中国・北京市民のマイカー所有率、100世帯当たり5.1台に…

◆中国・北京市民のマイカー所有率、100世帯当たり5.1台に
<2004年03月17日号掲載記事>
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「100世帯あたり5.1台」とはどんな数字かといえば、日本の全国平均が1世帯あたり1.1台(03年3月)、米国が1世帯あたり1.9台(03年8月)だから、凡そ日本の20分の1、米国の40分の1となる。
この数字だけから「まだまだ自動車の普及は遅れている」と見ると、この号で別途、弊社の秋山が取り上げている原材料、素材の価格高騰の記事の背景(いずれも中国需要の急増が原因だとされている)を読み飛ばすことになり、「ウチは国内専業だから関係ない」と経営判断を誤る恐れがある。
1年半前に北京のマイカー保有率は100世帯あたり1.2台に過ぎなかった。
1年後の昨年9月、2倍の2.5台に増え、その後僅か半年でさらに2倍と一層加速しているのである。恐るべきは「マイカーを保有する北京市民の74%が2000-2003年に購入」(日中グローバル経済通信)と保有台数の3/4が3年落ち以内の新車であり、しかも「今年購入を予定している市民が36%」もいる(同)という。
北京市商務局の発表でも、同市の今年1~2月の新車販売台数は前年比130%増と言い、新車需要の過熱ぶりを裏付けている。
北京だけの話ではない。深センの100世帯あたり保有台数は昨年9月に既に7台に達している。ばらつきはあるものの中国各地で起きている現象なのだ。

世界的にエネルギーや素材の需給が逼迫するのは無理もない。
何しろ中国は石油消費量で昨年日本を抜き、世界の消費量の3分の1を占める存在になっており、それが年率30%近く増加しているのだから。
しかも、同国のエネルギー総需要は2020年までにさらに2倍~2.5倍になるという見込みが出されている。
自動車業界にも原価に占めるエネルギーや素材の割合が高い業種や企業がおられるはずだ。過去数年間、国内需要が落ち込む中で自動車メーカーからのコストダウン要請に耐えて徹底した省人化で労務費を落としてきた結果、原材料費や間接費のうちユーティリティ関連の経費の比率が上昇した企業にとっては新たな難題の出現である。
かと言って安易に需要好調で、国際価格よりも高い売価が受容されているのでコスト転嫁しやすいとも言われる中国で事業展開すれば済むという問題でもない。実際、3月18日号には『中国・北京市場での欧米製輸入車、再値下げブームが始まり、価格崩壊寸前』という報道もあり、翌日のNNAには『自動車の値下げ戦が激化、今年に入り2度目の値下げ戦で50車種が平均10.3%の値引販売』『アウディーやパサートなど定価販売の方が少数派』『今では値下げなしには買い手が付かないところまで値下げが恒常化』という記事が出ている。
今回の値引き競争には関税引き下げ等の要素もあり、これで一方的な市場拡大に黄信号がともったということではなさそうだが、少なくとも短期的に過度の需要増を見込んで増強された生産能力が過剰になったことを指摘する声もある。おそらく少なくともこの先2008年までは中期的な成長を続けつつも、その間何度か短期的な需給不均衡や揺り戻しを経験することになろう。
これらから自動車業界が学ぶべきことは二つあると思われる。
一つは、特に素材や資源の調達サイドに言えることだが、市況をグローバルに観察しつつ、一面的な見方や投機的なアクションを避けること。仕入のタイミングや数量、手法を定めて、定められた基準に則ってアクションが取られていることや市況動向に応じた基準の妥当性をきちんと管理していくことが求められる。外国為替のヘッジ・管理と同様である。
もう一つは、当然だがマーケティングマネジメントを怠らないことである。
中国といえども最早作れば売れるというわけには行かなくなっている。
値引き合戦が過熱する中で、トヨタカムリは一部車種を逆に4千元値上げし、日産車の価格も上昇傾向と言うし、アウディーやパサートも定価販売を崩していないと報道されている。市場をリサーチして細分化し、自社の強み・弱みや機会・脅威を踏まえて標的市場やポジショニングを明確にして、差別的優位性のあるマーケティングミックスを開発・実行し、よく監視・管理するという定石は、古典的ではあるがいまだ有効であり、寧ろ今後益々重要性を増してくると思えてならない。

<加藤 真一>