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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(12)『減損会計』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第12回の今回は、減損会計についてです。
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固定資産の減損会計が来年度から適用される。減損会計については何度も新聞などで目にした読者も多いだろう。自動車業界にも影響があるであろう減損会計について今回は解説することとしたい。

減損会計とは、帳簿に記載されている時価が簿価を下回っており、かつ所定の要件を満たしている場合に帳簿上の簿価を時価まで切り下げる(会計上は差額が損失になる)ことを言う。

日本の会計基準は世界の会計の流れに歩調を合わせ、金融商品会計や、退職給付会計などをこれまで適用しており、これを日本では「会計ビックバン」と呼んでいたわけであるが、今回紹介する減損会計もその流れの中に位置付けられるものである。

減損会計は特に不動産業界などに影響が大きく、それゆえに慎重に議論されてきたのだが、いよいよ来年度から適用されることとなる。

固定資産の減損とは一体どのような事態の場合に何をするものなのかを以下、説明していく。

固定資産や土地などが生み出す営業損益が 2 期連続で赤字だった場合や、経営環境や市場価額に著しい悪化が見られた場合、減損する必要があるか、を検討する。

上記事態に陥った場合には、その固定資産や土地が生み出すキャッシュフローの現在価値(ディスカウントキャッシュフロー)や時価と実際の帳簿の価額を比較し、時価や現在価値が簿価より低ければ差額を損失処理するのだ。

では、何故減損しなければならないような事態になってしまうのだろうか。以下に 2 つの例を挙げ、考えてみたい。

1.経営者が予測しない環境の悪化などによって土地などの価額が大幅に下落するような場合。

例えば、工場用の土地をある地域で10億円で購入した、とする。しかし、数年経過した時にその地域の銀行が倒産し、地域経済が冷え込んだ。この結果、土地の値段が大幅に下落し、3 億円となってしまい、10億円との差額である7億円を減損することが迫られるような場合。

2.経営者が工場建設当時に予測した市場の需給予測と実際の需給が異なり、計画通りの収益があげられず工場の資産価値を減損処理する場合。
例えば、中国に進出する部品メーカーが市場の需要を過大に読み違え100万個の部品を製造できる工場を20億円で建設したが、思ったような受注が取れなかった。 実際は 50 万個しか販売できず、当初計画したような収益が見込めなくなり、将来の収益を現在価値に引きなおすと 9 億円となってしまった。よって差額の 11 億円を減損することが迫られる場合。

1 のケースは、土地の時価の問題であり、読者もイメージし易いだろうが、2 のケースは、工場の時価の算定方法について疑問をもたれる読者の方もいらっしゃるのではないだろうか。理論上の時価は今後その対象物(今回のケースでは工場)が今後想定しうる期間内に稼ぎ出すキャッシュフローの現在価値、と定義される。

よって固定資産の減損会計を上手にマネジメントするためには、このキャッシュフローに着目する必要がある。

工場を建設し、収益を向上させていく(工場が生み出すキャッシュを増加させる)ためには、工場建設段階での綿密な調査、検討のほか、工場建設後に仮説の検証、検証結果を踏まえた施策の遂行を行なうことが必要である。
所謂 PDCA のサイクルを投資についても行う必要があるのだ。

つまり、Plan (事前準備・調査)、Do (投資の実行)、Check (当初計画との差異分析、市場の動向の確認)、Action (人的物的なリソースの投入、戦略の見直し)の体制を投資実行時に持ち合わせていない企業は潜在的な減損のリスクを抱えていると言えるだろう。

このように減損会計は、会計上の数値的な現象だけではない。上記の PDCA のサイクルを行うような社内の体制、ひいては経営の姿勢自体を問うものなのである。当然のことながら PDCA サイクルを円滑に回すことは、財務部門のみの力では為しえない。財務や生産、販売などの各部門が一体となって行うものであり、それができなければ、工場、もしくは企業の価値が減損という形で悪化してしまうのである。

<篠崎 暁>

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