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コラム

脇道ナビ (7)  『人の入った自動販売機』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある。

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第7回 『人の入った自動販売機』

我が家にテレビ来たのは、私がまだ幼稚園に行っていたころだ。もちろん、当時は白黒テレビだったが、なにしろ珍しく、テレビの前に釘付けになってしまった。あるとき、人が踊っている映像が映し出されていたので、兄に尋ねた。「どうしてテレビは人が踊っているのが見えるの?」と。すると兄は「テレビの中には小人が入っているのだ」と教えてくれた。それを聞いて半信半疑でテレビの横に回って廃熱用の穴からテレビの中を覗いてみたが、赤く点った真空管しか見えなかった。(蛇足だが、この兄は大人になって電器店を開いた。)

そんな思い出があったからか、まだ切符の自動販売機が珍しかった高校生の頃に「販売機の中には駅員さんが入っているんだよ」と、同級生の女の子に話したことがある。すると、機械モノに弱い彼女はカンタンに信じてしまい、それを別の友人に話して笑われてしまった。そのため、あとで彼女にこっぴどく怒られた。そのときは、そんなツマラナイ冗談を言ったことを後悔していたが、今になってみれば、けっこうスバラシイことを言ったのではないかと考えている。

私たちの身の回りを見回してみると、ジュース、ビール、タバコ、切符、雑誌など、いろいろな商品を売る自動販売機がある。また、自動販売機に似たような機械には銀行の ATM がある。こうした自動機械によって、24時間いつでも商品が買えるようになったり、窓口に並ばなくても、キャッシュカードからカンタンに振込みができるようになったりしたことはありがたいことだ。もちろん、販売店や銀行にしてみれば人件費を抑えることができ、合理的な経営ができることは言うまでもない。

しかし、忘れてはいけないのは、ジュースやタバコの販売にせよ、銀行の振込みにせよ、もともとは人と人が面と向かってやっていたことだ。そのやり取りのなかで、相手の服装、顔色、会話の内容などからお客さまの好みや家族構成、性格などさまざまな情報を探り出していた。それが、自動機になると、わからなくなってしまう。今さら、機械化をやめて対面販売や接客をすべきだというつもりはない。ただ、機械の向こうには生身の人がいることを忘れてはならない。例えば、急用であわてて誤操作をしても ATM が顔色や動作からお客さまの状況を判断し、お金が出る。そんな、中に人が入っているよう自動機になって欲しい。

<岸田 能和>

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