本文へジャンプ

コラム

環境保全に対する企業間の温度差をどう調整するのか

(◆デンソー「2010年環境行動計画」を策定。CO2 排出を 2000年比 80 % 削減へ環境への取り込みの長期方針「デンソーエコビジョン 2015」を発表。)

<2005年11月17日号掲載記事>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この度デンソーは「エコビジョン 2015」を発表した。これは 2000年 6月に制定した「エコビジョン 2005」の基本理念を継承しながらも一段と進化させた内容になっており、特に以下 4 点に注力するとのことである。

1)地球環境に貢献する新製品の開発強化
2)企業行動全般にわたる CO2 の把握と削減
3)グローバルな環境負荷の着実な削減
4)デンソーグループ連結環境マネージメントの強化

この中で 2005年度版からの特に大きな変更点は、環境保全をデンソー本体だけでなく、グループ内のパートナー(仕入先等)や海外拠点と連携したなかで実現していくこと。すなわち、「周囲のステークホルダーを巻き込むようになったこと」にあると思われる。
「周囲のステークホルダーを巻き込むようになったこと」で、環境保全を主導する大手企業にとっての課題となり得るのは、環境保全に対する各社の意識の高さや力の入れ具合が協力企業の間で微妙に異なることであり、これらの温度差を上手に調整しながら目標の達成を実現させることだと思う。

温度差とは具体的に言うと、「環境をいたわりたい。でも環境保全にはお金がかかる。それでは環境の法規制だけでも最低遵守できるようにしよう」という人達が存在する一方で、自動車業界のデンソーやホンダ、トヨタに代表されるように、環境を競争戦略の柱に据え、環境経営度ランキングで常に TOP10 に名を連ねる企業もいることを示している。

それではこれらの各社の温度差の主な原因になっているものは何だろうか。これは「環境保全が短期的には Profitable (利益が出ること)でない」ことにある。

また、環境関連投資負担に対する許容度、すなわち「利益に結びつかない期間をどう耐え凌ぐのか」が企業によってまちまちであることも、足並みを揃えながら環境保全を行うのを難しくしているのだろう。

事実、デンソーは環境報告書のなかで環境保全コストとその効果額の推移について公表しているが、デンソーですら、99年から 04年度までの累計で約 1400億円程度環境保全の為の投資を行っているのに対して、環境保全による経済的効果としては同 5年間で約 240 億円程度に留まっている。環境保全を短期的な利益に結びつけることは難しいようである。

更に、海外に環境保全運動を展開することを考える場合、特にそれが途上国である場合には、国全体が「環境問題は多少目をつぶり、経済発展を促進する」というスタンスで環境問題を捉えていることが多いように思われる。ゆえに、環境規制が緩和されているのを上手に利用し、利益を上げようとする企業が殆どであるなかで、日本と同じ位厳格なレベルで関連会社に環境保全を求めることは難しくなるものと思われる。

これらの個々の企業の事情の違いをうまく調整しながら、環境保全活動を関係会社や海外拠点に展開していくことが重要になるが、その為にはどのようなことができるだろうか。

例えば、投資負担に対する許容度が各社まちまちであるのであれば、許容度に応じて協力会社の環境保全活動の役割を個別に定義づけることができないか。

環境保全を推進する方法の中には比較的大きな投資を必要するものから、そうでないものまである。例えば、環境改善の為の新製品を開発する場合には多額の投資を必要とするが、生産に使用する部材の使用量低減であれば、大きな投資を必要とせずに環境保全を推進できる。また、リサイクル品の売却費用なども年々経済効果が大きくなっており、これも大きな投資負担なく取り組める環境保全活動のひとつである。

ゆえに、投資負担の大きい環境対応型の新製品の開発は大手のメーカーが優先的に取り組み、投資負担に対する許容度が低い会社で会社は、このあたりの環境保全を重点的に行うことによって、各社の投資許容度に応じた環境保全活動が推進できるように思われる。
とはいっても、利益が目に見える形で証明されるまでは、パートナー企業や世間一般の人の「環境保全は利益貢献に繋がらないもの」という固定観念を払拭することはなかなか難しいものだと考える。現在も「環境会計」などを通して、企業が環境保全に要した費用とその結果として得られた経済効果がどれくらいになっているのかを公表している企業も多いが、環境保全を主導するリーダー的な存在である企業がまず環境保全が利益に直結するものだということを示すことが重要ではないのであろうか。

トヨタのプリウスのように、環境的効果を経済的効果につなげつつある現状を考えると、このことは実現可能だと想像できる。今後の大手自動車メーカーの環境保全活動に期待したい。

<カズノリ (加藤千典)>

  • コラム
  • 業界アンケート
  • 書籍&レポート
メールマガジン

住商アビーム自動車総合研究所が発信する各種情報をご紹介します。当研究所のスタッフが日々移り変わる自動車業界を、経営と現場を結ぶ視点で紐解いた記事やコラム、等です。

無料配信申し込みはこちら
PDF メルマガ見本はこちら

News -プレスリリース・メディア対応 自動車業界ライブラリ

UPページの先頭へ