くるま解体新書『バリューチェーンの重要性(1)』

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 5 弾は、アビームコンサルティング製造事業部マネージャーの大河内ケビンが、バリューチェーンの重要性について 5 週に渡って紹介する。今回はその第1 回にあたる。

第5弾『バリューチェーンの重要性(1)』

(日刊工業新聞 2004年09月08日掲載記事)
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ここ数年、世界の自動車産業では売上が伸び悩み、生産能力過剰となり、市場の競争も激化している。より低価格な車種を幅広く選択できるようになった顧客にとっては喜ばしいことだが、「インセンティブ戦争」に参戦し、シェア維持のために顧客の興味を引くニューモデルを短期間に次々投入しなければならなくなったメーカーの負担は大きい。

インターネットの発達に伴い、顧客は多数の車種を簡単に比較したり、ディーラーを訪れなくても価格やサービス・オプションを評価できる、事情通へと変化した。

多様化する顧客ニーズに対応することが、OEM の課題となる。プッシュ式の量産が、しだいにプル式のビルド・ツー・オーダー(BTO)戦略に取って代わられつつある。そのためには、適時に個々の注文に対応できる柔軟性が高く無駄のない統合サプライチェーンが必要だ。

多くの OEM は、BTO を進めているが、シェア獲得と収益性改善という問題を解消するためには、それだけでは不十分だと考える。

進化したサプライチェーンを、個人ベースでさまざまな高度な対応を可能にするカスタマー・リレーションシップ・マネジメント (CRM) システムと統合することで、収益性改善の機会が得られる。

これによって OEM は、「ロイヤルティー」の最も高い顧客または「潜在的な高ロイヤルティー」顧客を特定し、その顧客を優先することでコストを削減し、成約の可能性を高めることができる。

高ロイヤルティー顧客に差別対応できる能力を持つ CRM とサプライチェーン・ネットワークを統合した企業は、優れたサプライチェーン・プログラムだけを持つ企業よりも相当に有利であることが判明している。

この差別化された顧客バリューチェーンの重要性に関して、GM のリチャード・ワゴナー最高経営責任者(CEO) はウェブ上の自動車専門誌「ザ・カー・コネクション」で次のように述べている。

「より高度なワン・ツー・ワン・マーケティング能力の開発がここでは根本的課題となる。多くの要素が消費者の製品に対する意見に影響を及ぼすが、例えば専属ローン会社を利用した際に良い経験をすると、同じブランドの製品をリピート購入する可能性が高くなることなどは多くの調査が明らかにしている。また、ディーラーによるオイル交換などのサービスなどは、ディーラーに増収増益の機会を与えるだけではなく、そうした活動を通じて顧客との関係を構築し、より多くの乗用車やトラックの販売につなげる機会となる」。

米国のデータベース会社「アール・エル・ポーク」が、顧客ロイヤルティー分野の最優良自動車メーカーとして、4年連続で GM に賞を授与しているのはこのような取組みを評価しているからだ。

当社が 35 カ国で 850 人以上の製造企業幹部に実施した調査によれば、高度な技術によるサプライチェーンとの統合を通じて、顧客ロイヤルティーを確立しようとする企業は、サプライチェーンは優秀でも顧客ロイヤルティーが凡庸な企業に比較して、収益性が 54 %も高いことが判明したことも付け加えておく。

<大河内 ケビン>