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コラム

政策が環境対応車に与える影響

◆ホンダ、2010年代前半に電気自動車 (EV) を米国市場に投入へ

小型の車体にモーターとバッテリーを搭載した EV の開発を本田技術研究所でスタート。今秋に開催される東京モーターショーに試作車を出展する模様。将来的には日本国内での販売も検討する。

<2009年 08月 23日号掲載記事>

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【国内大手 3 メーカーが出揃う EV 計画】

これまで電気自動車(EV)に関しては静観してきたホンダも、EV を市場投入する計画が明らかになった。既に EV への注力を明確に示している日産、ハイブリッド車(HEV)に軸足は置きながらも EV の投入計画も発表しているトヨタも加え、今回ホンダが計画を明らかにしたことで、国内大手 3 メーカーが全てEV を投入することになる。

既に国内自動車市場に一大ブームを巻き起こしている HEV と比較すると、価格も高く、航続距離も短い EV に対しては否定的な見方もあり、普及がなかなか進まないのではないか、という意見も少なくなかった。

しかしながら、先月の三菱自工、富士重工の EV 発売開始に加え、今月初めには日産が来年から量産を予定している EV 専用車を発表したことで、EV への注目は着実に高まっている。環境対応車としては、HEV に注力し、市場をリードしてきたトヨタ、ホンダも、EV を無視できなくなってきているのかもしれない。だが、それだけではないだろう。

今回は、国内自動車メーカーが EV に取り組む背景について考えてみたい。

【EV が抱える課題とその対応】

EV の普及に時間がかかるといわれる理由についてであるが、価格、航続距離、充電インフラの 3 つが理由として挙げられることが多い。すぐに解決することは難しいかもしれないが、解決が不可能な問題ではないだろう。

まず、価格である。三菱自工、富士重工が先月発売した EV であるが、ともに既存の軽自動車をベースにした車両で、標準価格は 450 万円強である。その最大のコスト要因が、エネルギー源として搭載する二次電池である。

前回のコラム(以下参照)でも述べたが、自動車用に搭載すべく各社が開発しているリチウムイオン電池(LIB)は、まだまだ高価であり、上記 2 社の EVにおいても、全体の半分以上のコストを占めていると言われている。

『EV がもたらす業界構造の変化の可能性』

ただ、技術的にかなり成熟している他の自動車部品と異なり、まだ立ち上がったばかりの市場であり、今後普及が進むにつれて、コストダウンが進むとも言われている。昨今の経済不況の中で、HEV や EV などの環境対応車に対する導入支援策を打ち出している国も少なくない。こうした政府の助成制度を利用しながら、普及が進む中で、コストダウンも進むのではないかと考える。

次に、航続距離である。三菱自工の EV は 160km、富士重工の EV は 80km と公表されている。勿論、LIB の技術進化が進めば航続距離も伸びる可能性はある。しかし、既存のガソリン車や HEV に比べると圧倒的に短いのは事実であり、これが簡単に覆ることもないだろう。

ただ、1 回あたりの走行距離という観点では、かなりの割合のユーザーが、この航続距離で十分な範囲でしか利用していないことも事実である。あらゆるユーザーのニーズをカバーすることは難しいだろうが、自動車市場全体の中で、一定レベルのシェアを得ることができるのではないだろうか。

そして、充電インフラである。HEV は既存のガソリン車同様、ガソリンスタンドというエネルギー供給インフラが整っているのに対し、EV は、どこでも充電できる環境が整っているわけではない。夜間、自宅やオフィスで充電する環境という観点でも、外出先で充電する急速充電設備という観点でも、普及に向けて整備が必要不可欠であり、その設備自体のコストダウンも必要であろう。

ただ、電力インフラという観点では、既に多くの市場で利用環境が整っており、EV に充電する出口の部分の整備だけの問題である。今後の政府、自治体の導入支援次第では、今後整備が加速する可能性もある。

いずれにしても、世の中の全てのクルマを EV にするにはなかなか困難な課題かもしれないが、一定以上の割合の普及を進める上で解決不可能な問題ではないだろう。少なくても、普及するための下地作りは着実に進められていると考えている。

【政策が環境対応車に与える影響】

特に、今後 EV の普及のスピードに最も影響を与える可能性が高いのが、各国政府、自治体の施策である。温暖化ガスの排出削減に向けた規制強化の動きと、経済再建への対策という視点での環境対応車の普及支援の動きの両面で、EVには追い風が吹いている。

特に、日系自動車メーカーにとって大きな収益源であった米国市場が変わりつつある。米国政府が EV 生産にあたっての低利融資や、カリフォルニア州に代表される環境規制の強化を進めており、新生 GM も環境対応車の市場投入を準備中である。HEV では日系メーカーに先行を許している米系メーカーも、政府の支援を受けて、HEV や EV の開発を加速させることが予想される。航続距離の観点から EV は不向きという意見もあった米国市場であるが、都市部の通勤用というニーズだけでも一定レベルの普及が期待できる可能性があり、政府や自治体の施策次第では、日本や欧州以上に早く普及する可能性もある。これまで、HEV に軸足を置いてきたトヨタ、ホンダが EV に対して参入方針を明らかにしてきたのも、こうした米国市場の動きを考慮してのことではないだろうか。

現在の厳しい経済環境下、世界各国で自国の経済再建の観点から自動車産業を支援する策が検討されている。同時に、ポスト京都議定書の調整が進められる中、温暖化ガス削減のための具体的な施策の検討も進められている。それぞれの政府・自治体の施策次第では、急速に展開が進む可能性もある。

これは EV に限った話ではない。環境対応車として、クリーンディーゼル車の普及を推進する市場もあれば、フレックスフューエル車を推進する市場もある。この地域は●●だ、あれはインフラがないから無理だ、と現時点の情報で決めつけるべきではなく、あらゆる可能性を考える必要があるだろう。いずれにしても、環境対応技術の重要性や有効性が高まっていることは間違いなく、自動車業界が再び勢いを取り戻す時に優位に立つためには、広い視野と柔軟性を持って対応していくことが必要となるだろう。

<本條 聡>

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