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コラム

価値を生み出す経営とは(4)・売上を増やすにはもっと与…

エンジニアや、普段「数字」にあまり触れる機会の無い方、若しくは「数字」には触れているものの、それらの意味合いについてあまり考える機会の無かった方に、なるべく分かり易く「価値を生み出す」という行為がどのように数字に置き換えられているかという、基本的な考え方を紹介したいと思います。気楽に書きますので、気楽にどうぞ。

第4回: 「売上を増やすには、もっと与えなさい!?
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今回は、「売上を増やすには、もっと与えなさい!?」です。
顧客が期待しているレベルを遥かに超えたモノ・サービスを提供することで、初めて所謂「売上」が計上される、ということを説明したいと思います。

<利潤分配の順番>

突然ですが、企業が得た利潤を分配する順序は?と聞かれたらどう答えますか?

(1)貸借対照表を元に考えた場合

貸借対照表=バランスシートというのを見たことがある人も居るかと思います。これの右側(貸方)を見ると、企業が調達した資金を返済する順番は、負債、即ち貸し手への返済が最初で、資本の部、即ち株主への返済が次というのが分かります(優先、劣後などという言葉を使ったりする)。勿論、厳密には担保権の設定や、劣後債、優先株などの存在などにより、更に細かく規定されています。

(2)損益計算書・P/Lを元に考えた場合

今度はP/Lを思い出してください。
「利潤の分配順序」というと分かりにくいので、「企業が関わる経済活動に伴い、現金の分配はどういう順番で行われるか」という観点で考えてください。
勘定科目を上から単純に読んでいけばいいですね。勘定及び分配は下のような順番になっているのが分かるはずです。

1)売上原価
まず企業がモノなどを仕入れた際に、現金を「仕入先」に分配。
2)販売費
次に、販売に付帯する各種費用を「取引先」に支払います。
例えば、広告宣伝費等。
3)管理費(主に人件費)
次に、給与、賞与などの形で「従業員」に分配します。
4)支払金利
更に、金利の形で、「銀行等」に分配します。
5)法人税等
その後、税金の形で「政府」に分配します。
6)当期利益を元に利益処分→配当
最後に当期利益に基づき利益処分案を策定。
結果、配当という形で「株主」に分配

1)~6)の分配先は、俗にステークホルダーと言われます。

<株主重視思想>
最近流行りの「株主重視思想(株主至上主義)」というのを聞かれたことのある方は多いでしょう。これは、「株主が資金提供者として企業の究極の所有者であり、資金提供が企業の出発点であること」を前提に展開されている主張ですが、実はもう一つ、「株主を重視すべきだ」と主張する理由があります。

どういうことかというと、客も従業員も取引先も銀行も、商品市場、労働市場、金融市場のなかで、それぞれ納得して商品を買ったり、その賃金で雇われたり、金を貸したりしていて、市場取引の結果として、それなりに満足をしている。しかし、上の分配の順番にある通り、株主は他のステークホルダーに分配した後、即ちみんながとった後の、残りかすしかもらえない。

じゃあ、株主がハッピーになるように企業は行動するのがいいよね、というのが株主重視経営です。

もう少しかっこよく言えば、最終的なリターンを受け取る株主を満足させるだけのリターンを確保すれば、結果としてその他の利害関係者(ステークホルダー)をも満足させることになる、ということ。

<それでは、一番最初に分配しないといけないのは?>

企業が最初に利潤を分配するべきステークホルダーとして、

・B/Sで考えれば、負債が最初
・P/Lで考えると、仕入先が最初*
・株主重視主義で考えると、株主が一番最初(と考えることで、全体が最適化される)

という3つを上で述べてきましたが、本当に一番最初に分配するべき相手を忘れていませんでしょうか?

P/Lを元に考えた時、一番上に来る勘定はなんでしょうか?
そう、それは、売上高です。

そして、そのタイミングで利潤を分配すべき相手は「顧客」です。

*ステークホルダー内で、より従業員を重視すべきである、などの考え方が存在するのは事実であるが、今回その細部にまで踏み込むことはしない)。

<売上高の計算方法>

企業にとって利益を上げることは大きな目的ですが、その大前提は売上高です。売上がゼロの会社で黒字というのは基本的には存在しません(勿論、会計上の勘定科目が受取利息や受取手数料などの場合もあるが、ここではこれらも広義に売上と考えてください)。
さて、この売上高というシロモノ。モノを販売したり、サービスを提供したりすることに伴い計上され、通常はモノやサービスの価格を販売数量で乗じたものから値引き金額を差し引いたものとして計算されます。

この計算方法は会計的に当然正しいものの、根源的には違ったではない)。

即ち、あなたの販売しているものはその「モノなりサービスそのもの」ですか?それともその「モノなりサービスの持つ価値」ですか?ということ。

自動車を製造して販売している、所謂自動車メーカーは何を販売しているのか?そう、自動車を販売している、というのが前述の

車両価格x販売数量-値引き額

という通常のコンセプト。

一方、自動車に乗って得られる楽しみ、遠くに速く移動出来る便利さ、こういったものに対してお客さんがお金を払うというのが所謂「価値に対してお金払っている」というコンセプト。
なんだか、第1回~3回で話してきたことに似てますね。

根源的には後者のほうが正しい。
(価値というと、非常に曖昧且つ実態の無いもののように思えるが、モノやサービスを受け取ることを通じて得られる便益や効用というふうに考えてください)。

<なぜ企業は、売上高計上時に、「顧客」に分配しているのか>

では、顧客は販売者から提供してもらった価値と比較して、

1. 得た価値と同等のお金を払う
2. 得た価値より多くのお金を払う
3. 得た価値よりも少ないお金を払う

の内、どの行動を取るでしょうか。

そう、当然人はモノなりサービスに伴う効用を一番安く買えるに越したことはないので、?の「得た価値よりも少ないお金を払う」という行動を合理的に選択すると考えられます。

即ち、自動車製造販売会社の売上高として計上されている金額は、会計的、表面的には

車両価格x販売数量-値引き額

で計算されますが、根源的には、

顧客が得た価値-値引き額*

で計算できます

*(値引き額とは、顧客が「得た価値よりこれだけ安ければ買うな」と感じる金額)

視点を変えて販売者の側から見ると、総売上高が顧客に与えた価値であり、一旦この価値相当額を顧客から受け取った後に、「値引き金額を顧客に還元」した結果、純売上高となります。

即ち、損益計算書で言えば一番上に位置する「売上高」を計上するタイミングで企業は「顧客に対して」利潤を分配している、ということ。

売上高を計上する為には、与えた価値が実際に得られる貨幣換算された「お金の金額」よりも大きくなければならないわけです。

<「売上を増やすには、もっと与えなさい!?」>

ギブアンドテークという言葉がある。
ギブする(与える)価値とテークする(得られる)価値と同等で有る場合成り立つわけだが、商売では正に「与える」ものの価値のほうが「得られる」価値よりも多くなければ売上は計上出来ない。

商売とは戦闘であり戦争である・得るもののほうが与えるものよりも多くないと儲からないと考えがちだが、根源的には売上を増やすには「より多くを顧客に与えよう」とするマインドと行為が先ずは重要なのである。

言い換えれば、第3回で述べた通り「顧客が期待しているレベルを遥かに超えたモノ・サービスを提供することで、初めて所謂「売上」が計上される」、ということになる。

<次回の予告>
第5回、最終回は、「原価って!?」です。

続きはこちら>>

<長谷川 博史>

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