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コラム

グローバル規模での生産拠点の柔軟化

◆スズキ、ハンガリー子会社で生産する新型 1200cc 車「スプラッシュ」を発売

世界戦略車「スイフト」をベースに、独オペルと企画・デザイン段階で連携し開発した。ハンガリーのマジャールスズキで生産し、日本に輸入して発売するスズキ初の自社ブランド輸入車。123.9 万円。月販目標 500台。

全長 3715×全幅 1680×全高 1590mm、ホイールベース 2360mm。スイフトより全長を 40mm、ホイールベースを 30mm、全幅を 10mm 短縮し、全高は 80mm高い。

スイフトのプラットフォームを基に欧州で徹底した走りこみを行い、世界に通用するしっかりした走りと快適な乗り心地を目指した。日本仕様には CVTを採用。10 ・ 15 モード燃費は 18.6km/L。専用開発のコンチネンタル社製タイヤを装着。運転席・助手席 SRS エアバッグ及びフロントシート SRS サイドエアバッグ、SRS カーテンエアバッグの 6 つのエアバッグを標準装備した。

シート位置を高くして乗降性を高めたほか、アイポイントを高くして視界も向上させた。インパネデザインの出発点となった大型のインパネトレー (助手席) を採用。主に 20~ 40 代の女性をターゲットにし、座席に水玉模様をあしらい、内装もカラフルにした。イモビライザー、セキュリティアラームシステムを標準装備した。

ボディーカラーとコーディネートした 3 種類のインテリアカラーを採用。ターコイズインテリアを採用した「ラグーンターコイズメタリック 2」と「コスミックブラックパール」。ブラックインテリアを採用した「スプラッシュグリーンメタリック」と「ブライトレッド 5」。ブルーインテリアを採用した「カシミールブルーメタリック 4」と「スペリアホワイト」の全 6 色を設定した。

欧州各国で「女性を中心に支持が得られた」、「スプラッシュの投入で小型車のラインアップの拡充を図る」、「我々が小型車で持っている強みを発揮していきたい」と津田紘社長。欧州では今年 3月に発売し、24 カ国で販売している。オペルにも「Opel Agila」として OEM 供給している。
<2008年 10月 21日号掲載記事>

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【スズキ初の逆輸入車「スプラッシュ」】

今週発売開始したスズキの新型車「スプラッシュ」であるが、スズキ初のいわゆる「逆輸入車」である。スプラッシュは、既に欧州では今年の春から販売を開始している。同モデルは、国内でも生産しているスイフトのプラットフォームを流用した小型車であり、その気になれば、国内生産も可能だったはずである。

生産を担当しているハンガリーの製造子会社マジャールスズキでは、OPEL にOEM 供給している「OPEL Agila」も生産しており、二車種合わせて年産 11~ 13 万台の生産を計画している。国内販売目標が月間 500台(年間 6,000台)という規模を考えれば、マジャールスズキで生産して逆輸入というのが効率的との判断であろう。

今回は、この逆輸入について考えてみたい。

【逆輸入車の現状】

国内メーカーの逆輸入車であるが、これまでもいくつかのメーカーが取り組んできた。日本自動車輸入組合の統計によると、毎年 26 万台前後の車両が国内に輸入されているが、このうち 2007年度は約 3.6 万台、2006年度は約 1.5万台が国内メーカーによる逆輸入が占めている。昨年度は、日産のデュアリス(英国生産)の好調もあり、日産だけで約 2.6 万台を逆輸入していた。トヨタはアベンシスやタウンエース等、ホンダはフィットアリアを逆輸入しており、両社も毎年数千台単位で逆輸入している。

日産は、発売当初は英国工場で生産したデュアリスを国内に逆輸入していたが、販売が好調なため、今年から日産九州工場での生産に切り替えた。販売開始した昨年当時はユーロ高が逆風とも言われていたが、「グローバル規模で為替の影響を回避するために生産分担が不可欠」と同社は説明していた。しかし、日欧両市場で、当初の計画を上回る販売が続いたため、英国工場の生産能力を引き上げるだけでなく、日本市場分は国内生産に切り替えることとなった。日欧に加え、豪州、南ア、中近東でも販売を開始し、昨年は 14 万台を販売した。今年は中国でも生産・販売を開始している。

