くるま解体新書『バリューチェーンの重要性(2)』

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 5 弾は、アビームコンサルティング製造事業部マネージャーの大河内ケビンが、バリューチェーンの重要性について 5 週に渡って紹介する。今回はその第2 回にあたる。

第5弾『バリューチェーンの重要性(2)』

(日刊工業新聞 2004年09月17日掲載記事)
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同一ブランド製品のリピート購入が発生すれば、それはすなわち顧客ロイヤリティを獲得したことを意味する。顧客ロイヤルティに影響を及ぼす要因は多岐にわたるため、自動車メーカーはリピーター拡大に向けて様々な取組みを行なっている。

品質や信頼性は、顧客に同一ブランド品を購入させる要因となる。顧客の昇進に合わせて「ステップアップ」モデルを提供するメルセデスベンツがその例だ。若年層には A クラスを勧め、経済力がつき家族が増えるに連れ C クラスや E クラスを勧める。価格面での優遇も古くから行なっている。

顧客ロイヤルティで最高の評価を得ている GM は、リピート購入者を惹きつけるために、有利な下取り価格を提示する「ロイヤルティ・インセンティブ」を提供している。ビルド・ツー・オーダー (BTO) 戦略を取る BMW は、欧米で「ビルド・ユア・オウン・ミニ」で効果を上げる。これは購入者にとって自分の好きなデザインを選べるメリットがあるだけでなく、メーカーにとっては、このプレセールスによって在庫リスクを軽減できるのだ。

高ロイヤルティ顧客への注力は、新規顧客を開拓するよりもコストを節約し収益性を高めるが、これは販売機会の拡大のみならず、ロイヤルティ強化にも役立つ。高ロイヤルティ顧客の購入パターンを追跡することで、次の購入がいつ行われるかを予測し、個別に営業活動を展開することで、リピート購入の可能性をさらに高めることができるからである。

しかし品質・耐久性調査でトップに位置するヒュンダイが登場し(J.D. Powerand Associates 社による自動車品質ランキングの新車品質部門でドイツや米国メーカーを追い越した)、米国ではインセンティブ競争が激しくエスカレートしている。フォードは、特定車種で最大 4000 ドルものゼロ利率ローンを提供しているほどだ。

だが、インセンティブの提示だけでは有効な手段と言えない。図の通り 2003年に米国の 1台当たりインセンティブは 3,268 ドルでピークに達した。しかし販売は伸びず、さほどインセンティブをつけない日本メーカー勢にシェアを奪われた。

日本メーカーは、価格インセンティブよりも製品オプションに集中しており、この戦略は有効と言えそうだ。顧客の購入記録から傾向を分析するなど、適正な情報を用いれば顧客ロイヤルティの維持は最少の負担で行うことができる。

そのためには、顧客の情報をリアルタイムに把握できるデータベースとその中に適切な情報が必要だ。またそのデータベースは、即座に対応するサプライチェーンと統合されていなければならない。

前回紹介したアビームの調査でも、この「ネットワーク」を構築している企業は、高収益を達成していることが明らかになっている。メーカーはこれまでも BTO を目指してきたが、まだ改善の余地が残されている。メーカーは適時かつ適正価格で、適正製品を創造する柔軟性を身につけなればならない。

<大河内 ケビン>