繁忙が続く中部地区の金型各社で、納期短縮に向け生産効率…

◆繁忙が続く中部地区の金型各社で、納期短縮に向け生産効率化の動きが加速プレス金型のナガラは製造リードタイムで約 30 %を短縮。

<2004年08月16日号掲載記事>
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8月 16日付の日刊工業新聞は、名古屋の金型メーカー 2 社の経営革新を取り上げている。一 社は、家電と自動車部品用の箱物金型を主力製品とするナガラで、倉庫投資により生産リードタイムを 30% 短縮させている。もう一社は高橋精密工業所で、CAD の更新により設計リードタイムを大幅に短縮させた。

中京圏では自動車関連産業が好調で、下請け企業も繁忙を極めている。ナガラの場合も受注量は前年同期比 2 割増に達し、増産需要への対応が最大の課題になっていたところを、原材料や仕掛品と出荷前の完成品を区分保管するための倉庫を新設することで、出荷効率、作業効率を改善させたことで、生産リードタイムを45日から30日まで短縮できたとされる。

金型産業は数ある自動車産業の中でも、抱える経営課題の構造的難しさという面では最も難易度の高い分野の一つである。
先週弊社が発表した調査レポート「自動車メーカーに聞く次世代型部品メーカー像と製品ごとのトレンド・投資戦略~自動車部品メーカーの経営企画部と投資ファンドへの提言~」(調査にご協力いただいた本誌読者の自動車メーカーの方々に、この場を借りてあらためて御礼申し上げます)においてもそのことが浮き彫りになっている。

同調査の結果から判断すると、「金型・治具」は、「外装部品産業」と並んで、自動車メーカーからの開発力の期待、成長性の見通しが最も弱い製品分野である。しかも、開発投資の方向性は圧倒的にコスト削減寄りのものが期待されており、機能・性能強化側の開発投資ではない。

自動車メーカーは、大きな方向性として、CAD/CAM/CAE を使った試作レス、プラットフォームや部品の標準化・共通化による金型数削減に動いている。 そのトレンドがこの結果に現れたものといえるが、金型メーカーの経営者にとっては、量的拡大を見込んでの成長投資も、価格上昇を期待しての開発投資も極めて難しい経営判断を迫られることになる。
また、自動車メーカーの内製金型が今後外注化に向かう傾向にはないという調査結果になっている。従来から恒久的、固定的需要分の金型は自動車メーカーが内製しており、金型メーカーには一過性の突発的需要へのバッファーの役割が期待されていることが多い。その役割分担が今後とも大きく見直される可能性は少ないということである。

日系金型メーカーに対する自動車メーカーの中国進出の期待もあまり高くなく、自動車メーカーは寧ろ部分的に中国調達の可能性を示唆している。
また、投資ファンドや外国企業などの外部資金導入や業界再編による経営の刷新や基盤強化への期待度もあまり高くないという調査結果が出ている。

リスクを取った海外進出に対するリターンも読みきれない一方で、海外進出しないことのリスクも考慮しなければいけない。思い切った企業構造の変革も内部の混乱と衝突を招くだけで顧客の評価に繋がるものにならないかもしれない。

金型産業が抱える経営課題は、一般的に上記のような困難を伴うものである。ではどうやって克服していくか。私たちは「業務プロセスの再構築によるコストの削減」を指摘した。量的にも価格的にも外部環境(さしあたっては自動車メーカーの考え方)に期待できるものが長期的にはないのであれば、内部構造を徹底的に革新していくことしかないと思われるからである。それも QCD (品質、コスト、納期)と称される極めて基本的な事柄の部分で、特に品質と納期に注目することが求められるだろう。その両者の革新が結局はコストの革新を押し進めるからである。

日本の金型産業は長らくその職人芸による品質と納期管理をコアコンピタンスにしてきた。だが職人は老齢化し、数も減ってきている。職人芸に依存した内部構造のままでは生き残りが難しくなってきていると思われ、職人芸の標準化・マニュアル化、暗黙知の形式知化、当世風に言うならナレッジマネジメントによるビジネスプロセスの再設計(BPR)が必要になってきている。

今回取り上げられた二社は、経済好調な中部圏にあって増産対応としての打ち手を取ったものであるため、一見すると 生き残りのための内部構造革新とは認識されにくいかもしれない。だが、筆者の目には、目下好調とされるこの両社でさえも、金型産業の置かれた環境を自覚し、長期的視点での ビジネスプロセスの再設計に乗り出したものではないかと感じられる。その証拠に受注増への対応を単なる生産能力の増強とはしていない。在庫管理、設計プロセスの見直しによる納期の短縮や品質の向上が直接の施策になっている。

<加藤 真一>