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コラム

海外雑誌・業界記事紹介(3)・米国オフショアリング

◆三英語でしか発刊されていない海外の雑誌で取り上げられる最新の記事の内容を日本語で解説・海外での最新ビジネストレンドを分かり易くお届けするコーナーです。

第3回 Business 2.0誌 December, 2003
“Making It in the USA, RALPH KING”
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Business 2.0は、米国でビジネスとITのコラボレーションを模索・新しいビジネスモデルや技術を中心に紹介している、現在でも注目を集めている雑誌である。
昨年末と少し前だが、最近の新聞紙上でしきりと取り上げられている、米国での雇用無き経済回復の元凶とされる「海外への業務委託(オフショアリング)」に関連する、アメリカの製造業空洞化に関する記事が、この雑誌でも紹介されている。
日本においても、製造業の海外移転が国内産業の空洞化を招くと言われて久しく、特にこの数年、中国における安価な人件費を主目的に、主要な製造業が大挙して中国に進出しているが、この点では先輩である米国の、しかも新ビジネスモデルを紹介するようなイノベーティブな雑誌での記事が主張する内容を今日は紹介したい。

—<要約>—
アメリカでは過去3年間で製造業の労働人口が2.7百万人減少(一時的な雇用調整という数字ではない)。1950年時点で全労働人口の30%を占めた製造業は、2003年時点では僅か11%に減少している。
記事では、ある専門家の意見として「製造拠点の移転に伴う追加コストとして見込まなければならないのは、市場に達するまでの時間的遅延、航空運賃、従業員の移動に伴うコスト、及び現地での汚職などの可能性」とし、更にMIT(マサチューセッツ工科大学)の「製造業におけるリーダー養成プログラム」ディレクターのコメントとして「コスト削減を目的とした海外への製造拠点移転は(成功すれば)短い期間で効果 が見込めるものの、長期的には企業に打撃を与える。何故なら、工場そのものに内包される革新へのヒントに対する感度を鈍らせるからだ」としている。
また、製造業が革新を生み出す機械(innovation machine)へと脱皮するには、製造、エンジニアリング、デザインをしっかり組み合わせることが重要であり、これらを可能とする工場レベルでのイノベーションは単純な低い人件費の模索よりも長期的には重要であり、米国の労働者が米国で存続する機会(opportunity)はこのイノベーションにのみある、と締めくくる。
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米国の場合、世界最大の市場は自国内に存在するため、通常 海外移転先からの供給は自国(米国)向けということが想像される。日本でも、移転先にて製造された商品の供給先を日本に求める場合、この記事と同様のことが言えるだろう。
日本の製造業に蓄積されている現場レベル・工場レベルでのノウハウ、イノベーションへのヒントは、現時点で有効に活用されているだろうか。
デフレに伴う価格引き下げ圧力に対応する為にはコスト削減が必須であり、この点ひとつをとっても、中国への工場移転は正当化されるであろう。
これは即ち売上=価格x販売数量≒顧客がどれだけの価値を自社の商品やサービスに見出してくれるかという外部要因はコントロール不能であるがゆえに(しかも、デフレという言葉に象徴されるように、今後も外部要因は企業に更に厳しい要求を突きつけるであろうという前提に基づき)そのバッファーとしてコントロール可能なコスト側をなるべく抑える、という行為以外の何ものでもない。
しかし、顧客が価値と感じる個所にまでメスを入れて、コスト削減のみを金科玉条の如く取り進める行為は、コストをベースに一定のマージンを設定して市場に売りに出す行為と同様に、顧客・市場のことを忘れた「目的と手段の逆転現象」となりえる。
海外移転を考える製造業の皆さんは、この点を改めて熟考のうえ、再度目的と手段を明確化するべきではないか。
日本の製造業の強みである工場レベルでのプロセスやノウハウ。
ここに今後の成長余地を見出していくのが日本の製造業の進むべき方向性である、という示唆をこの記事は、与えてくれる。

<長谷川 博史>

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