本文へジャンプ

コラム

ホンダ、中国・天津の2輪車合弁工場を廃棄へ、新工場の建…

◆ホンダ、中国・天津の2輪車合弁工場を廃棄へ、新工場の建設に着工

<2004年05月20日号掲載記事>
——————————————————————————–

かつて本田技研は、同社製の二輪車の模造品を製造していた現地二輪車メーカーに50%出資参加して合弁会社・新大洲本田摩托有限公司に改組したうえで、同社に技術供与を行なってきた。模倣品を抹殺するために、模造品メーカーを駆逐するための(なかなか終わりのない)戦争を繰り広げる代わりに模造品を純正化することで目的を達するという革新的な戦略を取った。

「増産を伴わない新工場の設立と移転」という今回の記事もかなり画期的と言えるのではないだろうか。

先週、中国各地(杭州、上海、天津、北京、広州)を訪問してきた。

中国では急速な経済発展とそれに伴うインフラ整備や開発の進行、所得水準の向上、法規制の緩和、ローンなど周辺分野の発達、輸入関税引き下げを一因とする販売価格の低下、外国資本による魅力的なブランドや技術の導入など様々な要因から自動車や二輪車は勿論、多くの需要が急増していることはご承知のとおりである。

その結果、現地に進出した日系企業の中にも増産対応が大きな課題となり、工場・ラインの拡張・増設や新工場の設立・移転に追われているところが多い。

中国進出サプライヤーのトップには世界各地で生産管理部門の幹部や工場長として活躍してこられた方々が多い。その方々が一様に嘆いておられるのがこの増産対応である。というのも、生産管理のエクスパートとして本来ならば中国工場設立直後のこのタイミングで真っ先にやりたいことは、QCD(品質・コスト・納期)をグローバルレベルに向上させることだからである。

しかし、自動車メーカーの増産に次ぐ増産の計画が、部品サプライヤーにも増産対応を喫緊の課題として求められることになる。増産のための不動産、設備、人員の確保や資金調達、事業計画の見直しの決議のために毎月董事会を開催し、合弁パートナーとの間での意見調整に追われる事態となり、まだPPMレベルに達していない不良率の低減やコスト削減のための国産部品サプライヤーの開発など一番やりたいことに十分な時間が取れないこと、現場では5Sよりも工場内のレイアウト変更ばかりやっていることを憂えておられるという訳だ。

在庫や物流の管理性や効率性の追求のためには極力サイトの分散は避け、既存工場内でのライン増設やいっそ新サイトに移転して集中管理体制を維持した方がいいのだろうが、現場の方々の話を伺っているとそうとばかりは言っていられないという思いを持った。組織の統制範囲(スパンオブコントロール)の問題や課題の分散の弊害の問題もある。寧ろ、副作用はあっても増産の都度別工場を建てて、別の組織で管理体制を整える方法の方が有効なこともあるのではないかという考え方である。

今回の記事は、そうした多くの中国進出企業の悲鳴とは別のところに課題を設定し、その課題解決のために粛々と対応策を打っている本田技研の独自の姿勢を感じさせるものだ。在庫と物流の管理効率、コストの削減の目的のために、これまで3階建てを含む6棟に分散していた天津工場の生産部門を、今回着工した新工場の完成・移転とともに平屋1棟に集中するという。 その機会にエンジン組立と車体組立を同期化して中間在庫を削減し、既存設備を活用しながら生産・物流効率を向上させるという計画である。

やはり多くの中国進出企業から耳にすることだが、中国で生産してもコストは早々下がらない。自動車という製品やその部品の製造において人件費が占める割合はワイヤーハーネスやベアリング、アルミホイールなど一部の労働集約型産業、加工型産業を除けばもともとかなり小さく低賃金労働力が貢献する場面も少ない。逆に素材集約型産業は現地製品の品質に不安感を持つ企業が多く、また現地製品のコストも必ずしも安くない。

そうするとどこでコスト削減を図るかとなると、世界の他の生産拠点と同様の地道な生産性向上活動や、物流費や在庫関連費用などの非生産活動の合理化に掛かってくる。その意味で新大洲本田の今回のアプローチは画期的だが王道でもある。

<加藤 真一>

  • コラム
  • 業界アンケート
  • 書籍&レポート
メールマガジン

住商アビーム自動車総合研究所が発信する各種情報をご紹介します。当研究所のスタッフが日々移り変わる自動車業界を、経営と現場を結ぶ視点で紐解いた記事やコラム、等です。

無料配信申し込みはこちら
PDF メルマガ見本はこちら

News -プレスリリース・メディア対応 自動車業界ライブラリ

UPページの先頭へ