧客ニーズにマッチした優良な商品を開発・高価格で販売・その後の保有期間を通じて継続的に顧客に価値提供を行う、といった全ての企業活動を通じて顧客が受け取った価値が高ければ高いほど高くなる。残価率を引き上げる効果を有するファクター及び影響を与えることが出来るプレーヤーは多岐に渡っているものの、これらファクターをブレークダウンして個別のプレーヤー(ディーラーを含む全てのテークホルダー)に紐付けることで具体的なアクションへと結びつけていくことが、これからの自動車メーカーの成功には必要であろう。

<長谷川 博史>

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