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コラム

価値を生み出す経営とは(2)・お金って何?

エンジニアや、普段「数字」にあまりお触れる機会の無い方、若しくは「数字」には触れているものの、それらの意味合いについてあまり考える機会の無かった方に、なるべく分かり易く「価値を生み出す」という行為がどのように数字に置き換えられているかという、基本的な考え方を紹介したいと思います。気楽に書きますので、気楽にどうぞ。

第2回: お金って何?

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そもそもお金というものの意味を考えてみよう。

貨幣というものが存在する以前は、人類は市場(いちば)で必要なモノ・サービスを交換していた。即ち物々交換。

物々交換では交換を行う両当事者が同じタイミングでそれぞれ相手のモノと「交換しても良い」と思う必要があった(欲望の二重の意味での偶然の一致・Double Coincidence of Wantsと呼んだりする)。

ここに山で木に登って果実を取るのが得意な人と、海に潜って魚を獲るのが得意な人が居たとする。

木登り名人が自分で消費する以上の果実を獲り、素潜り名人が自分で食べる以上の魚を獲ったとき、交換の基礎条件が成り立つ。

但し、実際の世の中には名人が2人しか居ないということは無く、それこそ何億人と存在する。それぞれが自分の得意なことを追求して、余剰の生産物をほかの人のそれと交換しようとしたとき、大きな市場(いちば)で物々交換していては面倒。

否、面倒だけでなく例えば、Aさんは木の実を持っていて魚が欲しい。
Bさんは魚を持っていて鳥が欲しい。Cさんは鳥を持っていて木の実が欲しい、といった状態の場合、3人が全員揃えばクリスマスのプレゼント交換さながら3人輪になって一つずつ右にプレゼントすれば交換は成立するが、これが3人でなく1億人が参加しているプレゼント交換だったら・・・。

そこに、貨幣というものがあるとどうだろう。

貨幣を介在させて、果実は100円、魚は200円、鳥は300円、といった交換レートをもとに決済を行えば、スムーズな取引が可能となる。

さて、ここで気をつけねばならないのが、上のの3つの生産物それぞれが100円、200円、300円といった固有の価値を有しているかのような考え方だ。

アダムスミスは「国富論」の中で、価値には「使用価値」と「交換価値」の2つが存在すると説いた。「前者はある特定の対象の効用を表現し、後者はその特定の対象の所有がもたらす、ほかの財貨に対する購買力を言う。もっと単純に言うと、「使用価値」とはその労働生産物がもっている有用性のことを表し、「交換価値」とは即ち、価格のことを表す。

スミスは更に言う。「最大の使用価値をもつ諸物がほとんどまたは全く交換価値を持たない場合がしばしばあるが、その反対に、最大の交換価値をもつ諸物がほとんどまたは全くの使用価値を持たない場合もしばしばある」。スミスが、使用価値が高くて交換価値が低いものとして「水」を、使用価値は低いが交換価値が高いものの例として、「ダイアモンド」を挙げたことは有名だ。

賢明な読者であれば、現実の資本主義社会では、使用価値はあまり意味を持たないのはお分りだろう。否、自分自身の労働なり自分の所有する生産物の価値に有用性を見出すことは重要であるが、これは非常に曖昧な概念である。

なぜなら、使用価値は外部とどのような関係にあるかによって如何様にも変化する。例えば上述の水の使用価値を考えてみても、使用者と水との関係次第で無価値にも有用にもなる。

即ち、貨幣量に表現された価値=価格は、そのモノが内包する有用性とは全く別のところで作られる。果実が100円、魚が200円、鳥が300円といった価格は、市場に参画するプレーヤーの間の関係性(需要と供給といっても良い)によって、結果として決まるわけだ。
さて、ここまで読まれて、お金をたくさん稼ぐにはどうすればいいのか?と考え始めたらしめたもの。

何故お金が貰えるのか。

それは、単純な自分の生産物固有の有用性ではなく、より多くの人が欲しているモノやサービスを、自分が提供するからにほかならない。

例えば、以下の3つを実現できれば、お金を稼ぐことができるわけだ。

1)自分の生産可能なもの(例えば、上の木登り名人、泳ぎの名人の例で言えば木の実や魚など)を、誰が欲しているのか?を把握して、その人に商品を提示・届けること。
2)その為に、木登り名人なら、より高い木に登ることが出来るようになることで、より多くの木の実を採集可能になること。素もぐり名人なら、より深く潜り、より多くの魚を捕獲すること。
3)さらに、より多くの人たちが欲しているモノやサービスで、供給が間に合っていないモノ・サービスの特定、及びそのモノの生産。若しくは、今まで提供されていないが、実際に提供されたら多くの人が欲すると思われるものの特定と生産。

これら3つの大前提にあるのが、「お金を払う人が喜ぶモノ・サービスを提供すること」。欲しい人が居ないものを幾ら獲ったり作ったり、サービスとして提供しても交換は成り立たない=お金は稼げない。

自らの能力を高め、人々が欲するものを生産し、それを欲する人たちに提供する。その先を行くと、「人々が喜ぶと思われるものを先回りして生産する」結果、自分の生産物がより多くの人に求められると、より多くのお金がもらえる。その意味では、お金をどれだけ獲得したかは本来、「相手をどれだけ満足させたか」の証のようなものだ。

企業にとって、お金を稼ぐためには上記全ての活動が重要だが、昨今特に消費者(=お金を払ってくれる相手)が欲するものを生産・開発することが重要であると叫ばれているのは、正に「売れないと(=交換が成り立たないと・相手が喜び満足しないと)作っても(獲ってきても)、意味が無い」という基本的な原則を、バブル依然の右肩上がりの戦後日本経済の延長線上で忘れつつあった企業(生産者)へのアンチテーゼでもある。
注意:ここで述べているのは、所謂会計上の利益については一切述べていない。
会計的に言えば、収益の最大化のみを述べており、費用については述べていない。尚、費用については第5回、最終回で述べたいと思う。

<次回の予告>
次回は企業が存在する理由そのものにも繋がる「差別化」について解説する。
続きはこちら>>

<長谷川 博史>

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