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コラム

脇道ナビ (10)  『パッと分かる』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第10回 『パッと分かる』

家電製品、自動車などの工業デザインでは、模型を作り、製品の設計に入る前に、「レンダリング」と呼ばれる精密な完成予想図を描いて最終案の選定などの評価を行う。これは、建築なども同じで「パース図」と呼ばれている。最近では、コンピュータグラフィックス (CG) でカンタンに描けるようになったが、私たちが大学で工業デザインを学んでいた頃は、ポスターカラー、パステル、マーカーなどを使って手描きで表現するしかなかった。当然ながら、何かを見ながら写生するのと違って、頭の中で想像しながら、色や素材の違いをリアルに表現するのは、カンタンではなかった。そんな苦労をしながらレンダリングを描いていたある日、指導教授から

「建築現場で窓ガラスが入っていると『ガラス』と書いた紙が貼ってある。あれほど、分かりやすいものはないよね。」

と話しかけられた。しかし、すぐに、

「それをやっちゃあー、おしまいヨ」

と付け加えられた。確かに、車のフロントガラスをそれらしく見せるために反射の具合を苦労して描くくらいなら、「ガラス」という文字を書き込めばカンタンだが、それでは未だ見ぬ世界を「らしく見せる」というデザイナーの仕事でなくなってしまう。

最近では、缶ビール、接着剤などの容器にも点字の凸がつくようになった。それは、それでスバラシイことだが、次は、点字が読めても読めなくても、触っただけで判別ができるような容器になればもっとスバラシイ。そうしたことはリンスと間違えないようにシャンプーのボトルにギザギザをつけていることは有名なハナシである。ただ、こうしたシャンプーのボトルも、もう少し「らしさ」があっても良いと思う。

たとえば、そうしたギザギザは遠慮がちにあるだけだが、持つときには滑り止めになるくらいに積極的に表現してはどうだろう。また、ボトルの横にギザギザがあるのは、シャンプーだが、リンスはボトルを巻くように横方向に細かいギザギザが並び、ボディシャンプーは斜めに走るギザギザがあると言ったようにだ。そして、さらに欲を言えば、シャンプーのボトルは円筒型、リンスのボトルは角柱型、ボディシャンプーは三角柱型にすれば店頭で買い間違えることがなくなり、目をつぶって洗髪をする晴眼者にもさらに大きな福音となる。

見ただけで分かる、触っただけで分かる、それも直感的にパッと分かるような「らしさ」を持つモノ作りにデザイナー、商品企画者はもっともっとこだわるべきではないだろうか?

<岸田 能和>

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