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コラム

ISOを効果的に活用するためには

◆三菱ふそう、品質マネジメントの国際規格ISO9001:2000の認証を取得。

3月 1日付けで統合した販売会社を除いて全事業所を対象としている。また業務プロセスとして、開発・購買・生産・販売はもちろん、財務、経営戦略など、同社全てのプロセスをカバーしている。全プロセスでの取得は国内自動車メーカーでは 3 番目 (同社調べ) となる。

<2006年3月24日号掲載記事>

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ISO(International Organization for Standardization) の有用性については賛否両論の意見を耳にすることがあり、実際、当国際規格を品質マネージメントシステムとして採用する自動車メーカーとそうでないメーカーが存在している。このような背景があるなか、三菱ふそうは 2006年 3月付けで当国際規格の一つにあたる ISO9001:2000 を取得したと発表した。

三菱ふそうと ISO との関係は 1998年にま遡る。当該企業は三菱自動車のトラック・バス部門として ISO の認証を取得し、その後 2003年の三菱自動車からの分社化後も認証登録を継続していたが、2004年にリコール隠蔽問題から当認証を失効することになった。当時品質保証ツールとしての ISO の有用性が世の中で疑問視されるようになったのもこの事件がきっかけだったと記憶している。

今回のコラムでは、三菱ふそうの ISO 再取得の狙いが何なのかを考えるとともに、ISO の限界を考察するなかで、今後、ISO の使い手がこのツールを有効に使うためにはどんな点に留意すべきなのか私見を述べてみたい。

【ISOの再取得の狙い】
1.部品の共通化に向けた品質レベルの安定
ダイムラークライスラー(以下DC)グループでは、現在メルセデスベンツとフレートライナー、三菱ふそうの三ブランドが主力になっているが、4月 8日発刊の日刊自動車新聞によると、この三ブランドで将来的にエンジン部品やトランスミッションなどの部品の共用化が計画されており、共用部品の品質を安定させるために統一された品質保証システムを採用する必要があったとのことである。最終的には、グループ内のトラックメーカーだけでなく、部品サプライヤーも含めて品質システムの統一を図ろうと計画されていると伝えられている。

2.信頼の回復
また、2002年に横浜で起きた大型車のタイヤ脱落による死亡事故以降、三菱ふそうは、事故に関する情報の開示や品質保証担当の増員、「品質諮問委員会」や「倫理委員会」の発足を行うなどして、三菱ふそうの品質改善に対する取り組み姿勢を対外的に示してきたが、前述のグループでの取り組みのほかに、三菱ふそう単体としても今回の ISO の取得を通じて品質保証体制の強化をアピールすることで過去の品質問題で失った消費者からの信頼を回復したいとの意図があったのではないかと推測している。

それでは、一度失効した ISO を再取得することで、実質的に品質レベルは向上するのだろうか。ISO の限界を再検証することでこの問いに対する答えを明らかにしていく。

【ISO(品質マネジメント)の限界】

品質マネージメントとは、「顧客の品質目標を達成するために組織やプロセス、資源を指揮・管理すること」である。しかし、顧客の品質目標を満たす為にどのように項目を品質マネージメントシステムに含めたらよいのかというガイドラインを示すものの、実際に何をどの程度まで行うのかについては、当事者である企業が決めるべきことになっている。(例えば、購買プロセスにおいは、サプライヤーのパフォーマンスを評価するために基準を設定することを提案しているが、基準に何を設け、どの位の頻度で記録を取るべきかについては当事者に任せている)。よって、当事者である企業の現実力を自動的に引き上
げるものでは決してなく、また将来の成長を保証するものでもなく、ただ将来的な企業の期待値を押し上げることのみできるものだと筆者は解釈している。

ISO9001 にはまた、「プロセスアプローチ」や「継続的改善」という考えかたがマネージメントシステムの原則として折りこまれている。ここにも ISO 取得 = 企業の成長につながらない理由が存在する。これはどういうことかと言うと、ISO では絶えず PDCA (Plan → Do → Check → Action)というサイクルをまわしながら改善をするよう奨励しているが、これは、「事実に基づき計画を立て、実行し、また確認をして事実に基づき実行するというスパイラル(螺旋)を何度もまわしながら次第に事態を好転させていく手法となっている。しかし、あくまでも「事実に基づく」ことが前提となり、これが崩れると誤った問題に対して対策を講じることになり、ISO というマネージメントシステムがいくら立派なものでも効果を上げることはできない。

事実、前述のリコール問題の原因として、「隠蔽体質の結果、限定的な指示改修にとどめられ、そのまま改善されずに放置されていた」という当時の三菱ふそうの社長の Wilfried Porth 氏のコメント(日経ものづくり 2004年 11月号参照)に紹介されているとおり、誤った情報をもとに ISO の PDCA ツールを使っても(三菱自動のトラック部門の時代)、事態が好転することは決してない。

【ISOの限界を補う為にどうすべきか】
現在の三菱ふそうのホ-ムページ上で紹介されている「品質改善への取り組み」によると当該企業ではオープンかつ透明性のある企業文化を推進する為に「企業文化改革推進委員会」を設けたり、品質会議に社外エンジニアや倫理委員のメンバーが参加できるようにしたりすることで、「事実が把握できる環境」を作りだしているようである。

個人的には次のようなことができるのではないかと考えている。例えば、ISOの一般要求事項のなかに前述の PDCA のなかの Do (実行)をしたあとの実施結果を活動の証拠として記録するよう提案しているが、この記録(例えば不良率)は、継続して集計するならば、時間軸別の傾向が見えることになるし、不良の要因別に集計をすれば、不良の根本原因の追究ができたりする。しかし、記録を帳面に転記する過程で内容に改竄があれば、このデータをもとに講じた対策は前述の理由と同じく効果を上げることはないだろう。

このような場合には、在庫の棚卸で実施するが如く、Theoretical な(理論上のデータ)と Real な情報(実在情報)を相互に照合しあうことで両方の情報の信頼性を高めていくことができないだろうか。もっとも確かな情報は事実であり、これは現場にある。不良率の統計データの信憑性を確かめたいのであれば現場に足を運び、日々どのくらい不良品置き場に不良品が置いてあるのかだいたい覚えておく。そして自らの足で稼いだ情報と Theoretical な統計データを比較し、差異が明らかな場合には逐一データ作成者に指摘する。指摘をすることで Theoretical なデータの正確性は時間の経過とともに高まる。さらに、そのデータを使って現場の根本原因を見抜き、現場に適切な処置をすれば現場のムダが取りのぞかれより現場の状況が一目見ただけでよくわかるようになってくる。こんなことを繰り返しながら「事実が把握しやすい環境」を醸成していき、ISO が機能するのを待ってみてはどうだろうか。

【最後に】
それでも、問題を個人に帰責することで、組織の秩序を維持しようとしたり、成果主義を導入することで、社員個人の動機付けを高めようとする企業が増えてきているなかで、失敗した経験をみんなで共有して、組織全体の利益に結びつけようという発想をすることが難しくなってきているのも事実である。

そのような企業では Theoretical なデータは隠蔽されがちになるので、事実を明らかにする工夫がもうひとつ必要になると思われる。このあたりの問題への効果的な解決策を過去から模索してきており、今後のライフワークとしていきたいと考えている。

<カズノリ (加藤千典)>

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