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コラム

自動車業界とXX業界 第11回『自動車業界と総合商社』

自動車業界と××業界を比較し、製品、業界間の関連性や類似点・相違点から自動車業界への示唆を探るこのコラム。弊社副社長の秋山喬とアビームコンサルティング経営戦略事業部マネージャー山田将生の共同執筆です。

第 11 回の今回は、「自動車業界と総合商社」です。

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【はじめに】

第 11 回目となったこのコラムだが、趣旨を説明すると、自動車業界と他業界とを比較し、業界間の関連性や業界特性等に関する類似点・相違点を把握。最終的には他業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆を導き出そうとするものである。

これまで 10 回にわたり、上記の趣旨に沿って様々な業界と自動車業界とを比較してきた本シリーズであるが、第 12 回となる次回で完結にしたいと考えている。そして、今回と次回に関しては自動車業界と弊社の双方の親会社である総合商社、コンサルティング会社との新たな関係の方向性を模索してみたいと思う。

まず、第 11 回となる今回は自動車業界と総合商社である。

【自動車業界と総合商社のこれまでの歴史】

総合商社は世界的に見てもユニークなモデルであり、元々、貿易立国を目指す日本の貿易部門・国際部門として輸出・輸入業務中心にビジネスを展開してきた。

日本にとって貿易立国のスタイルで欧米諸国を追いかけるという方向性は高度成長期まで、一貫して国家的な命題であったため、総合商社も貿易会社としてその先兵を担っていたといえるだろう。

そして、その役割は自動車業界においても例外ではなく、海外マーケット情報収集、完成車輸出、海外卸売(ディストリビューター)といった機能を通じて、米国をはじめとする自動車メーカーの海外マーケット開拓に大きく貢献してきた。

しかし、80年代の小型車ブームを経て、徐々に自動車メーカーも海外ネットワークを整備し、主要マーケットに関しては自前でディストリビューター機能を担い、また為替リスクの回避、消費者に近いところでものづくりを行うという観点から現地生産を推進してきた。

結果として、従来の貿易会社としての機能としては、今後、マーケットが拡大することが予測されるものの、現在はまだそれほどの規模になっていない新興市場への完成車輸出、及びディストリビューター機能といったものが現在、総合商社の機能として主に残っている。

従来の貿易会社としての機能は上のとおりであるが、現在、総合商社はこれまでの貿易で培ったマーケティング、金融、物流、IT といった強みを生かして、業界におけるソリューション・プロバイダーとして、業界の求めに応じて、もしくは自らビジネスチャンスを発掘し、事業参画、機能提供を行っている。

例えば、弊社の親会社である住友商事の自動車事業本部ではディストリビューター機能からマーケットに更に近づき、現地での小売(ディーラー)機能、ファイナンス機能を海外各地で担っている。また現地生産を行うための設備・機材、部品の輸出も行っている。
このように現在でも自動車業界の様々な箇所で総合商社の事業活動の存在を確認することができるが、従来のように海外販売であれば総合商社というような明確に自動車バリューチェーンのある一端を担うという存在ではなくなってきている。

しかし、総合商社は日本ならではの業態であり、産業の補強者としての役割を担ってきた。現在でも、その力を上手く活用すれば日本の自動車業界が更に発展することにつながるのではないかと思うのである。

【現在の自動車業界の課題】

現在の自動車業界に目を向けてみると GM、フォードといった外資系自動車メーカーが業績的に不調である一方で、日本の自動車業界は完成車の世界シェアが5年連続で拡大するなど引き続き好調を維持している。今後、世界の自動車業界のフロントランナーになるのも時間の問題と思われている日本の自動車業界だが、現在の好調の裏には潜在的な不安も存在する。

まず、商品・マーケティング面では自身がフロントランナーになることにより、これまで日本車の強みであった品質、生産性といった面に加え、欧米系の強みであった新技術開発や商品企画といった面までもリードしなければならない立場になるということが挙げられる。

