今更聞けない財務用語シリーズ(2)『株式交換』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

今回は、第2回は、株式交換についての説明です。

第2回 『株式交換』
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「M&A」(Merger (合併) And Acquisitions (買収))の中で前回は経営統合の形態として「持ち株会社」について解説したが、今回は買収の中から株式交換について紹介したい。

株式交換とはある企業を 100% の子会社にする手法であり、子会社になる会社の株主からすべての株式を親会社になる会社が受け取り、交換に親会社となる会社の株式を渡し、100 %の親子会社の関係をつくる方法である。昨今の自動車業界においてもミツバによる自動車電機工業の 100% 子会社化、日立製作所によるユニシアジェックスの 100% 子会社化など株式交換制度を使用したケースが散見される。

株式交換制度は平成 11年度の商法改正によって新たに導入された制度である。企業グループを形成する為の有効手段として完全親会社の創設を簡易的且つ円滑に行えるように導入されたものである。また同年度に税制改正も行われ、売り手の企業で発生する株式売却益の課税繰延も認められる。こうした利点から従来は株式譲渡(株式を現金で買う)が 100% 子会社化の手法として一般的であったが昨今の買収では株式交換が利用されるケースが増えているのである。

以下、日立製作所とユニシアジェックスの株式交換を例に株式交換制度について解説する。

1.概要
2002年 10月に日立製作所はユニシアジェックスを 100% 子会社化した。それまでは日立製作所はユニシアジェックスの株式を 16.7% 保有していた。日立製作所は新株を発行し、その株式を旧ユニシアジェックス株主である日産自動車等に割り当て、その株式と等価のユニシアジェックス株と交換した。

日産自動車   日立製作所       日立製作所
\       /   ⇒       │
ユニシアジェックス        ユニシアジェックス

2.交換比率
株式交換をする際には交換比率を決定しなければならない。前述の通り、株式交換を行う為には交換する株式同士が等価にするのだが、株式の価値が異なる為、交換比率によって等価にする必要があるからである。
交換比率の計算は、通常中立的な立場にある第3者機関(この場合はみずほ証券)に算定を委託する。交換比率は株価(例えば 6 ヶ月平均)、時価純資産価額、事業計画から DCF 法により算出した株主資本価値などから算出される。
当該例の場合では、日立株式1に対して、ユニシア株式 0.197 としている。つまり、ユニシア株1,000 株に対して日立製作所株式が 197 株割り当てられる計算となる。
日立製作所の評価を市場株価平均法、ユニシアジェックスの評価を市場株価平均法、類似会社比較法、DCF 法の複合で計算したとしている。
2002年 9月 30日時点での日立製作所の株価が 610 円 / 株となっている。ユニシアジェックスとの株式交換で 25,143,245 株を発行している為、ユニシアジェックスの 83.3%分を約 153 億円で買ったことと同意義となる。

では、なぜ日立製作所はユニシアジェックスの株式を現金で買わず、株式交換したのだろうか。まず、経済計算、手続き、税務の観点から現金で株式を買う場合と株式交換の場合を以下、比較した。

1.経済計算
株式譲渡では多額の資金を要する為、資金調達に係る金利の支払いが発生する為、株式譲渡より株式交換の方が金利分得なように見える。しかし、新株を発行し、その株式を原資に株式交換を行う為、発行済み株式数が増加することによる配当の支払い等の資本コストが増加する事を忘れてはならない。この資本コストと金利の支払い額を比較する必要がある。

2.手続き
株式譲渡は規模によるが商法上の手続きは不要だが、株式交換は商法上特別決議が必要(簡易株式交換の場合は不要)。

3.税務
株式交換を行った際に売り手の企業で発生する株式売却益に課税されない為、売り手での税負担が軽減される。

まず、今回現金で株式を購入する場合(即ち株式譲渡の場合)は、長期の金利が 1% だとすると年間 1.53 億円の金利の支払いが発生する。一方、株式交換を選択する場合は、配当コストを勘案しなければならない。当時の日立製作所の配当は1株 6 円で発行した新株数に乗じると 1.51 億円となり、若干株式交換の方がメリットがあった。

また、税務面からはユニシアの株主数が多かったことから株主への影響を考慮し、売却益に対して課税されない株式交換を選択したと思われる。

これに加えて、日産に日立製作所株を保有してもらいたいという思惑が日立製作所側にあったのかもしれない。それにより、日産のユニシアに対する関心や利害が間接的に継続するとともに、日産と日立の関係強化に役立つからだ。

このように株式交換は手続きや税制などの整備により、頻繁に使用されるようになった。また 100% 子会社にすれば連結納税を導入することも検討できるだろう。しかし、条件次第では株式譲渡の方が有効な場合も存在する。何が何でも株式交換を選択するのではなく、現金で買収した場合や他の手段と比較検討することが必要だ。

<篠崎 暁>