このデュアリスのケースでは、販売好調のため逆輸入車ではなくなってしまったが、販売当初に日産が説明していた「グローバル規模でのリスク回避」という観点で、逆輸入車という選択肢をもっと積極的に活用することが、今後重要性を増すのではないかと考える。

【グローバル規模での生産拠点の柔軟化】

昨今の急速な経済情勢の悪化の中で、着実に円高が進行している。先週は 13年ぶりに 1 ドル 90 円台に急騰し、1 ユーロも 116 円台になった。毎年 6 百万台輸出してきた国内自動車業界にとっては、大きなインパクトであることは間違いない。

この経済不安の今後の動向については、様々な意見があるであろう。確実に言えることは、こうした情勢の時こそ、できること、やるべきことを愚直に、地道に進めることが、嵐が過ぎ去った後に快復するために重要なことだと考えている。

円高が進んだから逆輸入車を増やそう、というのではない。急速に変化していく経済情勢の中でリスクを回避するために、グローバル規模での生産拠点の柔軟性を高める施策を進めていくことが重要になってくるのではないかと考える。

これまで国内メーカー各社は、多様化が進む国内市場に柔軟に対応する多品種少量生産を実現するため、国内の生産ラインを中心に混流生産ラインの導入を進めてきた。しかし、ご承知の通り、成熟した国内市場では、大きな成長を見込むことは難しく、一部の環境対応車を除いて、これ以上生産ラインを増やすわけにもいかないであろう。

だからこそ、グローバル規模での生産拠点の柔軟化を積極的に進めるべきではないかと考える。自動車市場はかつての日米欧三極の時代から、BRICs を始めとした新興市場が加わり、グローバル規模での自動車市場の面積は確実に広がり続けている。需要があるところで生産するというグローバル展開の理想論ではあるが、こうした環境下においての生産拠点の展開にあたり、第三国からの相互供給のような柔軟性が不可欠となるであろう。

【現実的な方向性】

現実的に考えれば、国内市場が今後急拡大するとは考えられない。一方で、国内を始めとする現状の生産能力も、雇用、設備償却、系列サプライヤの維持等を勘案すれば、引き続き維持していく必要がある。そうした現状の中、国内生産台数を 6 百万台レベルに減らして、輸出台数と同規模で輸入するというわけにはいかない。

しかし、車種展開については、これまで国内生産の柔軟性によってラインナップの拡充を図ってきたものを、今後は、販売台数の少ない車種は生産台数の多い地域・工場からの逆輸入でカバーしていくなどの施策は、現実的にも可能なのではないだろうか。

そのためにも、販売台数が少ない国内専売車種は縮小させ、グローバル展開しているモデルを充実化させていく必要があるだろう。実際、スズキは、ここ数年で「世界戦略車」と称し、海外で通用する商品設計を進め、国内にも導入してきた。今回のスプラッシュが、同社の「世界戦略車」の 4 車種目にあたる。勿論、軽自動車のように、規制対応上、国内市場専用に設計する必要があるセグメントもあるが、海外市場と共通化できるセグメントも多いはずである。

もっと言えば、こうした取り組みを、メーカーの壁を越えて実現することも有効であろう。生産台数が限られるメーカーにとっては、他社との提携によるラインナップ拡充の意義は更に大きいはずである。

日産は、次期マーチをタイで生産し、逆輸入する計画があることも一部雑誌で報道されている。ホンダもタイで生産したフィットアリアを逆輸入しており、今後タイ政府が推進するエコカー政策への各社の対応次第では、タイからの逆輸入が更に拡大する可能性もある。

日産は、欧州向けでは、スズキからの OEM 供給で、新型小型車を導入するということも報道されている。この小型車は、スズキがインドで生産するものだという。各国政府の FTA 等の施策によるところも大きいが、こうした地域に縛られない生産・供給関係も加速する可能性がある。

いずれにしても、こうした取り組みを少しずつ増やしていくことが、現実的な選択肢となるだろう。

<本條 聡>

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