これまでどおり品質が良いというのは勿論のこと、面白くて魅力的な車を生み出すことが求められるといえるだろう。

そして、車両の電子化や通信端末化が進行している現在においては、面白くて魅力的な車を作るためには自動車業界内でこれまで培われた既存の技術だけでなく、自動車業界外の異業種が持つ技術を積極的に活用していく必要があると思われる。

また日本車のマーケットをより一層、グローバル化し、新興市場にまで広げようとすれば、現地消費者の嗜好、財布に合った新興市場向けへの車両を開発する必要にも迫られることになる。

このように商品・マーケティング面での対応だけでも自動車メーカーに負担がかかるのに加え、サプライ面でも大きな負担がのしかかることになる。

サプライ面では、市場のグローバル化に対応するために、生産拠点もグローバルに展開していかなければならず、自動車メーカーレベルでも、生産技術者等の技術リソースが慢性的に不足するという事態が起こっている。

また、それにも増して、自動車メーカーをはじめとする大手のグローバル化の動きに、部品を供給する、いわば足腰の役割を担う中小部品メーカーが付いていけていないという状態も発生している。

これは自動車メーカーに権限と負荷が集中しすぎているという産業構造のもたらした弊害ともいえるが、日本の自動車業界の強みの源泉が部品メーカーと一体になって行うものづくり、そしてそれによってもたらされる品質であったとすると今後の日本自動車業界の発展を考える上で重大な問題である。

【自動車業界と総合商社の新しい関係の方向性】

以上のような自動車業界の課題に対して今後、総合商社はどんな役割を担い、自動車業界とどんな関係を構築していったら良いのだろうか。

そもそもにさかのぼると、これまで商社は自身の行動様式として外部環境、業界の中に存在する様々なギャップ、格差に着目し、それを解消するための仕組みづくりを行ってきた。高度経済成長期まで、いわゆる貿易会社であったのも国内、海外という情報格差を埋める役割を担ってきたわけである。

現在、国内、海外というギャップは以前に比べると縮小しているが、それに変わり顕在化してきた日本の自動車業界における大きなギャップは権限と負荷が一極集中する自動車メーカー、自動車部品メーカー大手と、その事業活動についていくだけのリソースが不足している中小部品メーカーとの間のギャップではないかと思われる。

そういった中小部品メーカーの領域は従来、市場規模が完成車に比べると小さかったため、仲介という総合商社の仕組み(ビジネスモデル)では、ビジネスが成立しづらかったが、昨今の総合商社の事業投資会社化により変化が起こりつつある。つまり、自身がより大きなリスクを取るモデルを採用することでギャップを埋めることが出来るようになるわけである。

自動車業界は製品が摺り合わせ型のアーキテクチャーということもあり、現在でもバリューチェーンの川中にあたる組立工程において大きな付加価値が生まれる点が他の製造業と比べて顕著である。そのため、総合商社も収益性という面では、現在でも川中で事業活動を展開するのが効率がいいわけだが、産業の補強者としての役割を考えると、上に記したような現在の業界のギャップを埋めるような事業活動も展開していくべきだろう。

自動車業界の大手としても、現在の強みを有したまま、今後、更にグローバルに事業を展開していこうとしたら自身の足腰ともいえる中小部品メーカーの強化は、大きな課題となるため、総合商社の包括的なサポートを検討する価値もあるように思う。

また、現在の日本自動車業界におけるもう一つのギャップとしては、異業種との連携の必要性が挙げられる。面白い車、魅力的な車を作るにはこれまでの業界内にはなかった異業種の知恵や技術を流入させることが効果的と思われるが、現在はまだ自動車業界各社が単発的に行っている状態である。

その点、産業横断的に事業を展開している総合商社であれば、上記ギャップを埋めるための仕組みを効果的に構築していくことが可能ではないだろうか。

以上は、自動車業界と総合商社の新たな方向性の一例ということになるが、従来の枠を超えた新たな Win-Win の関係構築により日本の自動車業界が更なる発展を遂げることになるのではないかと考える。

<山田 将生>

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