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コラム

現代自動車の鄭夢九会長、伊フィアットを挙げ「透明性にか…

◆現代自動車の鄭夢九会長、伊フィアットを挙げ「透明性にかける企業は淘汰」

現代自動車グループの新入社員1200人を対象にした講演会で、伊フィアットを引き合いに「透明性の足りない企業は顧客の信頼を失って滅びる」「起亜自動車の買収後、まず最初に関連会社との不正腐敗をなくし、信頼を回復させた」「会社の競争力は新技術や品質、価格などにあるが、その土台は透明性」「透明かつ倫理的企業だけが世界的な企業になれる」などと述べた。

<2004年08月25日号掲載記事>
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「企業は透明性を確保しないと競争力を確保できない」という言葉と、「ブラックボックス化」という言葉は相容れるのだろうか?と疑問に感じたことは無いだろうか。

記事のように「透明性が欠けた企業に成長は無い」という議論がある反面、競争力を維持する為には、競争力の源泉をブラックボックス化することが重要であるともよく言われる。

実は両者には共通の目的が存在する。

それは、「ステークホルダー(利害関係者・特に株主)へのリターンを最大化する」という目的である。

・「透明性を高める」ということ

「企業が透明性を高めるべきである」という議論は主にコーポレートガバナンスの議論において盛んに展開されているが、これは特に経営陣の不正を牽制することによりステークホルダーに還元されるべきリターンを守る、というものである。具体的には「企業」という仕組みが取り進める「負託」、「創造・提供」、「還元」の 3 つのプロセスの中で、主に経営陣(但し、従業員や取引先なども含む)が本来株主などのステークホルダーに還元しなければならない資源・資産を不当に奪うことを回避することを目的とする。

1)「負託」
企業は、従業員から労働力を、株主から出資金、銀行から借入金といった様々なステークホルダーから資源・資産を託される。
2)「創造・提供」
企業はこれらを運用する責任を負う。具体的な運用の方法は顧客に対して価値を提供する替わりに何らかの資産(含、キャッシュ)を得る、という方法。
3)「還元」
得た資産(キャッシュ)を今度はまた従業員、株主、銀行などのステークホルダーに還元する。

・「ブラックボックス化を高める」ということ

一方、「ブラックボックス化を高める」という行為も、コーポレートガバナンスにおける「透明性を高める」という行為と同様に、ステークホルダーに還元するリターンを守る、というものである。ブラックボックス化が高められるのは、上の 3 つのプロセスである「負託」、「創造・提供」、「還元」のうち、主に「創造・提供」プロセスにおいてである(技術や製法、開発手法など)。

競合にこの競争力の源泉を開示してしまえば、当然模倣をまねき、結果自社商品サービスの差別化は消滅し、利潤は消滅する。利潤の消滅ということは即ち、ステークホルダーへの還元が行えない結果となってしまう。

・両者の違い

両者の違いは、対象先が「内か外か」という点である。

内とは、ステークホルダー内。つまり、ステークホルダーに対しては透明性を高めることが重要である。

一方、外とは、ステークホルダー外という意味。外の存在とは、具体的には「競合」の存在である。つまり、競合に対しては、ブラックボックス化を図ることにより模倣を回避することが重要。

以下、「透明性を高める行為」と「ブラックボックス化を高める行為」を比較してみた。

透明性を高める ブラックボックス化
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1)目的 :  ステークホルダーへの   ステークホルダーへの
還元を守る。   還元を守る。
2)内容 :  コーポレートガバナンス、 コアコンピタンスを競
主に経営陣の不正を牽制。   合から見えなくする。
3)対象先: 対内的(ステークホルダー) 対外的(コンペティター)

・結論

つまり、「内には透明性を高めながら、外にはブラックボックス化」が正解であり、両者は当然並存可能な概念である。

但し、忘れてはならないのは、「託した側へ開示した」と経営陣としては考えているものの、「ステークホルダーの納得を得られない」ケースである。

例えば、企業の経営者が自社のコアコンピタンスの「ブラックボックス化」に繋がるという認識の元に、何らかの企業の業績内容などの開示を拒んだとする。ステークホルダーの納得を得られない場合、結果としてこれは「透明性を拒む」行為であると見なされてしまう可能性がある。

特定の株主や、系列などを経由したその他ステークホルダーとの固定的且つ安定的な資源の確保が可能であった時代が終わりつつある昨今、情報開示と説明責任が益々重要になっている。
よって、内への透明性は徹底的な説明を通じて納得を取り付けることで高めながら、外(競合)にはブラックボックス化を図る、というやり方を実践することが、記事にある韓国企業のみならず、今後の日本企業にとっても肝要であろう。

<長谷川 博史>

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