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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(6)『資本コスト』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第 6 回の今回は、資本コスト についてです。
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前回迄 M&A の手法について解説をしてきたが、今回は買収価額や資本構成を検討する際に重視される資本コストについて解説したい。

企業が事業を行う上で資金を調達するが、資金を提供する企業もしくは個人は資金を効率良く運用しようと考えている。資本コストとはこの資金を提供する側が求めるリターンの事を言う。資本コストには金融機関から借入する際に発生する負債資本コストと増資や出資時に株式の形で資金を提供する際に発生する株主資本コストがある。

資本コストは最近新聞やニュースなどで耳にするようになった言葉という印象が読者にはあるだろう。実際に資本コストは高度成長期時代に日本では間接金融が発達してきたこと、株式の持ち合いが多々行われており、株主が経営に影響を及ぼす事が少なかったことから注目されてこなかった。しかし、企業が市場から直接資金を調達するケースが増加し、持ち合いが解消され、個人投資家、外国人投資家が増加したことから株主重視の経営を行うようになってきている。そこで資本コストの内、株主資本コストが注目され、企業価値算定などに使用され始めているのだ。

まず、負債資本コストと株主資本コストについて説明する。

1)負債資本コストは所謂有利子負債に係る金利コストのことである。例えば 100 百万円の借入を A 金融機関から行い、10年固定金利が年利 5 %の場合、毎年の負債資本コストは 5 百万円となる。

2)株主資本コストでイメージされるのは配当であろう。しかし、株主資本コストとは配当だけではなく、株主が期待する利回りのことを指すのである。
株主が期待する利回りには配当金と株式売却益が含まれてる。
配当金についての利回りの計算は比較的簡単に算出できるが、株式売却益は将来の当該株式の値上がりを予測した上で算出する必要がある。この株式の値上がり分は通常、CAPM (Capital Asset Pricing Model:資本試算価格構成モデル)という理論に基づいて算出される。ここでは CAPM の詳細説明しないが、株主資本コストをリスクフリーレート(10年物国債の利回り等)と市場のリスクプレミアムに個別企業の関連性率を乗じる形で算
出する。つまり、国債というリスクの無い債券の利回りに個別企業の市場から見たリスクを足したもので、リスクに応じて株主の求める利回りは大きくなるという前提を置いた計算手法である。
一般的に株主資本コストレートは約 10 %が国内の上場企業の平均と言われている。ある企業に100百万円の投資をした場合には10百万円のリターンを株主が期待していることとなるのだ。

株主資本コストは企業を経営する上で株主から要求されるハードルレートの様なものなのである一方バーチャルなコストであるという一面に注意がである。

上記の様に一般的に株主資本コストの方が割高となっている。なぜなら債権者と株主が負担するリスクの度合いに応じて、コストが増加するという前提がある為である。一般に債権者と株主のある企業が清算した場合のリスクは株主の方が大きい。つまり、清算した場合、債権者は株主に優先して弁済が受けられる為、株主は債権者より多くのリスクを負っていると言えるのである。

では、実際に負債で資金を調達する場合と資本で調達する場合をどのように使い分ければ良いのだろうか。一般的には事業を行う上での運転資金等は負債で調達し、事業規模を拡大させる場合、抜本的な再建を行う必要がある場合などは資本で調達しているケースが多い。これは必要とする金額の多寡も大きな要因であるが、株主が新たなリスクを負う局面に資本で調達するとも言えるだろう。

企業の経営者は、事業規模や再建の際に何に資金を使い、将来どうなるのかを明確にした上で債権者や株主などのステークホルダーを満足させられるだけの収益をあげなければならないのである。ビジョンの無い上場や株主調整だけの増資などは株主資本コストを増大させるだけである。これらの資本政策は後で株主からの要求が厳しくなり、経営手腕を十分に発揮できなくなるであろう。株主を意識した会社経営が今求められている。

<篠崎 暁>

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