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コラム

自動車業界とXX業界 第7回『自動車業界と建設・不動産業界(2)』 

自動車業界と××業界を比較し、製品、業界間の関連性や類似点・相違点から自動車業界への示唆を探るこのコラム。弊社副社長の秋山喬とアビームコンサルティング経営戦略事業部シニアコンサルタント山田将生の共同執筆です。

第 7 回の今回は、「自動車業界と建設・不動産業界(2)」です。

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【はじめに】

第 7 回目となったこのコラムだが、趣旨を説明すると、自動車業界と他業界とを比較し、業界間の関連性や業界特性等に関する類似点・相違点を把握。最終的には他業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆を導き出そうとするものである。

第 6 回、第 7 回と 2 回にわたって自動車業界と建設・不動産業界との比較をしているわけだが、前回の第 6 回では建設業界に焦点を当てて自動車業界との比較を行った。そこで今回は不動産業界に焦点を当てて自動車業界との比較を行うこととしたい。

前回のおさらいになるが、不動産業界を俯瞰すると、まずディベロッパー等の不動産の開発・分譲を行う業者が存在するほか、不動産斡旋業者、不動産賃貸業者、不動産管理業者といったストックされている不動産を用いて事業を行う業者が多数存在している。そして取り扱われる不動産はマンション・建売住宅や再開発対象の市街地、ショッピングセンター、複合施設など多岐にわたっている。

また、不動産業界はバブル崩壊によるダメージをダイレクトに受けた業界であり、地価動向を見ても 04年の公示価格はバブル時のピークに比べて住宅地 43.2 %、商業地 67.6 %となっている。

このような地価低下は不動産業界へのマイナスの影響が大きいものの、反面資産の値ごろ感から新規需要につながる面もあり、資産の利用価値、収益重視の経営にはプラスの側面が大きいともいえる。

一般的に住宅と自動車は消費者にとって人生で一番目に高い買い物と二番目に高い買い物であると言われている。ではそれらを提供する不動産業界と自動車業界との類似点、相違点にはどのようなものがあるだろうか。

【業界特性の類似点・相違点】

まず自動車業界と比較した場合の不動産業界の類似点としてはどちらも消費者の価値観、ライフスタイルと密接に関係した商品を提供しているということが挙げられる。

そのため両業界とも消費者の価値観、ライフスタイルの変化に合わせ、商品、課金体系を変化させていく必要がある。

例えば、従来までの消費者の価値観、ライフスタイルというといつかは一国一城の主であり、いつかはクラウンであったわけだが、そのような価値観、ライフスタイルは近年になって変化かつ多様化してきている。

画一的、段階的に皆で向上していくというものではなく、自分らしい生活を送りたいというニーズが高まっている。

不動産業界の場合、そのニーズに対応した商品の最たるものがコーポラティブ方式であろう。

コーポラティブ方式とは「自ら居住するための住宅を建築しようとするものが、組合を結成し、共同して事業計画を定め、土地の取得・建物の設計・工事発注・その他の業務を行い、住宅を取得し管理していく方式」である。この場合、ディベロッパーは介在せず、入居者が主体となって進めていくことになる。

また課金体系としては注目されるのが三井住友銀行が開発し、他社も追随を始めている三大疾病保障付住宅ローンである。

これはローンを借りた人がガン、脳卒中、急性心筋梗塞のいずれかの病と診断された時に、住宅ローンの残債の全額を「診断給付金」で保障するというものであり、単にハードとしての住宅を売るという発想ではなく、ライフスタイルを形作る、という発想に基づいているものといえるだろう。

また、ライフスタイルという観点からいうと我々はライフステージにおいて不動産の購入と賃貸を使い分けるのが普通であるわけだが、自動車の場合は購入するか、購入しないかに限られている。

もちろん、購入する場合には新車、中古車という選択肢があるが、今後、ライフスタイルの変化次第では個人リースやカーシェアリングなど新たな車との付き合い方が普及してくる可能性もあるだろう。

