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コラム

ISM(インストア・マーチャンダイジング)入門(1)

スーパーやコンビニなどの異業種小売業態で活用されているマーケティングテクノロジーを自動車業界で応用できないかを全 5 回のシリーズで考えてみようというコーナーです。

第1回の今回は、「ISMって何?」をテーマとします。
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マーケティングに直接的に携わっている方を別にすると、ISM(インストア・マーチャンダイジング)という言葉を初めて耳にされる方も多いかもしれません。専門家によれば、「小売店頭で、市場の要求に合致した商品および商品構成を、最も効果的で効率的な方法によって、消費者に提示することにより、資本と労働の生産性を最大化しようとする活動」のことで、「小売店頭における価値工学」だとされます(田島義博「インストア・マーチャンダイジング」)。

これだけでは何のことか分からないかもしれません。要は、「買上客数」と「客単価」を向上させるための小売現場での取組みのことで、具体的には、各種のデータ分析に基づき「品揃え」と「陳列」を工夫することで「来店客数に対する買上客数の比率」や「買上客数あたりの買上金額の比率」の拡大を目指すことです。

その成果は、「PI」と呼ばれる「単品ごとの来店客数1000人あたり買上金額」で測定されます。

はじめにISMの決め事や対象を整理しておきましょう。
どの業種でもまず売上が大事ですが、売上というのは「買上客数X客単価」です。

当たり前のことなのですが、「買上客数」というのは「来店客数」とは異なります。「来店客数」とは、(商権内の)「顧客母数X来店頻度」ですから、商圏を拡大して、一生に一度しか来ない顧客も含めて延べ顧客母数を増やすとか、1週間に1回しか来ない人に2回きてもらう方法で伸ばすことができるものですが、これはISMの対象ではありません。ISMは、インストアという名前が示す通り、来店後の顧客の購買行動を対象にしており、来店を増やすことは立地や広告等の領域になるからです。

また、ISMでは、「客単価」と言われる客一人あたりの売上金額の向上を対象にしています。「客単価」を上げるためには、商品単価を上げるのが手っ取り早そうですが、これもISMの対象ではありません。常識的に考えても商品単価を上げればお客さんは他所のお店に行ってしまいますし、商品単価設定は来店後の購買行動を左右するだけでなく来店前の顧客行動にも影響する重要なマーケティング活動ですから、ISMありきでの単価設定は本末転倒になってしまいます。

今一度整理すると、ISM の対象は「買上客数」と「客単価」です。そして、「客単価=商品単価X買上個数」と見て、「商品単価」ではなく、「買上個数」の方に着目してその向上を目指します。

次の式を見てください。
●買上個数=動線長X売場立寄率X商品視認率X商品買上率X商品買上度数。

個々の用語に関して少し説明が必要でしょう。

●動線長=顧客動線の長さのこと。
お客さんの店内滞留時間や店内回遊率を高めて、できるだけ色んな売り場を見てもらうための工夫をすることです。お客さんは店の外で買い物することはできませんからできるだけ長く店内にいてもらう必要があるのです。
店舗の奥に計画購買される商品やマグネットと言われる気になる売場を設けるのが一般的です。

●売場立寄率=売場立寄回数÷客動線のこと。
お客さんが店内を回っている間にある商品の売場に立寄ってもらう頻度のことです。当たり前ですが、店内にいてもブラブラしているだけでどこの売り場にも立寄らずに出て行かれてはどうしようもありません。
そうならないように照明やBGM等で気を引き、売場全体の演出を行なうことが求められます。

●商品視認率=商品視認回数÷売場立寄回数のこと。
立寄った売り場の中である商品の存在に気付いてもらう頻度のことです。
そのためには、棚割が重要です。どの商品を棚のどの列、高さに何フェース(何列)置くかで視認頻度は全く異なります。
売りたい商品が一種類だけとか、売り場が無限にあれば単純にあるだけそこら中に並べればいいのですが、多数の商品を狭い売り場に置くコンビニの店頭では全体最適を考えないと却って全体の売上が落ち、在庫だらけになってしまいますから、ISMのキモの一つはここにあります。

コンビニでは、本部がPOSデータに基づき、売れ筋と死に筋を分析した上で統計処理して最適な棚割を決定(プラノグラムという)して各店舗に指導しています。

●商品買上率=商品買上回数÷商品視認回数のこと。
商品を視認したうえで結局何回お客さんがその商品を買い物篭に入れる決断に踏み切るかのことです。商品の存在に気付くことと、ショッピングバスケットに商品を入れることとの間にはまだ大きな溝があり、お客さんの決断を後押しする何かが必要なのです。
例えば、「今週の人気ナンバー1」とか「TVで紹介された」とか「歯医者さんの8割が勧める」といった告知掲示(POPと呼ぶ)等が有効です。

●商品買上度数=商品買上個数÷買上回数のこと。
買上回数と買上個数はよく似ていますが、厳密には少し異なります。買上度数とは、買い物篭に入れる際に何個買うのかの比率で、お店の側の 論理としては、どうせ買ってくれるなら 1個より 2個、3個と買ってもらいたいものです。単品で買うより 2個買うと割安とか、3個買うとおまけ付きなどの手法が定番です。

また、商品買上個数というのは、一つの商品を何個も買うことで高まるとともに、一つの商品に関連していくつもの種類の商品を同時に買うことでも高まります。いわゆる関連購買、想起購買というもので、鍋物の具材の横に鍋そのものやガスコンロ、ボンベ、ポン酢等を置いておくと、それらの売り場には立寄っていない、立寄ったが気付くことなく、もしくは買い物篭に入れることなく素通りしてしまったお客さんが「そういえばこれも必要だった」として購入していくことがあります。

これら二つを合わせて商品買上度数と呼び、商品視認率と並ぶ ISM の骨格といえます。

ここまでお話してきてお気付きと思いますが、ISM というのは、顧客の来店後レジに並ぶまでの行動を分解し、各々の要素でお客様に刺激を与えて各指標を改善させ、最終的に買上客数や買上個数を増大させるための活動を意味します。

商品買上率までが買上客数増加のための仕掛け、商品買上度数が買上個数増加のための仕掛けということになります。「細かいことを言わずに、動線長、立寄率、視認率、買上率、買上度数を各々上げていけばいいんでしょ」と言われたら全くその通りで、手っ取り早いのは試食販売です。試食販売は全ての指標の向上に即効性を持つのですが、スペースを食い、人件費も掛かるので費用対効果の検討が必要になります。そうしたことも考慮の上で、何が買上客数向上、買上個数向上に一番効果的で効率的なのかを科学していくこと、それが ISM なのです。

「よく分かったが、それが自動車業界に使えるものなのか」「似ているところもあるようだが、違いも大きいのではないか」と思われていると思います。次回は、自動車業界との共通点、相違点、応用の可能性について触れることにします。
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<加藤 真一>

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