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コラム

業界外からの技術導入の理想形

◆日産、異業種への技術供与を核とした知的資産ビジネスを拡大

異業種との交流による新しい価値の創造,および自社研究開発活動の活性化 を目指す。今回供与する技術としては、アラウンド・ビュー・モニタと遠赤外線イメージセンサ、ブドウ・ポリフェノール・フィルタの 3 つを候補として挙げている。

アラウンドビューモニタは、建設用の大型重機や農業機械などの作業性向上や安全性向上の可能性を検討している。人体の熱画像が細かく表示できる遠赤外線イメージセンサは、熱源監視装置などへの市場投入を計画する。

キッコーマンおよび東洋紡績と共同開発したブドウ・ポリフェノール・フィルタは、天然ブドウ種子ポリフェノールの抗アレル物質効果によって花粉症の原因となるアレルギー物質の除去効果を大幅に高めた高性能フィルタで、マンション用換気ユニットなどに活用するための検討を進めている。

<2008年08月05日号掲載記事>

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【敷居が高い自動車業界】

元来、自動車業界は、系列調達に代表されるように、業界外部から参入しにくい、敷居が高い業界である。安全性が最重要課題となるため供給実績が重視されること、製品構造が複雑であるためサプライヤとの信頼関係が不可欠となること、生産規模が大きいため高額の設備投資を要すること、開発費が高額となるため製品ライフサイクルが長いことなどが、こうした業界文化の形成につながってきたと考えられる。
自動車の誕生から 120年が過ぎた。その性能は飛躍的に進化してきたことは言うまでもないが、内燃機関を動力源とする、その基本的な構造は継承され続けてきた。基本的な構造を維持しながら性能面で進化していく持続的な成長ステージが長らく続いてきたことも、敷居が高い業界構造が維持してきた一つの要因であると考える。

しかし、こうした業界の構造・方向性は永続的なものとは考えにくい。現実的に昨今、環境や安全といった社会的な責任の重要性は年々高まっていく中、自動車業界も大きな転機を迎えつつある。
こうした状況の中、自動車業界と業界外の関係の在り方について考えてみた
い。

【技術領域の拡大】

現実的に、ここ数年、自動車業界では、自動車業界の外からの先進的な技術を導入する流れが加速している。
最大の理由は、この基本的な構造が変わる可能性が出てきたからだと考える。特に環境問題への取り組むが重要となってきている中、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車といったクリーンエネルギー技術についての注目度は日々高まっている。こうした次世代の自動車構造の中核を担うと期待されるキーデバイスが、モーターやバッテリーといった電子部品・電子制御技術である。これらの技術を取り入れ、高度化していく上で、自動車メーカーでは、既存のサプライヤだけでなく、電子部品業界を始めとする自動車業界の外から技術導入を進めており、エンジニアの採用も積極的に拡大している。

こうした流れは、電子技術だけに留まらない。材料技術、バイオ技術、人間工学技術等、自動車業界が手がける領域は急速に広がりつつある。これだけ急速に拡大してくると、いくらエンジニアを増やしても、自前だけで開発リソースを確保するには限界がくるはずである。

【逆風の中でのスタンス】

自動車業界の外から見て、自動車業界が魅力的で成長し続ける存在であり続けられれば、自動車業界への参入を期待する外部の企業・ベンチャーも出てくるであろうし、これまで通り、「良い製品・技術があれば採用を検討する」というスタンスでも成り立つかもしれない。
しかし、昨今のガソリン価格高騰、米国の景気低迷といった自動車業界への逆風も受ける中、「自動車業界は好調で魅力的だから外部からの技術流入が期待できる」という構図が成り立たなくなることも想定していかなければならない。
つまり、自動車業界の外部の企業・ベンチャーにとって、拡大する自動車市場へのビジネスチャンスという既存の魅力だけでなく、何か自動車業界と関わりを持つことによるメリットを打ち出していく必要があるのではないだろうか。

【業界外からの技術導入の理想形】

今回の日産の取り組みに注目した点はここにある。
これまで、自動車業界のノウハウを自動車業界以外に展開するという流れもないわけではなかった。その代表的なものがトヨタ生産システムであろう。技術分野でも、特定の技術を自動車業界以外の用途に活用するという取り組みはある。しかし、先進技術を提供することで異業種との交流を継続的に保ち、自社の開発を活性化させるという仕組みは初めての試みではなかろうか。少なくとも、「良い製品・技術があれば採用を検討する」というスタンスからは脱却したものだと考える。

自動車メーカー各社は、毎年売上の 3~ 4 %程度に相当する数百億円から数千億円を研究開発費に投じている。対象とすべきテーマが拡大していることを考えれば、もっと増額したいという想いもあるかもしれないが、経営資源にも限界はある。

こうした中、自前の先端技術研究所が持つ知的資産を活用し、その知的資産が自動車業界外で実用化できれば、エンジニアも達成感を持って取り組むであろうし、自動車業界外からも研究開発費を稼ぐことができる。自前の研究開発リソースの回転率を高めることにつながるはずである。

そもそもであるが、対等なビジネスパートナー同士の関係であれば、情報・技術もギブアンドテイクであるのが理想であろう。情報・技術を外部に発信していくことで、外部から情報・技術を得られる機会も増えるはずである。
こうした取り組みが、自動車業界の敷居を下げ、業界全体の活性化につながるのではなかろうか。

<本條 聡>

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