中国で生き残る(2)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 3 弾は、アビームコンサルティングリサーチ担当の土方三千代シニアマネージャーが、中国のアフターマーケットについて 4 週に渡って紹介する。今回はその第2回にあたる。

第3弾『中国で生き残る(2)』

(日刊工業新聞 2004年07月14日掲載記事)
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自動車保有台数が目ざましい伸びを見せる中国は、アフターマーケット(自動車補修・市販部品市場)が急成長する可能性も秘めている。アビームコンサルティングと住商アビーム自動車総合研究所はその市場規模について、02年の約 630 億元(約 8000 億円)が 2010年には約 1770 億元(約 2 兆 3000 億円)まで拡大すると予測している。

今年、日系自動車部品メーカーに対して実施したアンケートでは、中国でのアフターマーケットに「参入済み」か「計画中」の企業は 35 % (31 社中 11社) だったが、このうち 72 %が 3年後の同市場の成果について、「かなり期待している」または「どちらかと言えば期待している」と回答。アフターマーケットに対する期待の高さが浮き彫りになっている。

3年後に重要視している流通先について質問したところ「供給先自動車メーカー系ディーラー・販売/補修店」と回答した企業が 91 %と圧倒的に多く、その反面、独立系補修・販売店や修理工場、フランチャイズ系とタイヤ交換系に対する評価の低さが顕著だった。

中国の世界貿易期間(WTO)加盟後、外資の流通・サービス業への参入が許可されシェア獲得競争が激化する中、外資自動車メーカーは中国国内で生産した車を販売する独自の流通網構築を本格化させている。日系自動車メーカーはホンダの「四位一体」型に代表されるような、新車販売・部品販売・補修・情報提供までの一貫したサービスを提供する専売店スタイルのディーラー網構築を強化している。

現在、中国ではライン装着用の OEM (相手先ブランド)部品とアフターマーケット用部品の採算は大差ないといわれている。その中で、部品メーカーがアフターマーケットへ参入しているのは、収益源としてだけでなく、自動車メーカーのブランド戦略に対応し、顧客満足度の向上につなげる相乗効果を期待しているものと考えられる。

アフターマーケットが巨大な市場となる可能性がある一方、補修・サービス産業はまだ成熟産業とは言えない。中国国内には、市販・補修用部品の販売センターの「汽配城」などを構成する無数の独立系部品販売業者やガレージによる流通・サービス網が発達しているが、一般的に事業規模は小さく、また、技術者不足や技術水準の低さなどが度々指摘される。それが独立系補修・販売店や修理工場、フランチャイズ系などに対する評価の低さになっていると考えられる。

だがイエローハットやオートバックスセブンなど大手自動車用品小売業の中国事業への参入も始まっている。横浜ゴムなど部品メーカーの中には、独自の専売網を展開しているところもある。今後、流通先の多様化が進むと思われる。

次回は中国市場で直面している阻害要因について検証したい。

<土方 三千代>