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コラム

カーナビが先か?広告が先か?

◆インクリメント P、通信型カーナビ向けにローカル広告サービス

ローカル広告サービス「MapFan ADSPOT」で、カーナビ・パソコン・携帯電話向けテレマティクスサービス「ナビポータル」とのサービス連携により、広告主店舗付近を走るドライバーを対象とした現地誘導型ターゲティング広告サービスの配信を 9月 1日より開始した。

「MapFan ADSPOT」へ登録するだけで、パイオニア製「エアーナビ (AVIC-10)」への広告掲載・情報更新が可能に。
<2008年 09月 08日号掲載記事>

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【テレマティクス市場の抱える最大の課題】

以前、本メールマガジンにも書いたが、テレマティクス市場を拡大させていくために、最も重要な課題がランニングコストの低減にあると考えている。

クルマをネットワーク化していく上で、無線通信技術は避けては通れないところであるものの、現在の無線通信技術の主流となっている携帯電話網を使う前提で考えると、簡単にコスト負担を下げることは難しい。この課題を解決していくためには、通信コスト負担を下げるか、ユーザーが今よりも高い金額を負担しても欲しくなるような魅力的なサービスを開発するか、どちらかしかないだろう。

今年 3月にパイオニアとソフトバンクがテレマティクスサービス分野で提携するという発表があったが、筆者はこの両社が開発する新たなサービスが、テレマティクス分野の課題解決に一石を投じるのではないか、という予想をしていた。詳しくは、以下コラムを参照して欲しい。

『テレマティクス業界に価格破壊は訪れる?』

その後、パイオニア、ソフトバンク、インクリメント P の三社でナビポータル株式会社というテレマティクスサービス提供会社を設立した。その提携事業の第 1 弾として 6月に発売になったのが、通信機能付の PND (ポータブル型カーナビ)「AVIC-T10」である。

ワンセグ TV チューナー、Bluetooth によるハンズフリー通話機能に加え、携帯電話モジュールを内蔵し、リアルタイムで各種情報を入手できる、自動車メーカーの純正カーナビ顔負けの仕様になっている。価格も 5~ 7 万円ぐらいと機能の充実度からすれば、リーズナブルに思える。

【カーナビによるローカル広告サービス】

今回のインクリメント P の新サービスも、この新型 PND を対象にしたものであり、パイオニア・ソフトバンク両社の提携から始まる流れのものであろう。現時点で、コスト負担を大きく軽減させたというわけではないが、将来的にその可能性がある取り組みではないかと考える。

「MapFan AdSpot」というローカル広告サービスだが、広告主の店舗周辺を走行するドライバーに、ピンポイントで広告を出すというものである。前述のナビポータル社が運営するサイトに広告情報が登録され、携帯電話やパソコンからもアクセス可能である。

特定のエリアを走るクルマを対象に広告を出すというターゲティング型の広告モデルの発想自体は目新しいものでないだろう。セール情報やクーポン情報を提供して広告の誘導効果を高められることは明らかである。幹線通り沿いのガソリンスタンド、コンビニ、ファミレス等、こうした広告に興味を持ちそうな広告主候補も少なくないと考える。

次世代 ITS 技術が進み、路車間通信が可能になれば、安全面での各種先進技術が実現すると同時に、こうした近隣のお買い得情報の収集など、利便性の面でのサービスも実現するかもしれない。ただ、現時的にはまだ時間がかかりそうである。

今回のサービスでは、カーナビで実現したことに意義があると考える。現時点では、対象となるカーナビが特定されてしまうものの、カーナビ市場の大きさを考慮すると、将来的に対応機種、参加メーカーが増えれば、広く普及する可能性もあると考える。

【カーナビが先か?広告が先か?】

今回のサービスでは、広告対象となるユーザーが限られることもあり、広告料自体も月額 2 千円からと、安価に設定されている。クリック数を保証する成果報酬型の料金プランも用意されていることから、広告主側からすれば、気軽に試してみようと思える体系になっているのではないかと考える。

やはり、課題となるのは、対象となるユーザー側での普及であろう。ユーザー数が拡大すれば、その広告効果も大きく変わってくるはずである。現時点では、カーナビ 1 機種が対象となっているだけであり、しかもオプションの通信サービスを申し込む必要がある。月額 1~ 2 千円程度のプランが複数用意されているが、これを安いと感じるかどうかは、個人の判断によるところが大きいと思われる。誰もが安いと感じる料金になっているかは疑問であり、このカーナビを購入したユーザー全てがオプションの通信サービスを申し込んでいるとは考えにくい。

「鶏が先か?卵が先か?」といったありがちな議論になるかもしれないが、ユーザーが増え、広告効果が高まれば、広告主も増加するだろうし、広告収入も増えるはずである。広告収入が増加すれば、通信費用の負担を軽減できるようなものになるだろう。通信費用が下がれば、更にユーザーは拡大するはずである。つまり、「カーナビが先か?広告が先か?」ということではなかろうか。

カーナビの累計出荷台数は昨年 9月の時点で 28 百万台を超えており、毎年3 百万台前後のペースで増加し続けている。つまり、それだけの広告媒体の潜在的な市場があるということである。

TV 番組、インターネットのポータルサイト、携帯電話のコンテンツ、フリーペーパー等のメディアの流れを考えると、テレマティクスサービスが広告収入で運営されるというアイデアも現実的なものに思えてならない。

【ユーザーを開拓していくために】

では、どうすれば、ユーザーが安価にテレマティクスサービスを享受できる時代になるだろうか。

やはりユーザーを少しでも増やしていくことにつきると考える。価格破壊的な利用料金を設定し、普及を促進させることも一つであろう。

同時に、こうした広告モデルをカーナビメーカー間で連携して進めることも有効であろう。対象となるモデルが限られる中では、どうしても大きな普及には限界を感じてしまう。こうしたサービス面での連携は今後不可欠になってくるのではなかろうか。

ユーザーの開拓という観点でも、レンタカーやカーシェアリングなどの利用形態への導入を考えるべきかもしれない。一般ユーザーへの認知度も高められるであろうし、自宅の近辺よりも旅先等の方が広告効果が高いことも考えられる。将来的に、広告収入によってクルマ自体の利用料金の軽減にもつながれば、ユーザーの利用も促進できるはずである。

いずれにしても、こうしたコストが課題となっているテレマティクス業界の中で、広告主というユーザー以外の収入源を開拓したことは大きな一歩だと考える。この収入源が拡大し、よりユーザーにメリットがあるサービスが実現することを期待したい。

<本條 聡>

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