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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(8)『DCF』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第8回の今回は、DCFについてです。
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今回は企業価値算出の上で使用されるDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法についてその意味を解説したい。

先ず、企業価値の算出方法は大きく分けると以下の 3 つの手法がある。

1)再取得価額をもとに計算する手法
資産を再取得する場合の価格をベースに、負債を除して算出する。別名、純資産法。2)類似企業の時価をベースに測定する手法
類似企業のPER 比率や PBR 比率等を元に、対象企業の価値を算出する。
3)キャッシュフローを元に計算する手法
企業の価値をその企業が将来に渡って生み出すキャッシュの現在価値に基づいて評価する、という考え方に基づく手法。

本日お話する DCF 法は、この中の3)に相当する。

キャッシュフロー重視の時代背景もあり、最近では3)がポピュラーな企業価値算出方法になっている為、この DCF という 3 文字英語を聞いたことのある方も多いだろう。

それでは、企業価値を算出する際のディスカウントキャッシュフローの計算手法のおおまかな流れを見てみよう。

(1)中長期の事業計画を基にフリーキャッシュフローを計算する。
(2)それを基に資本コストで現在価値に割引計算を行う。
(3)事業外資産の処分価値を加算する(処分時期によっては、必要な現在価
値への割引計算を行う)。
(4)有利子負債を控除する。

(1)中長期の事業計画を基にフリーキャッシュフローを計算

まず、中長期(3年、5年、10年などが多い)事業計画からフリーキャッシュフローを算出する意味を考えてみる。フリーキャッシュフローとは、前回のFCについての解説
『今更聞けない財務用語シリーズ(7)『フリーキャッシュフロ…』
で定義した通り、全てのステークホルダーに対価を支払った後に企業の手元に残るキャッシュの事である。
即ち、企業が策定している事業計画からフリーキャッシュフローを算出する事で企業の目指している経営方針から将来生み出されるキャッシュが算出できる。

更に、事業計画の想定期間以降のキャッシュフローについては予測不可能であるものの、企業は永続的に続くものであるというゴーイングコンサーンのコンセプトを是とすれば、その企業を取り巻く諸環境や企業の方向性から成長率を推測してキャッシュフローを見積もり、これが永続的に続くという前提に置き換える。よくあるやり方としては、事業計画最終年度の FCF をベースに上記加工を行うことが多い。

(2)資本コストを用いた現在価値への割引計算

DCFの一番とっつきにくい点がこの割引計算だと言えるだろう。簡単に言えば、現在預金を 100 百万円するのと1年後に預金をするのとでは、価値が違うということをイメージすれば解り易い。現在 100 百万円を預金して利息が年利5 %付くと前提を置けば現在の 100 百万円は 1年後に 105 百万円となる。割引計算はこの逆で、1年後の預金を100百万円とすると、その現在の価値は100百万円÷(1+5 %)の約 95 百万円となるというものだ。同様に、2年後の100百万円は100百万円÷(1+5 %)の 2 乗で91百万円の現在価値となるのである。

これを企業に置き換えてみる。企業が全てのステークホルダーに支払った後のキャッシュを運用しないでおくはずは無く、ステークホルダーを満足させるだけの利率で運用しなければいけない。例えば新規事業を立ち上げたり、工場を拡張したり、新鋭の設備を導入したりすることで収益を拡大することをイメージして欲しい。但し、そのキャッシュの運用利回りは株主の期待に答え、借入先に支払う利息分を賄うだけの利率でなければならない。
DCF 法ではこの利率を資本コストとしているのである。資本コストについては前々回解説したが、
今更聞けない財務用語シリーズ(6)『資本コスト』
株主がその企業に期待する利回りと金融機関等からの借入に伴う金利コストが資本コストである。この株主資本コストと負債資本コストを加重平均したものが DCF 法で割り引く際に使用される利率である。つまり、企業は今期得たキャッシュ 100 百万円を来期資本コスト以上の利率で運用することを求められているのである。

このように企業の将来のフリーキャッシュフローを割り引くことで、全てのステークホルダーの期待や要求に答えた後の現在のキャッシュの現在価値が算出できる。

(3)事業外資産の処分価値の加算(処分時期によっては、必要な現在価値へ
の割引計算を行う)。

キャッシュフローの総和に有価証券など事業に直接係わりの無い資産のことでこれを売ったらいくらのキャッシュになるか、を試算した上で加算すると資産を全てのステークホルダーの要求に答えた後の手持ち資産を運用することで生み出されたキャッシュの総額が算出される。

(4)有利子負債の控除

この資産が生み出すキャッシュから有利子負債を差し引けば、現在の借り入れを全て返済した前提での企業のキャッシュを稼ぐ力が計算できる。

読者によっては、DCF法は極めて金融的な考え方だと思われるかもしれない。
たしかに DCF は様々な前提を置き、しかも将来予測できないようなキャッシュフローまで加味しているので信憑性に欠ける部分もある。また、通常の事業活動の結果を利回りで換算されてしまうことにも抵抗があるだろう。

しかし、DCFは、経営者の決めた今後の経営方針に沿って算出される、そのポテンシャルも含めた当該企業の収益力をステークホルダーの期待で割り引いた現在の価値なのである。

違う経営者が事業計画を策定し直した場合に全く違う価値になってしまうものである。DCF 法で求めた現在の価値は、経営者に対して「あなたが行おうとしている経営方針にはどのような価値がありますか?」と質問した時の一つの答えになるだろう。

<篠崎 暁>

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