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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(14)『税効果会計』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第14回の今回は、税効果会計についてです
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読者の皆様は税効果会計については銀行の自己資本比率の問題が報道されていた頃によく耳にしただろう。

税効果会計とは会計上で認識する損益とと税務上認識する損益が異なる為、会計上、税引前の損益に税金を期間対応させる為の会計処理のことである。
以下を紐解きながら税効果会計について解説していく。

(1)会計と税務の損益はなぜ違うのか。
(2)なぜ税効果会計を導入する必要があったのか。

(1)会計と税務の損益はなぜ違うのか。
まず、会計と税務では同じ取引の損益を「収益-費用」として計算するのだが、それぞれ計算する目的が違う為に計算結果が異なる。
なぜなら会計は投資家や債権者に正しい企業の財務状況を反映させることを目的にしている一方、税務は、課税の公平と租税を目的としているからである。
よって企業の取引に合わせて実態を表すことを目的としているのが会計で企業の裁量の余地を制限し、どの業種でもできるだけ同じ計算方法で損益を計算するのが、税務とも言えるだろう。

例えば、ある機械を 100 百万円で購入したとしよう。企業はこの機械が使用できる期間は 4年だと考え、4年均等で 25 百万円づつ償却したとする。一方で、法人税法上では、この種類の機械は10年で償却することが規定されており、法人税法上では毎年 10 までしか償却できない。

この場合、この機械を使って 80百万円の売上を上げたとする。すると、会計上では、売上高 80-償却費 25=税引前利益 55 となる。
一方税務では、売上高 80-償却費 10=税引前利益 70 となる。
税金は上記の税引前利益 70 に対して 40 %と課税されるとすると、28百万円の法人税等を支払うこととなる。

よって結果として会計上では税引前利益 55-法人税等 28=税引後利益27百万円となり、税務上では税引前利益 70-法人税等 28=52百万円とになり、同じ取引でも会計と税務で異なる結果となる。

(2)なぜ税効果会計を導入する必要があったか?
上記の様に毎期同様の取引を行っても税務上の取り扱いの如何によって会計上、税引後利益が変わってきてしまう為、財務諸表を見る投資家や債権者からは企業の収益力が解り難くなってしまっていた。
よって税効果会計を導入することで、税務上の取り扱いに係らず、会計上の税引後利益が、税引前利益に対応した結果となるようにし、投資家や債権者から企業の状態が解りやすくしたのである。

税効果会計導入によって「繰延税金資産 / 法人税等調整額」という仕訳を追加で入れることで損益を対応させる一方、企業に繰延税金資産(負債)という勘定科目で、税務署から今後受け取れる税金や支払うべき税金の額を明示させたのである。

上記(1)の例をに税効果を導入すると会計と税務の償却額の差額15百万円(25百万円-10百万円)に法人税率 40 %を乗じた数値である 6 百万円が税効果会計の対象になる調整額である。

この6百万円を法人税28百万円から差し引くことで会計上の法人税額が22百万円となり、税引前利益55百万円の40%が法人税額として表されることになり、損益を対応させたことになるのである。

つまり、償却費のように 100 百万円という合計の償却額が決まっており、会計では 4年で償却してしまうが、税務は10年で償却するような会計と税務の差異が認識する期間のズレによって発生するものは、会計上調整することとしたのだ。

このように会計と税務の期間のズレが発生するものは、償却費以外に貸倒引当金繰入損や、勤務費用や利息費用などの退職給付会計に係る費用など、が代表的である。

また、日本特有の会計処理慣習として税効果導入までは会計と税務を一致させるように会計処理を行う慣習があった。
これは会計上損失計上しても税務上損失に落ちなければ見合いの税金が戻ってこない。よって会計上損失計上するだけ損益が悪化するという考えによるものであった。
税効果会計を導入すれば、今は税務上損失できない会計上の損失でも損益上は法人税等が還付されたかのような処理になるので、健全な会計処理を促進する副次的な効果もあったのである。

但し、ここまで税効果会計を導入することのメリットの面について記載してきたが、導入によるリスクも発生する。

繰延税金資産は税務署から今後収益を計上し、法人税等を支払う際に相殺できる税務上の金額を表している。

つまり、繰延税金資産とは、税務署向けに未収入金を計上しているが、信用リスクが自社の収益力に依存している資産なのである。

銀行が税資産を会計士の指摘によって取り崩さなければならなかったという報道を思い出して欲しい。

銀行が巨額の損失を計上したが、繰越欠損金の使用期限までに同額以上の収益を計上する計画が立てられなかった為、税資産が計上できなかったのである。

上記(1)の例で同様のケースを考えると税効果会計導入によって 4年後から会計上は償却費は発生しないが、税務上 60 百万円未償却残高が残っている。この 60 百万円に税効果会計を適用することは、6年間で 60 百万円の利益を計上する必要が生まれてくる。なぜなら、税金は税務上の収益から費用を引いたものに対して課税されるものだ。償却費が今後 60 百万円発生するということは、今後 60 百万円以上収益を計上しなければ、税金を支払うことにはならない。
常に収益を計上し続けることが必要になってくるのだ。

税効果会計は、損益面での法人税と税引前利益の対応だけではなく、税務上の企業の状態を投資家に明示することなのだ。

税効果会計を使って収益や財務状態を良く見せることは可能である。但し、収益力を前提に考えるべきであり、会計上の御化粧はいつかは崩れてしまうものである。

むしろ、税効果会計以前の問題として法人税をコストの一部と捉え、マネージするべきである。

法人税は企業が対外的に支払うコストの中で 1,2 を争う規模のコストである。   この法人税をしっかり経営陣がマネージするかどうかで企業の体力や収益力に大きな影響を与えることになるのだ。

<篠崎 暁>

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