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コラム

自動車業界とXX業界 第2回『自動車業界と鉄鋼業界』

自動車業界と××業界を比較し、製品、業界間の関連性や類似点・相違点から自動車業界への示唆を探るこのコラム。弊社副社長の秋山喬とアビームコンサルティング経営戦略事業部シニアコンサルタント山田将生の共同執筆です。

第 2 回の今回は、「自動車業界と鉄鋼業界」です。

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【はじめに】
第 2 回目となったこのコラムだが、趣旨を説明すると、自動車業界と他業界とを比較し、製品、業界間の関連性や製品特性、業界構造、CSF (CriticalSuccess Factor=重要成功要因) 等に関する類似点・相違点を把握。最終的には他業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆を導き出そうとするものである。

コラム自体の構成もそれに基づいたものとなっているが、製品特性、業界構造、CSF に関してはセットで類似点・相違点を把握する。というのも、まず、どんな企業でも業界でも顧客が価値を感じ、料金を支払う製品、サービスが最初にあり、その特性が業界構造を形作る大きな主要因になるという考え方がベースにある。そしてそれらがひいては業界の CSF を決めることとなる。

第 2 回の今回は鉄鋼業界との比較であり、製品としては厚板や薄板、コイル、鋼管等が該当する。

【製品、業界間の関連性】
今更言うまでもなく、鉄は自動車の最大の原材料であり、業界間の関連性も深く、鉄鋼業界は自動車業界の川上に当たる。

新日本製鉄、JFE スチールといった各鉄鋼メーカーは商社経由などで自動車メーカー、自動車部品メーカーへ鋼板、コイル等を納入しており、自動車メーカー、自動車部品メーカーで更に加工が施されたのち、自動車を構成する部品となる。

そのような製品上の結びつきの強さゆえに、これまで納入価格の面等で安定的な関係を保っていた両業界であったが、1999年の日産による調達コスト削減、いわゆるゴーンショックにより、鋼材価格は大きく下がることとなった。

そういった事態に対応する形で、NKK と川崎製鉄が合併して JFE スチールが誕生し、海外鉄鋼メーカーとの提携も進んだりと業界再編が進展したわけだが、これは川下である自動車業界の再編や国際展開が川上である鉄鋼業界の再編を引き起こす一つの要因になったといえるだろう。

しかし、それはあくまできっかけに過ぎず、鉄鋼業界ではそれまで内需の低迷や過剰設備が業界全体の課題となっており、過当競争に陥っていたのも事実である。

その後、業界全体で過剰設備の廃棄が進んだ上に中国の需要が急拡大したこともあって、鉄鋼業界は価格交渉力を取り戻し 2003年以降、自動車業界に対し3 回にわたる値上げに成功している。

現在、自動車業界においては、軽量化といった機能向上の目的から、鉄から他素材への置き換えの動きも進んでいるものの、その一方で高張力鋼板、電磁鋼板など鉄の高機能化も進んでおり、今後も密な業界関係が続くことになるだろう。

【製品特性、業界構造、CSFの類似点・相違点】
ここでは製品特性を製品の生産過程と、生産後に分けて考え、それが業界構造や CSF にどう関連しているのかを考察してみることとする。

<生産過程>
鉄鋼の生産にあたっては鉄鉱石を還元、溶解して銑鉄を作るための「高炉」、銑鉄の中の炭素の含有を減らし強靭な鋼を作るための「電炉」・「転炉」、半製品である鋼塊、鋼片を押し伸ばして鉄鋼製品を作るための「圧延機」等、大規模な生産設備が必要とされる。

その意味で自動車業界以上に装置産業であり、操業率を保ち、いかに規模の経済を享受するかということが業界での重要な要素であった。

特に、高炉は一度火入れを行なうと昼夜なく稼動させ操業を継続しないと効率が悪くなるため、生産の柔軟性は極めて確保しにくいといえる。

そのため鉄鋼業界では設備投資の判断が非常に重要な意味を持ってくる。過去の過剰設備、過剰供給の苦い経験もあり、需要が旺盛な現在にあっても、各鉄鋼メーカーは設備投資には慎重である。これまでの CSF はいかに規模の経済を享受していくかであったが、現在は需要を読みながらいかに供給をバランスさせていくかが CSF であるといえるだろう。

