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コラム

アイドリングストップ機構はハイブリッドの一種か?

◆マツダ、新型「アクセラ」の予約受注を開始すると発表。
166 万~ 267.8 万円。

6月 11日発売予定。北米市場では、既に 1月から販売を開始している。アクセラは、同社の年間販売台数の 3分の 1 を占める主力車。2000cc の 2WD 車には、直噴エンジン「DISI」とアイドリングストップ機能「i-stop」を搭載する。

<2009年 05月 14日号掲載記事>

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【はじめに】

ハイブリッド車が国内市場を賑わせている昨今、欧州市場で採用が急拡大しているのが、アイドリングストップ機構である。ほとんどの欧州乗用車メーカーが発売(もしくは発表)しており、欧州市場に参入する国内メーカーも対応を進めている。今回マツダが発表した「i-stop」を搭載したアクセラも、日本と同時に欧州でも販売が予定されているという。

欧州市場では、2012年以降段階的に CO2 排出量の平均値を 130g/km まで低減することを求められており、その対応に欠かせないアイテムとして各自動車メーカーの注目が高まっている。

今回は、このアイドリングストップ機構の位置づけについて考えてみたい。

【アイドリングストップ機構がもたらす効果】

欧州主要 5 カ国で新車販売される乗用車の CO2 排出量は、2008年時点で平均 154g/km と言われている。欧州市場の燃費規制では、2012年時点で総販売台数の 65 %の平均値を 130g/km に低減すること、2015年時点では全総販売台数の平均値を 130g/km に低減することが求められている。つまり、あと数年で 2 割弱の燃費改善を全モデルに適用させることが要求されているのである。

自動車工業会によれば、国内ガソリン乗用車の平均燃費は年々向上しており、2006年時点で 16.0km/L となっているが、2 割弱向上するのに 9年近くかかっている。つまり、国内市場で過去 9年間で達成したレベルの燃費改善をあと 3年(100 %であれば、あと 6年)で求められている、ということになる。しかも、対象は総販売台数となっている。全体での底上げが求められており、2、3割燃費性能に優れるハイブリッド車も一部販売するというだけではクリアできない可能性が高い。

そこで、欧州を中心に各自動車メーカーが開発・導入を進めているのが、アイドリングストップ機構である。ハイブリッドシステムに比べてシンプルでコストも安く、汎用性が高いのが強みである。同技術による燃費向上は各社によって異なるが、概ね 10 %前後を謳うメーカーが多い。

仮に、全ガソリンエンジン車・ディーゼルエンジン車にアイドリングストップ機構を搭載すれば、それだけで総販売台数の平均燃費を 10 %前後改善することが可能になるかもしれない。実際、2012年までに欧州市場で販売される乗用車の半分以上に同機構が搭載されると予想しているメーカーもある。

こうした汎用性の高い技術は急速に拡大する可能性を秘めており、総販売台数の燃費改善への貢献という観点では、アイドリングストップ機構はハイブリッド車以上の存在になるのではないかと考える。

【アイドリングストップ機構はハイブリッドの一種か?】

ところで、ハイブリッド車もアイドリングストップするという意味では、アイドリングストップ機構もハイブリッドシステムの一部であり、一つの機能と思われるかもしれない。このあたりを少し整理したい。

一口にハイブリッド車といっても、そのシステムは一律のものではなく、各社各様であり、その多様化は年々進んでいる。そもそも、ハイブリッド自体、複数の動力源を持つクルマであることが定義であり、ガソリンエンジン(もしくはディーゼルエンジン)だけで走行する既存のクルマと、モーターだけで走行する電気自動車の中間に位置する全ての車両が「ハイブリッド」ということになる。

それぞれのハイブリッドシステムによって特徴がある。プリウスが採用するストロングハイブリッド機構は、モーターだけでの走行もできるため、燃費性能は高い。これに対し、インサイトが採用するマイルドハイブリッド機構は、シンプルな構造でそこそこの燃費改善が見込め、乗り味も既存のガソリン車と違和感が少ない。プリウス以上に電気自動車に近いシステムであるシリーズハイブリッドやプラグインハイブリッドと呼ばれる機構も開発が進められているし、インサイト以上にガソリン車に近いシンプルな機構の採用も進められている。

このガソリン車に近いシンプルな機構の一つが、アイドリングストップ機構である。そのほとんどが、スターター機能を兼ねたオルタネーターと、ガソリン車よりも強化したバッテリを搭載し、自動でアイドリングストップを実現するものである。いくつかのメーカーは、これに回生機構(減速時等にエネルギーを回生してバッテリに蓄電する機能)を搭載している。実際、メルセデスベンツはスマートにこの機構を搭載しているが、同社はこの機構をマイクロハイブリッドと呼んでいる。

つまり、アイドリングストップ機構は、通常のガソリン車に新たな機能を追加したものであると同時に、ハイブリッドシステムを簡易にしたもの、もしくはハイブリッドシステムの一種とも捉えられる。

現実的には、おそらく自動車メーカー各社の考え方・事情によって、アイドリングストップ機構をハイブリッド車の一種と認めるか、認めないかは大きく異なると思う。仮に、ハイブリッド車の一種と考えるとすれば、世間が認識している以上にハイブリッド車は普及しているのかもしれない。

【ハイブリッドブームの中で】

昨今の国内市場は、空前のハイブリッドブームである。市場全体は厳しい状況であるものの、ホンダの二代目インサイトが登録車の月間販売台数でハイブリッド車初のトップの座を射止め、満を持して発売となったトヨタの三代目プリウスは発売前に 8 万台もの予約を獲得した。現在では予約は 10 万台に達する勢いという。販売現場では、「ハイブリッドでなければ売れない(?)」といった声も聞こえてくるぐらいである。

今般導入されたエコカー減税もハイブリッド人気に拍車をかけていると思われる。今回の制度では、ハイブリッド車であれば、実際の燃費性能に関係なく、自動車取得税や重量税が 100 %免除されるという内容になっている。これまで1.5 万円程度だった税金面での優遇が、某ハイブリッド高級車では最大 70 万円程度にまで税額が軽減されるものになっているという。ハイブリッド車にとって有利な制度であることは間違いないだろう。

こうしたハイブリッドブームの恩恵を享受できているメーカーとそうでないメーカーがいる。勿論、そうでないメーカーの中には、ハイブリッド車の開発を進めており、巻き返しを狙っているメーカーもあるだろう。

現実問題として、ハイブリッドシステム自体の開発が活発化し、多様化が進んでいること、そして、より簡易なハイブリッドシステムと位置づけられるかもしれないこうした機構も普及し始めていることなどを考慮すれば、近い将来、「このクルマはハイブリッドかどうか?」ということを議論すること自体無意味になる可能性もある。

昨今の報道を目にしていると「ハイブリッド車=環境性能に優れる」というイメージがあまりにも先行している印象を受けるが、ハイブリッド車ではないクルマも、先入観を持たずに正しく環境性能を評価されるべきであると考える。でなければ、地道に燃費性能を向上させる汎用性の高い環境技術開発への取り組みが持続性を失いかねないのではないかと懸念する。

<本條 聡>

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