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コラム

ダイムラークライスラー、欠陥車問題で三菱自動車への損害…

ダイムラークライスラー、欠陥車問題で三菱自動車への損害賠償請求を検討

三菱自動車が8日、『当社との三菱ふそう株式の売買契約に基づき、補償請求を検討している旨の通知を受けましたが、今後実際に請求がなされるかは、明らかではありません。また、請求される場合でも、請求の具体的な内容は現時点で不明』と発表した。三菱自動車は今年3月までにダイムラーに対し、三菱ふそう株65%分を約1400億円で売却している。

ダイムラー側は、「リコールのもみ消しや、工場でのヤミ改修」を問題視しており、損害賠償請求訴訟に関しても「株主利益の観点から、権利を行使するかどうか検討する」としている。

◆フェニックスキャピタルの安東氏、三菱自動車に「今すべて出して欲しい」

三菱自動車への出資について、「一定の条件がそろえば、うちの方針は何も変わらない」、「投資後に明らかになるよりは、今すべて出してほしい」、ただ、増資引き受け条件の1株100円は、「見直す可能性もある」と述べた。

<2004年06月08日号掲載記事>
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三菱自動車がダイムラーに売却した三菱ふそう株式について、最大200億円規模の補償請求がなされる可能性が浮上している。

一般的に株式売買を行う場合、各種監査を通じて株式価値を評価し、契約書上にその価格を織り込むわけだが、「監査を通じて把握出来ない事態」が企業価値を著しく減少させる場合などに備えて、その減少分を売り手が補償するといった条項を挿入することがある。今回ダイムラーは、「ふそう」を子会社化した後、相次ぐリコール隠し事件が判明したことを理由に、補償請求をすることを検討しているわけだ。

私は実際の契約書上文言を把握しているわけでも弁護士でもないので、補償請求が妥当なものかといった議論をするつもりはない。

ただ、
「株式売買契約に伴い、ダイムラーに売却した株式の価値について、補償を請求される可能性がある」

という事態と、

「商品売買契約に伴い、消費者に対して販売した商品が、その本来の使用目的を達成しなかったことを理由に、リコールが発生し、結果販売が著しく減少している」

という事態には、重要な共通点があるということを指摘したい。

これは、資産や商品に瑕疵が存在するにも関わらず、契約時にそれを開示せず、その後も放置してしまったという点である。

フェニックスキャピタルの安東CEOの「投資後(契約後)ではなく、今(契約前に)全て出して欲しい」という発言も、「契約前にありのままの姿を見せてもらえれば、条件面での見直しなどが可能であるが、契約後になってしまうと・・・」という意図があると思われる。

さて、繰り返し出てくる「契約」という言葉は、当事者間の約束事という意味なわけだが、この「契約」を成り立たせるための条件が、日本と英米の間で異なることはあまり知られていない。

今回の三菱自動車の件に限らず、日本企業にとってのコンプライアンス問題を考えるうえでも日米の「契約」成立条件の差を比較することは意味があると考え、以下紹介したい。

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日本において契約は「申込み」をして、相手がそれを「承諾」したときに成立するが、米国コモンローではこれに約因(Consideration)が加わる。※

※(厳密には、約因Cosideration、契約能力Legal Capacity、合法性Legalityを加えた5条件)。

「約因」とは、一方が他方に対して申し込まれた行為、約束、不作為で、相手方によって承諾された同意に至るための誘引となるものと定義され、以下2つのタイプがある。

1)基本的な約因
契約を成立させるために、それぞれ相手方に価値のあるものを提供し合う
2)法的不利益
不作為は、法的に権利のある行為を、合意により行わないという消極的な行為だが、これも有効な約因。

契約とはつまり、相互に何らかのfavorを提供若しくはUnfavorをgive-upして、相手方の同意を誘引するもの。何を与えるか、何をgive-upするか。

約因が無いと、米国では「契約」は成立せず、「贈与」となるそうだ。
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私は三菱自動車に限らず、日本の企業では、この約因の交換というコンセプトが希薄であると考える。即ち、何を相手に、会社、社会に、国に与えるか・提供出来るかという発想が約束事の中で欠けがちではないだろうか。

昨今、日本企業は各社コンプライアンスを重視する姿勢を見せているが、単なる遵法といったレベルから更に一歩踏み出し、「各契約で約因を満たしているか、∴相手に価値のあるものを提供しているか」を基準に考えれば、違法行為や相手の当事者に不利益を与えながらも価値(お金)を得る、という行為はありえないはずだ。※

※それでも、米国ではエンロン事件をはじめ、約因を無視した商行為が行われている事実は存在するため、約因重視=違法行為減少とは必ずしもならないが、「契約の相手に何を提供できるだろう」ということを、「会社を守る」といったことよりも重要するという考え方は重要だろう。
またある意味、米国のように契約に「約因」というコンセプトが存在するにも関わらず、契約の相手を陥れるような行為をした場合、確信犯であるということも言えるだろう。
上記説明の通り、契約とはお互いに価値を交換する行為・即ち商品やサービスを通じた価値を提供する代わりに金銭などの価値を提供してもらうといった双方向の行為であるべきだ。

商品やサービスに瑕疵が存在し、買い手が契約した目的が達成できない場合は、売り手は一刻も早くその瑕疵を修復しなければ、その商取引は契約ではなく、買い手から売り手に対する一方的な贈与になってしまう。
贈与を希望していない相手に贈与を強いる行為は健全ではない。

三菱自動車の経営陣及び全ての日本の経営者には、今後この「約因」という概念に基づき、自分・自社の社会における役割をしっかり認識し、如何に契約相手に対して貢献可能かを常に考えることで、更なる健全なる事業活動の遂行を期待したい。

<長谷川 博史>

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