富士重工、次世代故障診断システム「スバルセレクトモニタ…

◆富士重工、次世代故障診断システム「スバルセレクトモニター3(SSM3)」導入

自動車の車載電子制御システムの迅速かつ的確な点検による診断力の向上を図り、スバル車ユーザーへ満足度の高いアフターサービスを提供する。

市販パソコンに診断ソフトを組み込み使用でき、車種別に特殊カートリッジで供給していた故障診断ソフトのCD-ROM化が可能に、低価格で最新データを提供できるほか、操作性と表示機能も格段に向上している。

<2004年05月18日号掲載記事>
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故障診断システムとは、エンジンの不具合やブレーキの不具合などを各種センサーを通じて感知、不具合の箇所や原因などを特定システムである。

初期の自動車は単純に内燃機関と各種部品で構成されており、所謂機械工学の世界の製品であった。しかし昨今、エンジンの微妙な調整やブレーキの作動など、あらゆるところで電子制御が導入され、電気工学の世界の製品と化してきている。今後、自動車の電子制御は更に増加すると予想され、結果、電気的に故障の個所などを診断する、所謂「テスター」と言われる診断システムの活躍する領域は広がると思われる。

昨今の各社リコール問題などに関わらず、そもそも自動車というものは安心して移動できる便利な手段としての機能を最低限具備している必要があり、テスターの開発により車の不具合を早めに察知して、安全性を高めることは、メーカーにとって自らの存在理由を維持するための最低限の行動である。

しかし、メーカー自身によるテスターの導入にはもう一つの重要な狙いが存在することを忘れてはならない。

それは、自らのディーラー網支援とお客様のリテンションという狙いである。

メーカーは自社が開発した車で使用している電気信号のプロトコルを外部に開示することは、通常行わない。また、このプロトコルを読み込み診断するテスターも自社で開発する。そして、開発したテスターは自社系列の正規ディーラーにのみ配布する。これにより、一般の整備工場、即ち機械工学の世界の整備を得意とする人たちが整備に携われる領域を狭めることが可能になり、結果、メーカーは整備に関わる収益を自社グループ内から外部流出することに歯止めをかけることが可能になる。

メーカーからすれば、ディーラーには各種支援金に頼ることなく自助の精神に基づき、自らの力での販売網の維持・拡大を期待したい。しかし、一般的に自動車ディーラーの収益構造は新車販売での利益は少ない。

よって、ディーラーによっては中古車、部品、そしてアフターサービス・整備での売上による利益を維持・拡大していくことが重要であり、そのための環境整備をメーカーがサポート可能な数少ない領域がこの自社専用テスターの領域なのである。

自動車整備の市場は整備売上で年間6.3兆円を超える大きな市場だがメーカー系自動車ディーラーによる整備売上は3兆円、所謂整備工場による整備売上は3.3兆円である。

しかも、日本には自動車整備工場が6.5万箇所以上あり、殆どの整備工場は中小規模の企業である(ディーラーの整備事業場の総数は1.6万箇所)。

即ち、自動車メーカーからすれば、3兆円の市場のうちどれだけを自社系列ディーラーに取り込めるか、という重要な戦略を実現するための手段としてテスターは位置付けられている。たかがテスター、されどテスターである。

事実、テスターのみの影響ではないが、この2年ほどの自動車整備売上を見ると、自動車メーカー系は増加している反面、独立系の整備工場は売上を減らしている。

自動車アフターマーケットの中で事業所数が一番多いのが自動車整備工場である。ある意味、日本のモータリゼーションを影で支えてきた存在であるが、受難の時代であるのは間違い無い。

<長谷川 博史>