日系鉄鋼メーカーは現在、国内で生産した分を内需と輸出に振り分けている状態であるが、今後中国を始めとする海外需要が急拡大した場合は新たな供給拡大策を考える必要に迫られることになる。

現地での供給体制を構築していく必要があるものの、企業単体で拠点設立を考えるには前述したように設備投資負担が重く、リスクも高いため、グローバルな観点から海外メーカーとの提携や、相互補完体制の構築が今後更に進展していくと思われる。

その意味で、現在は自動車メーカーといったユーザー企業のグローバル化に牽引される形で、鉄鋼メーカーを始めとする素材業界企業のグローバル化が進みつつある状態といえるだろう。

<生産後>
まず、鉄鋼は基本的に事業者向けの製品であり、自動車は最終消費者向けの製品であるという大きな違いが存在する。そのため鉄鋼メーカーの場合は自動車業界のみならず建設業界、造船業界等様々な業界が顧客となる。

規模の経済性確保の観点もあって、製品ラインアップはそれぞれの顧客別にカスタマイズした製品というより最大公約数を取った形の鋼材ということになる。そのため、重要な要素となる需要予測にしても特定業界、特定顧客の需要というよりむしろマクロ的、かつグローバルな観点から鉄鋼需要を予測することが求められる。

そして各鉄鋼メーカーが同様の考え方になると、どうしても横並びの状態に陥りやすく、実際過去にメーカー間での製品ラインアップという面ではそれほど差異が少なかったのも事実である。また、そのような差別化が難しい状態だとコスト競争力のみが競争の焦点となってしまい、ひいては値下げ競争に陥ることになってしまう。

しかし、逆にいうと、そういった業界内での差異の少なさは業界再編がスムーズに進んだ一つの要因にもなっているのではないかと思われる。自動車業界の場合はダイムラークライスラーの合併等、業界再編の効果が疑問視されている向きがあるが、各自動車メーカーごとの差異が鉄鋼業界に比べると大きいこととも無関係ではないものと考えられる。

業界再編の効果という観点からすると、鉄鋼業界の場合、川上が原料業界、川下が自動車業界他と、共に事業者であるため、業界再編の効果が川上、川下双方に対して交渉力の強化という形で表れたが、自動車は最終消費者向けの製品ということで川下に対して交渉力を行使しづらく業界再編のメリットを鉄鋼業界ほどに享受できないという面も存在する。

一方、これまでコストが主な競争の焦点となっていた日本の鉄鋼業界では、近年、製品の高機能化が主要なテーマになりつつある。今後、中国の鉄鋼メーカー等がコスト競争力を高めていく中で、その領域でまともに競争するのでは分が悪いという考えに基づくものと思われる。自動車業界等最終消費者向けの業界では当たり前のように考えられている、顧客に対する高付加価値提供の方向に向かっているといえるだろう。

【自動車業界への示唆】
これまでの考察から自動車業界への示唆としてはどのようなものが得られるであろうか。

まず、最初にはマクロ、且つグローバルな観点から需要を読むということの重要性である。特定顧客、マーケットの需要を探ることは勿論必要であり、今後鉄鋼業界には必要とされていくのであろうが、それよりも高い視点から需要を読むということは自動車業界にとっても、今後のグローバルサプライチェーを考える上で必要になるであろう。

もう一つは業界再編についてである。鉄鋼業界の例の通り、一般的に業界再編は供給過剰や設備投資・開発費等の重い固定費負担によって引き起こされることが多い。90年代後半の自動車業界の再編も元々、新車種・新技術関連の開発費負担の増大による生産性の低下が引き金であった。現在は一旦、落ち着いた形となった業界再編だが、今後更なる開発費負担の増大により再び起こる可能性もあるだろう。その際は前回以上に、いかに効果を実際に具現化するかということに関心が払われる必要があるものと思われる。

<山田 将生>

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