新たなモビリティの可能性について考える

◆米 GM、Segway と共同で新たな交通手段を開発。

<2009年 04月 07日号掲載記事>

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【「GM」と「Segway」が新たなモビリティを開発】

「GM」 が 「Segway」 と共同で、電動モビリティの開発を進めている。「GM」に関しては、再建の行方が注目されるが、今回の主旨は、それではなく、新たなモビリティの可能性について考えて行きたい。

今回、 「GM」 と共同で開発している「Segway」に関しては、日本でも導入されており、ご存知の方も多いだろう。「Segway」は、 立ち乗り型で体重移動により進行方向をコントロールする 1 人乗りのモビリティである。

今回、開発中の 「PUMA(プーマ:The Personal Urban Mobility and Accessibility)」は、従来の「Segway」と比較すると、2 シーターになったこと、運転者が座って運転するタイプになったことが主な違いとして挙げられる。

また、機能面では、「Segway」の最高速度が 20km/h であることに対して「PUMA」は 56km/h に上がり、充電 1 回当たりの走行距離も「Segway」の最長39km に対して「PUMA」は 56km に伸びている。

「Segway」は、一般的にパーソナル・モビリティと言われる製品に分類されるが、「PUMA」は、単に 2 シーターというだけでなく、最高速度や走行距離など性能の面からも、電動スクーター・バイク・ミニカーに近いセグメントの製品なのかもしれない。

【新たなモビリティの開発状況】

「PUMA」や「Segway」に限らず、新たなモビリティの開発が進んでいる。例えば、トヨタの「i-REAL」や「Winglet」、スズキの「PIXI」などが挙げられる。

「Winglet」や「PIXI」は、歩行補助が中心で、最高速度も人が歩く程度と言われている(「Winglet」の最高時速は 6km/h という報道もある)。「Winglet」と「PIXI」の違いは、「Winglet」は立ち乗り型で、「PIXI」は座って運転するタイプであることだ。

「i-REAL」は、「Segway」と同じように、人が歩くより速い移動速度を持ち、最高時速は 30km/h 程度と言われている。「i-REAL」は歩行モードと走行モードの二つのモードを持ち、前者のモードは人が歩く程度の速度で動き、後者のモードの最高時速が 30km/h 程度と言われている。「i-REAL」と「Segway」の違いは、「i-REAL」は座って運転するタイプで、「Segway」は立ち乗り型であることだ。

今回の「PUMA」は、前述したように、「i-REAL」や「Segway」より高い移動能力を持っており、中距離移動にも対応できる仕様となっている。つまり、移動距離という軸では、大別して、徒歩圏内の移動を対象とした「Winglet」や「PIXI」と、近隣の移動を対象とした「i-REAL」や「Segway」、「PUMA」に分けることができる。

【新たなモビリティの可能性】

上記にあげた製品の中で、「Segway」が先駆けて日本でも導入されている。
「Segway」は、現状のところ、日本市場では、主にプロモーション・ツールとしての用途を開拓している。

例えば、「十勝千年の森」や「ハウステンボス」では、「Segway」に乗車し、ガイドと共に回るツアーがあり好評を博しているようである。また、「富士急ハイランド」では、「セグウェイ チャレンジ」というコーナーを常設し、特設コース内を周遊したり、記念として写真入りの乗車証明書を贈呈したりしているようだ。他にも、SC (ショッピング・センター)やゴルフ場でも使われている。

SC の警備やゴルフ場の巡回だけが目的であれば、「Segway」である必要はないようにも思える。

それでも、1台 100 万円弱という「Segway」を導入するのは、その投資以上の利用料回収や、施設全体としての集客効果があると見込んでのことであろう。

こうした施設内でのプロモーション・ツールとしての活用は、限定された範囲内での移動が中心であろうから、「Segway」や「i-REAL」、「PUMA」など近隣の移動を対象としたモビリティだけでなく、徒歩圏内の移動を対象とした「Winglet」や「PIXI」も活用の可能性があるのかもしれない。

現在、「Segway」は公道を走ることが認可されていないが、法規制動向次第で、今後は、移動手段としての用途の開拓が進んでいくと考える。

「Segway」や「i-REAL」、「PUMA」など近隣の移動を対象としたモビリティの移動手段の用途としては、以前、シニア層に対する商品・マーケティングを考えるシリーズで述べたが、高齢者市場を開拓することが考えられる。自分自身で車を運転して移動するシニアと、身体能力が低下し、自分自身では移動できず、介護・福祉サービスを利用して移動するシニアの間に、新たなモビリティの対応余地があるのではないかということである。

既存のモビリティとしては、電動車椅子があるが、主には歩行圏内の移動を想定している。「Segway」や「i-REAL」、「PUMA」は、それ以上の移動を提供することができる。車の運転には自信がないが、行動範囲が徒歩圏内以上のシニアは一定量いるだろう。そうした層に訴求できる可能性があるのではないかと考える。

ただし、例えば「Segway」は、体重移動により進行方向をコントロールするため操作にはコツが必要だし、身体能力が低下しているシニア向けには、改良の余地があるのかもしれない。

加えて言えば、現在の電動車椅子に乗っていると、お年寄りと見られ、それが理由で、電動車椅子を敬遠するシニアもいるのではないかと思われる。そうした層には、デザイン性などの面から、徒歩圏内の移動を対象とした「Winglet」や「PIXI」も訴求できる可能性があるのではないだろうか。

以前のコラムは、以下をご参照頂ければ幸いである。
シニア世代に向けた製品・マーケティングを考える『第 5 回 自動車業界がクルマ以外で移動手段を提供する余地』

【新たなモビリティの必要性】

これまで、自動車に代表される既存のモビリティは、大型化・高機能化により、成長してきた。その象徴でもあった米国自動車市場が、昨年来、急激に冷え込んでいる。そして、今後の、既存のモビリティの方向性は、小型化や環境対応に向かっていることが、はっきりと見えてきたように思う。

しかしながら、小型化や環境対応という方向性は、既存の自動車業界を大きく拡大させるものであろうか。新興国市場では、一定の拡大が期待できるのかもしれないが、先進国市場では、これまでと同じ製品が求められるわけではないと考える。

例えば、環境のことを突き詰めると、「車に乗らないことが一番だ、必要な時に乗れるカーシェアリングを利用しよう」とか、「車は必要だが、お金をかけたくない、少しでもコストが易い、小型で燃費の良い車が一番だ」という考え方に答えていかなければいけない。

前者は保有台数を減少させる可能性があり、後者は、台数は買い替えにより、維持できるかもしれないが、単価は、減少させる方向に進むことも想定され、その場合、市場規模という点では縮小していくことになる。

もちろん、既存のモビリティとしても、上記のような市場の変化に対応していかなければいけないが、もう一方で、新たな市場を開拓するための、新たなモビリティを開発・導入していくことは、自動車業界全体が縮小均衡にならないために、必要なことではないかと考えている。

<宝来(加藤) 啓>