上場部品メーカー82社の2003年度連結決算、売上高9%増の…

◆上場部品メーカー82社の2003年度連結決算、売上高9%増の計13兆3113億円に
最終利益は11.5%増の計4108億円に。日本自動車部品工業会まとめ

<2004年05月28日号掲載記事>
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日本自動車部品工業会(JAPIA)の資料によれば、同会の正会員上場企業のうち売上高に占める自動車部品比率が50%以上の企業を集計した結果では、2003年度の売上高、営業利益、営業利益率は、いずれも97年度以降の最高を記録した。ここから学ぶべきことを抽出してみたい。

海外生産も含めた日本車の生産台数が好調に推移しているから当然と見る向きもあるかもしれないが、ことはそう単純ではない。
確かに90年代前半まで、日本の自動車部品の出荷金額の推移は日本車の内外生産台数の増減とほぼ一致していたといえる。
非常に乱暴な計算ながら、日本車内外生産台数に一台あたり90万円を掛ければ、ほぼ部品出荷額に一致していた。例えば、93年の日本車の内外生産台数は約15百万台だったが、これに90万円を乗じると13.5兆円で、JAPIAが公表している同会加盟企業の同年の出荷金額13.6兆円にほぼ等しい。

様相が変わってきたのは、日本車の海外生産が5百万台を突破した95年頃からである。日本車の生産台数の増加分ほどには部品の売上が増加しなくなった。日本車の内外生産台数が16.8百万台に達した97年を取ると、単純に言えば部品の出荷額は15兆円を超えてもおかしくない計算になるが、実際の部品出荷額は日本車の生産が15百万台強に過ぎなかった93年当時とほぼ同じ13.6兆円にとどまった。一台あたり80万円少々まで落ち込んだことになる。

理由は、二つあるだろう。
第一に、自動車メーカーの海外生産シフトの影響である。
これに伴って一部のサプライヤーも海外進出を行ない、海外拠点からの供給を進めた結果、国内工場からの出荷額が停滞したということだ。
実際のところ、今回業績改善が伝えられる主要上場サプライヤーは早くも97年度には連結子会社からの売上が2兆円規模に達している。
だが、純粋に自動車メーカーの海外生産シフトのスピードに付いていけない部品サプライヤーも現われ、自動車メーカーの進出先や第三国のサプライヤーを含めた競合他社にビジネスを奪われた部分もあるはずだ。
格付け機関のJCRが02/3月期決算から抽出した結果によると、01年度に大手完成車メーカー5社の海外生産比率が数量(台数)ベースで43%、売上ベースで65%であったのに対して、部品メーカーは主要50社の平均でいずれも30%にとどまったという。
こうした出遅れ分は、当初は輸出という形で部品出荷額を下支えするが、国産化率規制対応や自動車メーカーの生産地調達方針等により次第に取引を減少させていくことになる。

第二に、自動車メーカーからの原価低減要求の結果である。90年代後半から各自動車メーカーが一斉にコスト競争力の強化に乗り出してきた。
数量ベースでの落ち込みに加えて単価ベースでの下落が加わったことが出荷金額の伸びを重たくした。事実、98年度には今回好業績が伝えられている主要上場部品サプライヤーでも売上の減少以上に営業利益の減少が大きく、営業利益率は3.4%まで下落している。
安全や環境への消費者意識の高まりや、自動車メーカーの電子化・IT化の意欲から、部品の製造コストは増加傾向にあるのに、自動車の販売価格はデフレや販売停滞により上昇していないから部品単価にも上方硬直性が働く。ましてそうした需要の高まりの枠外にある部品は、グローバル調達の普及に伴い海外部品との競争に巻き込まれて価格的に厳しい戦いを余儀なくされた。

そんなわけで少なくとも2000年代に入ってから自動車生産台数と部品の売上には従来ほど密接な相関関係は見られなくなっている。
そんな中で今回のニュースは、少なくとも主要上場会社に関する限り自動車部品サプライヤーが記録的な好業績(最終利益は厚生年金代行返上益など昨今特殊要因に左右されることがあるので営業利益に注目したい)を達成したということである。なぜそれが可能だったのか。 いくつか記事の陰に隠れた事実に目を配りたい。

第一に、連結決算と単独決算の差異、即ち連結加算である。
昨年12月にJAPIAが発表している主要上場企業の平成15年度中間期の決算状況によると、各社の売上高集計は単独決算4兆円、連結決算6兆円である。
また、営業利益の集計は単独1.6千億円、連結3.3千億円である。

実は単独決算と連結決算で集計社数が微妙に異なるので単純に比較できないので一社あたり平均で見ると、売上の36%、営業利益の51%は連結子会社で稼いでいることになる。
また、日本車の内外生産一台あたりの部品出荷額がかつての約90万円から80万円台前半に低下したと述べたが、一方でこれらの主要上場企業の連結売上高を内外生産台数で割ってみると、97年ごろの一台あたり50万円台から昨今は60万円台半ばまで増加している。
上記で自動車メーカーの海外生産シフトに付いていけないサプライヤーもあったと述べたが、少なくとも主要企業に関する限りかなり海外供給体制の整備が進み、しかも寡占化を進めてその果実を得つつあると言えそうだ。

第二に、業績改善は満遍なく現われているわけではないことである。
上述のJAPIA発表の平成15年度中間期の決算状況によれば、対象73社中、前年同期比50%超の営業利益増の会社が14社(19%)あった一方で、26社(36%)が営業減益となっている。

平成14年度中間期の同じ報告では、50%超の営業増益企業は38%あったのに対して営業減益企業は15%しかなかった。とすると、平成15年度の方が全体としては悪化して然るべきなのに平均すると前年より改善しているということは、多くの企業が苦しむ中で一部の高収益企業が圧倒的に収益力を高めていることになる。

90年代末からの単価の下落による部品サプライヤーの採算への影響について触れた。この傾向は決して終わったわけではなく、現在進行形の問題なのである。これに加えて為替や材料費、エネルギー価格の高騰の要因も顕著になってきた。設備投資や研究開発への負担が減ることはない。経営環境は一層厳しさを増している。

では、50%超もの営業増益に沸く一部の高収益企業はどんなところなのか。JAPIAの総括コメントから判断すると、自動車メーカーと共同でのコスト低減や独自の構造改革的固定費削減を惜しまなかった企業、新製品開発や環境・安全技術の研究開発に注力した企業ということになる。 これだけでは当たり前過ぎて参考にしようがないと思われる。高収益企業が絞り込まれてきた折でもあり、それら一部の企業の行動特性をベンチマークしてみる価値がありそうだ。

<加藤 真一>