そして、どちらも高額な商品であるという類似点が存在することにより、両業界ともに消費者の購入機会をつかむ仕組みを構築することが重要なテーマとなる。

上記に関し不動産業界で取り組まれている事例を紹介してみたいと思う。

積水ハウス・積和不動産グループは系列不動産会社の賃貸住宅に入居する人を対象に会員組織「MAST クラブ」を立ち上げている。会費は無料であり会員は毎月支払った家賃に応じて 1000 円につき 1 ポイントを取得することができる。

取得したポイントは、(1) 積和不動産グループ内での住替え後の家賃に、(2) 積和不動産グループでの仲介物件購入時に、(3) 積水ハウスでの住宅購入時に使うことができる。
これは住宅を購入する潜在的な顧客を囲い込むための仕組みであるといえるだろう。

自動車業界においては代替の機会を捉えるという意味で、ディーラーにおけるサービス入庫の促進を図っているが、個人リースやオートシェアリングが活発になり、新たな車との付き合い方が定着したような時代においては、上記で紹介したような賃貸から購入への機会を捉える仕組みも有効になるものと思われる。

そして、このような購買機会をつかむという意味も含めて、アフターセールスの重要性が高まってきているというのも両業界共通である。

不動産業界でアフターセールスというと不動産の管理にあたるプロパティ・アセットマネジメントが該当し、近年、重要視されてきている。

これには二つの理由が存在する。一つは不動産は使用年数が長いため、ビル管理であれば IT、アメニティといったソフト面でのリニューアル、マンション管理であれば建物・設備の保守・修繕・清掃といった要素が、その不動産の資産価値を左右するようになってきているからである。

またもう一つの理由は収益性の高さである。不動産の新規供給件数が減少している現在においては、特にプロパティ・アセットマネジメントによる収益が重要なものとなる。

自動車業界においては、アフターサービスの重要性、収益性の高さは従来より認識されており、メーカーレベルで取り組まれてきたが、今後は消費者の購入機会をつかむという意味でテレマティクスによる囲い込みの効果が期待されている。

逆に、自動車業界と比較した場合の相違点としてはまず内需型産業ということが挙げられるが、これは前回も記述しているので割愛する。

上記以外の相違点としては商品を企画し、製造、もしくは施工し、実際に販売するというサイクル、ビジネスサイクル、の長さの違いが挙げられる。

実際、市街地再開発の代名詞でもある六本木ヒルズなどは完成までに 17年の歳月を要している。そしてその間の資金調達は、具体的なプロジェクトに対応して調達を図る場合が多い。そのため、不動産業界各社は総じて、借り入れ依存度が高く自己資本比率が低い。

2003年度で比較すると自動車メーカーの自己資本比率の平均が 23.4 %であったのに対し、不動産業の場合は 11.0 %という結果となっている。

しかし、不動産業界においては借り入れに依存しない資金調達の形も近年になり出現してきている。それが日本型の不動産投資信託(J ー REIT:Real EstateInvestment Trust)である。これは投資法人を設立して投資家から出資を募り、商業ビルなどに投資し、そこから得られる収益の 90 %を投資家に還元するというものである。

自動車業界においてはこの REIT をディーラーの土地取得時に活用することが有効な手段として検討され始めている。

【自動車業界への示唆】

不動産業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆は、やはり消費者の価値観、ライフスタイルを意識した商品開発、課金体系の重要性ということであろう。

そして消費者の価値観、ライフスタイルに応じた商品を提供していくというのは重要であるが、それ以上に重要であるのは消費者に価値観、ライフスタイルを提案するような商品を提供していくということである。

消費者に価値観、ライフスタイルを提案できている商品はパイオニアとして認知され、数字も自然についてくる。皆でわいわい出かけるスタイルを提案したオデッセイや、環境に優しい生活スタイルを提案したプリウスはその代表例といえるだろう。

また今後の価値観、ライフスタイルの変化次第では、求められる商品のみならず求められる車との付き合い方が変化してくることも大いに考えられる。その場合も、競合他社に先駆けていち早く、新しい車の付き合い方を提案した企業がパイオニアとして認知され、イニシアチブをとっていくことになるだろう。

<山田 将生>

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