中国で生き残る(4)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 3 弾は、アビームコンサルティングリサーチ担当の土方三千代シニアマネージャーが、中国のアフターマーケットについて 4 週に渡って紹介する。今回はその最終回にあたる。

第3弾『中国で生き残る(4)』

(日刊工業新聞 2004年07月28日掲載記事)
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中国に進出している自動車部品メーカーにとって、新たな収益源となり得るはずのアフターマーケット。それにもかかわらず、参入しない企業は多い。

アフターマーケットに参入計画のない企業にその理由を聞いてみたところ「取り扱い製品はシステム納入向けだから」「供給先自動車メーカーの生産・販売状況から見て需要が少ない」「取り扱い製品は輸出用」などを挙げるところが多かった。

低付加価値製品を製造している企業は人件費などのコストメリットから、輸出目的で中国に生産拠点を移転していることが多い。その場合、アフターマーケットではコスト面で中国製品との競合にさらされるため、消極的にならざるを得ない。一方、供給先自動車メーカーがシェア獲得競争の中、生産・販売体制を強化していると、製品の製造から販売・修理まで一貫したサービスを提供することで、自社ブランドの構築を目指す動きが顕著である。その場合、部品メーカーにとって、アフターマーケットは新たな収益源となり得る。

自動車部品メーカーにとって、中国の自動車市場の拡大や世界貿易機関(WTO)加盟による規制緩和は大きなビジネスチャンスである。しかし、世界の自動車メーカー同士の競争激化に拍車がかかる中、顧客ニーズの多様化への対応、環境、安全対策の強化も求められる厳しい市場である。

シェア拡大に向け、販売価格の引き下げが相次いでいるが、価格面だけでなく、品質面や中国の顧客ニーズに合った製品開発も重要性を増している。

部品メーカーにとって、中国事業で収益基盤を強固にするためには、自動車メーカーに中国市場をターゲットとした付加価値の高い製品を提供することがほかのサプライヤーとの差別化となる。そして、新規顧客を開拓する足掛かりともなり得る。

そのためには、単に国内サプライヤーに技術や生産管理のノウハウを移管して育成するだけでなく、中国市場に熟知した国内サプライヤーを選別・提携し、彼らが持つ中国市場のニーズ情報を積極的に活用することも有用である。またアフターマーケットは、製品開発における顧客情報収集の場である。

自動車業界においては、とかく生産面や業務プロセス面での効率化や改善への取り組みに主眼が置かれるが、顧客ニーズを把握し、市場が求める製品を提供するというモノづくりの原点を忘れてはならない。製品の設計・開発、製造、販売、サービスを通じて、顧客・製品情報のフィードバックを実現するバリューチェーンを構築することが重要になる。

アフターマーケットは収益源の一つであると同時に、顧客情報からニーズを把握し、製品開発や販売力の強化を実現する手段でもある。

<土方 三千代>