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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(5)『LBO』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第 5 回の今回は、LBO についてです。
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LBO とは、「Leveraged Buy Out」の略であり、被買収会社の資産等を担保に買収会社が金融機関等から資金調達し、その資金で買収を行うことをいう。

昨今、多くの金融機関のホームページで LBO に関するサービスメニューが紹介されている。実際、最近の自動車業界における買収の事例でも投資ファンドが買収側になっているケースでは LBO の手法によるものも多く、LBO の手法による買収は着実に日本に根付いてきていると推定される。

具体的な LBO の手法は以下の通りである。

例えば、Aという投資ファンドが、B という会社を買収するとしよう。
B 社を買収するにあたり、A ファンドは B 社の買収だけを事業目的にした受け皿会社 C 社を自己資金で設立すると同時に、C 社に金融機関から資金調達させる。C 社は、いわばペーパー会社で資産を持たないので、C 社が金融機関に担保として供するのは B 社の資産か、B 社の将来のキャッシュフローかどちらかである。
C 社は、(A 社の出資で得た)自己資金と金融機関からの借入で得た資金で B 社を買収する。買収が完了すると、C 社は B 社を存続会社として B 社と合併する。こうすることにより、C 社の借入は B 社の借入に振り替わる。

なぜ投資ファンドは、こんな面倒な手続を踏まなければならない LBO を好むのだろうか。その理由は、少ない自己資金とリスクで最大の効果(投資リターン)を得ることができるからである。

話を単純にするために、今年 100 億円で買収した会社を翌年売却するとしよう。また、売却金額は買収金額に翌年の純利益を加えたものと仮定し、対象会社は翌年純利益 20 億円、キャッシュフロー 35 億円を出すことが固いものとする。税率は 40% とする。

あたりまえのことだが、投資ファンドといえども自然発生的に巨額の買収資金を持っているわけではない。投資のプロが、高い利回りの期待できる投資の手腕を持っていることを訴えて出資者を募り、出資者から集めた資金をプールして買収に乗り出すのだ。

出資募集の際に期待利回りを年率 30% 等と出資者に示すことが求められる(保証ではないものの、それを下回るようだと投資のプロとはいえないと出資者から文句を言われ、次回以降募集に応じる出資者がいなくなってしまう)。

もし、投資ファンドが買収資金 100 億円全額を自己資金(出資者から集めた資金)で賄うとしたら、キャピタル・ゲインは 20 億円(=120 億円 -100 億円)となる。投資利回りは 20% で、出資者に対して 年利 30% の仕事を果たしたことにならなくなる。

ところが、もし買収資金 100 億円のうち自己資金は 70 億円のみ、残り 30億円は LBO を活用して金融機関から年利 10% で調達した場合はどうなるだろうか。

対象会社は上記の手法で述べた通り新たに 30 億円の返済義務を負うが、これは 35 億円のキャッシュフローを使って返済可能である。
また、10% の利息支払が発生するので利益は減るものの、支払利息は税務上損金なので純利益に影響するのは支払利息の増加分(3 億円)の 60%=1.8 億円だけである。即ち、純利益は 18.2 億円である。

一方、投資ファンドから見ると、70 億円の自己資金(出資者から集めた資金)で買収した会社が翌年 118.2 億円で売却できる。即ち、48.2 億円のキャピタル・ゲインとなるから、投資利回りは 69% となって出資者に対して期待以上の仕事を果たしたことになる。

本来であれば、自分自身で負担しなければならなかった資金とリスクを金融会社に移転して負担を軽減しながら、逆にリターンは高まるということになるのだ。

では、LBO はいいことづくめなのかと言うとそうではない。次のようなリスクを伴うことを勘案しなければならない。

(1)LBO の手法では、リスクの一部を金融機関が負わせることになる為、借入の金利コストは通常よりも高くなる。また、有利子負債が増加して、損益面では金利分(税引後)、キャッシュフローでは返済額分の負担が増加する。その余力がない会社の場合は、安全性、健全性に大きな支障が出る。

(2)金融機関もリスクを回避する為に借入契約の条項の中で EBITDA 目標値等各種の制約条件を設けることが多い。その結果、事業経営の自由度、柔軟性が低下し、顧客ニーズや競争環境の変化、新たな事業機会に機動的に対処することが難しくなるおそれがある。
これらの留意点を踏まえて、通常 LBO の対象になる企業の特性を挙げると以下の通りである。
内部留保が多くて自己資本比率が高い、逆に有利子負債は少ない、事業環境が比較的安定していて経営上の課題が限定的かつ明確である、従って業績、キャッシュフローとも安定的で先が読みやすい。

即ち、LBO によって財務状況が悪化しても、それを吸収できるだけの体力が元々高く、限られた経営課題の着実な実行によって、安定的な業績とキャッシュフローが維持できる企業であれば、着実な有利子負債の返済が期待でき、大きなキャピタルゲインを得ることが可能になる。

そんな会社がどこにでもあるのであれば苦労しない。買収する側の助力、貢献が不可欠であるが、相性もあればもともとのポテンシャルの問題もある。
財務面からだけではなく、ビジネス面からもそのような相性やポテンシャルを持った企業なのか、よく見極めたうえで適切な買収スキームを構築することが肝要である。

<篠崎 暁>

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