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コラム

くるま解体新書『SCM改革の難しさ(1)』

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 6 弾は、アビームコンサルティング戦略ビジネス事業部マネージャーの櫻田敦史が、SCM 改革の難しさについて 4 週に渡って紹介する。今回はその第1回にあたる。

第6弾『SCM改革の難しさ(1)』

(日刊工業新聞 2004年10月13日掲載記事)
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サプライチェーンマネジメント(SCM)は、製品の需要と供給サイドの情報を全プレイヤー間で共有、モノの流れのコントロールが可能なプロセスを確立し、供給コストの最小化と顧客満足度の最大化を導く経営手法だ。これから 4 回にわたって、自動車業界における SCM のあり方を考えていきたい。今回は SCM改革の難しさと課題について分析する。

自動車の生産・販売方式には元来、大きな自己矛盾がある。車種にもよるが基本車型とカラーやオプション装備により数百種類の組み合わせになる。トラックなどの商用車は基本車型で数百種類、最終仕様では販売実績ベースでも数千種類にも及ぶ。

自動車は受注生産であるべき製品だが、以下の二つの理由から見込み生産が不可避なのが現状である。その結果として発生する「実需とのミスマッチ在庫」は経営を圧迫する大きな問題に発展している。

受注生産できない理由のひとつは、生産量の平準化が不可欠である点だ。自動車は設備投資が大きく、また労働集約型産業である。生産の稼働率を高めることが一定の投資回収に必要ながら、肝心の顧客からの受注は平準化していない。

二つ目がサプライチェーン構造の深さ、すそ野の広さ、複雑性に起因するものだ。2 万点におよぶ部品を 1 次サプライヤーだけでも数百社から調達する構造であるため、受注比率が高まると、計画との乖離により、サプライチェーンのどこかで問題をきたす。それが十分に特定できていないと、計画安定型の見込み生産部分を残さざるを得ない。

SCM は量変動と種(仕様)変動のマネジメントといえる。量変動は分かりやすいという性質上、各社うまく対応している。具体的には生産設備の共通化、混流生産化による柔軟な生産体制の構築などが挙げられる。課題となるのは「仕様のマネジメント」だ。

仕様のマネジメントの成功例はパソコンのビルド・ツー・オーダー(BTO)方式。これはモジュール化された設計構造に依存するところが大きい。

ユーザーは 「ハードが何ギガで、メモリーが何メガ 」 と仕様を選択するが、これはモジュールそのものを選択していることになる。顧客選択の需要予測とモジュールごとの需要予測の関係が 1 対 1 であるため、BTO 化は比較的、容易といえよう。

翻って自動車はどうだろう。自動車の設計アーキテクチャーでは、インターフェイス部分の標準化が進んでおらず、例えば、オプションで電動ドアミラーを選択したら、シャシハーネス(電気配線)が変わってしまうということも起きてしまい、部品の需要予測が難しい。各社が取り組む設計共通化は、方向性としては正しいが、コストアップとのトレードオフ問題がその促進を阻害している。

設計共通化は仕様ごとの需要予測難易度と関連付けて対象アイテムを絞り込む必要がある。同様に SCM 改革においては、まず自社のサプライチェーン構造をひもとき、需要変動に対してどこで、どのような問題が発生しているのか、そのメカニズムを明らかにする必要がある。これは全社的な経営課題として取り組むべきである。

<櫻田 淳史>

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