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コラム

エンジニアのための経営学(1)

財務諸表や経営管理指標など経営陣の方々が気にされている数字や指標の意味合いをエンジニアや現場の方々の立場に立って分かりやすく意味付けをしてみようというコーナーです。

『第1回 棚卸資産回転率って何?』
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トヨタ15回、日産13回、ホンダ11回、マツダ10回、富士重7回、スズキ8回、ダイハツ17回、7社平均12回。これは何を意味する数字だと思われますか?
2003年3月期の売上高を同期末と前期末の棚卸資産(要は在庫残高)の平均値で割った数字です。意味するところは、購買部門が原材料を仕入れてからラインで仕掛品、半製品、製品に仕上げられ、販売会社で商品としてお客様に引き渡されるまでのスピードです。数字が大きいほどスピードが早いことを意味します。
なんだそんなことは知っているよとおっしゃるかもしれません。生産管理の方ならばサイクルタイムを言い換えたものだとピンと来られると思いますし、販売関係の方は納期管理の重要性を言っているのだろうと感じられると思います。つまり、オペレーション現場ではサイクルタイムと納期の短縮は三平方の定理のごとく証明の不要な当然のことになっているわけですが、これが経営課題にまでなるのはなぜか、それがエンジニアの方々にとってどんなメリットを生むものなのかを原点に帰って考えてみようというのが今回の
テーマです。
一言で言えばスピード短縮分だけ使えるお金の量が増えるからです。ここで話を単純化するために仕入=現金支出、売上=現金収入と見ることにします。スズキの場合、2ヶ年の期末の平均在庫残高は25百億円です。その在庫の回転率が8回というのは、同社の場合、仕入による現金支出から売上による現金収入まで45日を要する(365˜8)ことを意味し、45日分の売上に相当する25百億円をどこかから調達してくる必要があります。大雑把に言えば銀行から借り入れるか、自己資金から回してくるかのどちらかになるのです。
ではもし、スズキの回転率が業界トップのダイハツ並みになった場合はどうでしょうか。ダイハツの現金化のスピードは17回、22日です。差額の売上23日分に相当する効率改善を図るということ。スズキの売上は年間2兆円ですから23日分の短縮で自由に使えるお金が1270億円増えるのです。1270億円がどれほどの金額かというと、2003年度の同社の設備投資額が790億円、研究開発費が600億円の合わせて1390億円ですから、その91%が効率改善で捻出できるということです。
もちろんこの浮いた資金をコストダウンに使う方法もあるでしょう。もし、1270億円分借入金を減らせば金利1%でも13億円の効果ですから経常利益790億円のスズキにとっては大いに意味ある数字です。しかし、エンジニアの立場からは違う見方もできると思います。その分を設備投資と研究開発に回せるということで、従来の約2倍の資金が使えるとしたらエンジニアにとって夢のような話ではないでしょうか。そもそもわが国の自動車産業の競争力の源泉は設備投資と研究開発なのですから、そこに使ってこそ意味があるはずです。経営者の使命は企業の存続と成長を図ることであり、自動車産業においてそれは設備投資と研究開発に適切な資源配分を行なうことです。効率改善が経営課題になるのはそういう意味からであり、エンジニアの方々にとっての意義もそこにあるのではないでしょうか。
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<加藤 真一>

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