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コラム

自動車業界におけるベンチャー企業の役割 

(ベンチャー企業の「モトロール自動車」、新型ハイブリッドシステムを開発)

<2005年6月3日号掲載記事>
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ベンチャー系自動車エンジン開発会社「モトロール自動車」の林田素行社長(元マツダのロータリーエンジン研究者)がこのたび省エネ効果を高めた新型ハイブリッドエンジンを開発し、工場がある岡山県新見市で展示会を開いた。
このハイブリッドエンジンの特徴は発電機を装備していないことで、モーターが削減された分だけ軽量化され、軽量化が進んだ分だけ省エネ効果(15 %) が確認されているという。この成果はひとえに林田社長個人のエンジニアとしての資質や継続的な努力に負うところが大きいと想像できるが、一方でベンチャー企業という独特の企業風土や規模・事業運営ステージそのものが今回の成果を生み出したとも言えるのではないかと思う。

冒頭のお知らせにもある通り、弊社もベンチャー企業が持つその独特の効用と自動車業界にもたらすであろう影響力に注目し、「住商アビーム AutoStandingアカデミー」という自動車業界に特化したベンチャー企業の支援ネットワークを準備中である。自動車業界が持つ独特の慣習や要求基準に企業が順応できるようにお手伝いしたり、ベンチャー企業の持つ技術的な「とんがり(革新性)」を求めている自動車関連企業に紹介したりするなかで業界の活性化に貢献することを考えている。このアカデミーを開講するにあたっては自動車業界に関係するあらゆる種類の個人や団体と意見交換させて頂いたが、「業界を活性化させる手段として、なぜベンチャー企業でないといけないのか」という質問を度々受けた。この場を借りて、再び「ベンチャー企業だからこそできること」ということを明らかにしてみたい。

ベンチャー企業だからこそできることとしては、まず「自由な発想ができること」が挙げられる。画期的な技術を生み出す為には、アイデアの数をできるだけ多くすることが第一の条件となるが、ベンチャー企業は誰からも制約を受けずに意見を出せる環境に身を置いている、自由な発想の足かせとなる過去の成功・失敗体験も持っていない為、これらの点において制限を受けやすい大企業に比べると確実に自由な発想ができる。すなわち、アイデアを出すことに躊躇することなく、口から思ったことが言えるので、結果として技術革新に必要な斬新なアイデアを数多く創出することができるのだ。

二つ目に、「素早く意思決定をし、行動に移せる」ことができるのが特徴だ。
革新的技術を市場に投入す際には、失敗モードやその失敗の原因に関する過去のデーターが揃っていない為、革新的技術を実用可能なレベルに成熟させるには、試行錯誤、すなわち PDCA (計画・実行・確認・修正)の4つのプロセスを何度も素早く繰り返すことによって少しずつ理想とされるレベルに近づけていかなければばらない。これらのステップを辿る際、大企業では特に「計画~実行」に移す過程において、特別な手続きを踏まなくてはならなかったり、政治的な圧力がかかったりして実行に移すまでに膨大な時間を要するが、ベンチャー企業であれば、円卓を囲んで話しを少しすれば、すぐ必要なアクションを
起こことができる。だからこそ、新技術を確立させることに適していると思うしこの性質を利用して自動車業界を活性化することができると思う。

三つ目にベンチャー企業は「市場の大きさにとらわれず経済活動を展開できる。」なぜかと言うと、ベンチャー企業は大企業が経済的魅力を感じていない小さな市場でも効率的に収益を挙げることができるからである。なぜ効率的に収益をあげることが可能だろうか?要因の一つは 固定費(特に人件費)の負担の重さが大企業とベンチャー企業とでは異なるからである。大企業の場合だと人事や経理部など直接生産に関わっていない人の膨大な人件費を製品の売上で賄わなくてはいけない。この膨大な人件費を賄い更に内部留保しようとすると納入数量の多い収益効率の良い巨大市場をターゲットとする必要がある。一方、ベンチャー企業は人事や経理部など複数の役割を一人が兼務していることも珍しくなく、固定費の負担が軽い為、小規模な市場のなかで利益を創出していくことが可能な組織ということになる。

以上がベンチャー企業だからこそできることだが、これがストレートに反映され自動車業界の活性化に繋がるわけではない。ベンチャー企業が自動車業界において採用され活性化をもたらすにはいくつかの問題点が解決される必要がある。

考えられる問題とは、一つ目にベンチャー企業が自動車業界の独特の慣習や基準に精通していないことである。それゆえにベンチャー企業が技術的に自動車メーカーから認められたとしても、自動車メーカーと長期安定的に取引をするために不可欠なQCD(品質・コスト・納入)のレベルを一定に維持させることは非常に難しい、これらの部分を一から自動車メーカーが指導するとなるとベンチャー企業を新規採用する為の自動車メーカーの負担は非常に大きなものとなる。

二つ目に、ベンチャー企業の資金繰りに関係する問題がある。自動車業界では新規技術の評価を始めてから量産化させるまで膨大な時間を要する。長いものでは3年くらいの年月が必要とされる。その間、ベンチャー企業は自動車メーカーからの支払いは期待できない。問題となるのはベンチャー企業の製品がいよいよ量産の日の目を見る前に開発費不足でせっかくのベンチャー企業の革新的技術が消えていくことである。ベンチャー企業が部品売上を計上するまでの期間、誰かが企業の運転資金を融通しなくてはいけないだろう。

三つ目に、自動車メーカーの購入担当者がたくさんのベンチャー企業の中から良いものをを選び切れないという問題がある。4月 5日付けの筆者執筆のメールマガジンでも触れているが、自動車関連メーカーの購買担当者によると、自動車メーカーに売り込みをかけるベンチャー企業はこれまでたくさんいたが、殆どの場合が徒労に終わるそうである。それは、ベンチャー企業の営業上の経験が少ないことや業界の慣習に対して精通していないことに起因している。例えば「ベンチャー企業の持つ技術が自動車メーカーの何に役立つのか」を買い手に説明できないことや「自動車メーカーに対して何を期待するのか、すなわち、技術開発の為にお金を出してほしいのか、共同開発をしてほしいのか、特許を買ってほしいのか、製品を買ってほしいのか」を明確に説明できない売り手が多いという問題である。ベンチャー企業の経営者は技術的なバックグラウンドを持っている人が多数を占めるため、誰かがマーケティング的なアドバイスをする必要がある。

以上のような点を踏まえ、ベンチャー企業だからできることの価値を最大化し、問題を最小化するようにデザインしたのが弊社が開講予定の「住商アビーム AutoStanding アカデミー」である。アカデミーは「スクール」「カレッジ」「スカラーシップ」の三つのプログラムから構成されており、このプログラムを通してベンチャー企業は業界特有の知識を得たり、マーケティングスキルを向上させたり、買い手と売り手の出会いの機会を得たり、必要に応じて資金調達を受けることができる。また、このアカデミーのネットワークの中には中小企業診断士・弁護士・会計士・税理士・技術士・モータージャーナリストなどが参加しており、ベンチャー企業は自動車業界で事業を行っていく上で必要な必要な情報をいつでも入手できるようなっている。これらの学習ツールを利用してベンチャー企業の持つ「とんがり」のある製品を一層洗練させ、自動車業界のお客様の競争力向上に一役、買いたいと考えている。

最後に、このプログラムを通じてわれわれは経営者の自己実現と自動車業界の活性化を現実のものにしていきたいと考えている。

<カズノリ (加藤千典)>

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