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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(13)『退職給付会計』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第13回の今回は、退職給付会計についてです。
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退職給付会計は、企業が将来支払うべき退職金の現在価値に対して企業がどれだけ準備できているか、その実態を帳簿上に反映する会計ルールのことである。

しかし、制度が複雑な上に更に退職給付会計と聞いても良く解らない、興味が無いという方が多いのではないだろうか。また、自分が会社を退職した時にいくら退職金が受け取れるのか、解らない人も多いだろう。

そこで今回は退職給付会計について解説していくこととする。

退職給与の支払い方には大きく分けて 3 つの種類がある。
1.一時金(内部で積み立てた資金で退職時に退職金を支払うケース)
2.企業年金(外部で積み立てた退職金の分割払いのケース)
3.一時金と年金の双方がある、もしくは選択できるケース

一時金については解り易いだろうが、企業年金は複数種類が有り、解りづらい。
大きくわけて企業年金には以下 3 つの種類がある。
1.公的年金   : 厚生年金・国民年金等
2.私的年金   : 適格年金・非適格年金等
3.中間的な年金 : 厚生年金基金等

公的年金とは、従業員負担分と企業負担分があり、厚生年金保険法のもとで採用されているものである。

一方、私的年金とは、企業が信託銀行等との間で退職年金契約を締結し、掛け金を積み立てておき、従業員の退職後に年金又は一時金を退職者に支払うようになっている。

今回の退職給付会計の対象となっているのは、上記の私的年金が中心である。
これは、退職給付会計の対象としているのは企業が負担義務を負うものが、退職給付であると定義されており、私的年金は会社が負担義務を負っているからである。

では、何故退職給付会計を導入しなければならなくなったのだろうか。
企業は掛け金を信託銀行等に支払い、信託銀行等がこれを運用することで従業員の退職金の原資を捻出している。

つまり、掛け金は運用をする前提(例えば年利 5 %)によって必要とされる金額が変わってくるのである。

日本の企業は従来 運用が 5.5 %でなされることを前提に掛け金を決定していたが経済情勢の悪化、株価の下落などで将来の退職金の原資(年金資産)が不足していることが判明。この不足額が 98年当時東証1部上場企業合計で 80兆円程度という推測があったほどである。

そこでこれまでは内部積立している部分については帳簿に計上していたが、外部積立している部分、つまり上記の80兆円がオフバランスになっていた。
この事を問題視し、不足額となっている80兆円を「退職給付債務」として帳簿上に計上させるべく、会計制度を設けた。これが退職給付会計なのである。

掛け金の利回りだけでなく、将来支払うべき退職金を見積もる際には、昇給率や死亡率、現在価値に戻す際に使用する割引率などに前提を置くのでこれらの率が少しでも動けば退職給付債務の額が動き、結果として企業の財務体質を悪化させる恐れがある。実際に過去の利回りの低下などで割引率が低下し、財務状況に悪影響を与えているケースは自動車業界においても散見された。

では、どうやって退職給付制度をマネージしていくことができるだろうか。
簡単に考えると、支払うべき退職金の総額を減少できれば、財務面の影響を軽減することが可能である。但し、退職金を再定義する際には従業員に支払っている給与、賞与、退職金、福利厚生の 4 点を総合的に考える必要がある。

従来、終身雇用の前提の中、退職金は従業員の企業への貢献度に応じた功労報奨としての考え方、従業員の低賃金の補正として退職後の生活保障としての考え方、従業員の賃金の一部後払いとしての考え方の3つの考え方があった。

上記の考え方は、退職金は企業にとって、従業員に「会社に長く勤めたい」と思わせる為のインセンティブとして機能させていたことを裏付けるものである。
労働力を固定化する為には企業がリスクを負う必要があったことは退職給付会計の導入によって明確になった。

しかし、現在は人材の流動化、報酬形態が成果主義に傾斜するようになり、従業員の労働に対する対価の概念が変わってきている。従業員に対する対価は、上記の通り4点を総合的に勘案すべきであり、給与や賞与についての考え方が変われば、当然退職金についての考え方も変わってくるはずである。人をコストとして見るのではなく、ステークホルダーとして考え、インセンティブとして明確な意図を持った退職給付制度が望まれる。

<篠崎 暁>

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