欲しい車を特定したうえでディーラーを訪ね、契約書に押印したら納車まで平均何日待たされる?

◆中古車購入者の実態調査、販売店訪問時には65%が購入希望の車を決定済み

正規販売店で 1年以内に中古車を購入したユーザーを対象に J.D.パワーが調査した結果、回答者の 65 %が販売店を訪問する前に購入したい特定の車を決めていたことが判明。この比率は輸入車正規販売店では 81 %と非常に高くなる。

また78%の人が販売店訪問前に車や販売店、中古車購入に関する知識などについて情報収集を行っていることがわかった。中でもインターネットを利用した人は79%に達している。

<2007年10月01日号掲載記事>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

90年代後半以降、雑誌媒体とインターネットの融合が急激に進んだ結果、ユーザーが自動車購入検討の知識※を身につけ、 IT 技術を活用することで市場に存在する膨大な在庫の中の一台を迅速に検索することが可能になったことから、「車の買い方が変わった」とよく言われる。

※モデルやスペック、価格相場などに関する知識

実際、今回取り上げたコラムによると来店客の 65 %が事前に欲しい車を決めてくるという。更に、79 %がインターネットを利用しているという。

つまり多くの来店客は、来店した時点で以下のような様々なステップを踏んでいると想像される。

1.ネットや、走っている車などから、欲しい車を特定
2.ネットで当該車のスペックやインプレッションなどを読み、スペック、色などを特定
3.予算を検討し、その範囲内で収まりそうかをネットで検索
4.場合によっては年式や距離で価格を調整
5.なるべく自宅に近い場所で在庫が掲載されていないか、ネットで検索
6.在庫掲載が確認できた時点で、ネットで電話番号を調べ、地図をプリントアウトして次の週末に来店

【来店そのものを増やすことの難しさ】

来店時には欲しい車が決まっているならば、来店そのものを増やすには、ユーザーが欲する車を揃えておけば良いということになる。

つまり論理的に考えて、事業者として来店客数そのものを増やそうとした場合、

1.在庫量を増やす
2.売れ筋最適在庫のみを常に揃える
3.車種・モデルを絞ることで XX ならあそこの販売店という認知を狙う

といった策が考えられる。

しかし 1.~ 3.のそれぞれにおいては以下のような限界が考えられる。

1.必要資金額が膨大になること、並びに物理的な在庫置き場の広さの限界
2.売れ筋を常に特定する目利き能力。但し、殆どのディーラーでは既に経験則に基づきこれを実施しているはずである。
3.これはひとつの策ではあるが、メーカーのブランドを掲げている以上車種は限定的になることから、大きく販売台数そのものを増加させる結果に繋がりにくいこと、及び結果的には上記 2.と同様の目利きが重要になってくる。

よって、より地道な方策としてサービス入庫を重視しつつ「サービス実施時に既納客への乗り換え提案を行う」といった地道な施策が大切になる。

日本における自動車需要の 9 割以上が代替需要であることから、今までお付き合いしていたお客様への提案力の向上が大切であるという考え方である。

【来店客=買いたい人】

上記「来店時には欲しい車が決まっている」ということを更に踏み込んで考えると、来店客の 65 %(輸入車では 81 %)は「既に買いたい」という意思を持っている人であるということである。

筆者の懇意にしているディーラー経営者の口癖は「来店してくださった方に、如何にその場でご決断戴くか、これが勝負です。来店時の成約率というのは、実は新車・中古車販売を見る上で非常に大切な KPI なのです」というものだが、上記地道な来店数増加施策に加えた来店時の対応として、どうやらこれは正しい。

人間は買いたいものが決まっていても、最後まで迷うことはいろいろある。

車庫に入るか、今後の家族構成に合っているか、余暇の過ごし方とのマッチングや、予算、他で買ったほうが安いのではないか、あと一回家に帰って考えたほうがいいのではないか?などなど。

こうした悩みをお客様と一緒になって如何にその場で解決してあげるかが、店舗単位で見た販売促進の大切な方法である。

【買ったら直ぐに使いたい、が実現していないことの問題】

仮に、来店客の上記悩みを解決することがその場で出来たとすれば、お客様からすれば、既に来店前に上記膨大なステップ、及び来店後にも膨大なステップを経ていることから、相当買いたい気持ちが盛り上がっているはずである。

しかし実際には各種書類の手続きなどが必要なため、営業員からは「そうすると、納車はX日後になりますね」と伝えられることになる。

この「買ったら直ぐに使いたい」が実現していないことによる影響に関しては以下  にある拙著を参考願いたい。

『欲しい車を特定したうえでディーラーを訪ね、契約書に押印したら納車まで平均何日待たされる?』

【受注から納車までの平均期間は28日】

ちなみに、一般的に受注を獲得してから納車に至るまでの期間が日本でどの程度かご存知だろうか?これは日産自動車の新車のケースであるが、全国平均は28日とのことだ※。

※因みに同社はここに「日産生産方式」をベースにした販売会社業務改善活動を福岡県内の 3 社 90 拠点で取り組んだ結果、21日に短縮することに成功したとのこと。(出典:日刊自動車新聞’07.10.3.)

この改善活動は、一義的には事業者の営業担当者の残業などを如何に削減するかという視点で取り組まれたものであるが、上記ユーザーの視点から見れば「買いたい」という意思表示をして契約書に押印してから実際に車に乗れるようになるまで 1 ヶ月近い時間が掛かっている、ということになる。

昨今の日本では自動車を嗜好品として買い求めステータスシンボルとして使用するという風潮は薄れコモディティ化しつつあると言われる。

コモディティ化する商品には、コモディティ並の買い易さを提供することが大切にもかかわらず、これを出来ていないのが日本の現実ではないだろうか。

【ボトルネックは車庫証明】

上記日産のケースのように、各種領域(オプション取り付け工程や顧客とのスケジュール管理など)での努力をし続け、仮に顧客が必要な書類(例えば、実印、印鑑証明、銀行印若しくは現金など)を全て揃えて来店したとしても、車庫証明書の取得プロセスだけは、短縮する術が無い。

車庫証明の申請には車体番号の記入が必要であるし、正確な寸法も求められる。これらを含めた情報を書面に落とし、警察署において申請してから承認されるまで、一般的には 1 週間から 10日掛かると言われている。

【自動車産業としての働きかけの方向性】

自動車産業として、道路特定財源の一般財源化への反対など、事業者としてのロジックは正しいものの一部納税者からの理解を得るのが短期的には難しい提言に加えて、例えばこうした「車庫証明~承認までの期間を短縮する IT インフラ導入」といった改革の提言なども行ってはどうだろうか?

これは、ディーラー店頭における既存顧客へのサービス入庫促進呼びかけと同様に「地味な働きかけ」ではあるものの、例えば受注~納車までの期間が半月短縮されたとすれば、会計上の期間損益でも大きなメリットが期待できる。(単純計算で、1/12 ヶ月÷2=1/24、つまり売上で 年間 4 %の効果が期待できる)。

もちろんこうした事業者側の効果は付帯的なものであり、そもそもの主目的は既に購入したい車が決まっているユーザーが来店した後に、迅速に当該車両が提供する価値を消費出来るようにすることで、顧客の利便性・得られる価値総額を増加させることにあることを忘れてはならない。

<長谷川 博史>