中国フラッシュニュース(28)『中国トラック業界の光と影』

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

第28回『中国トラック業界の光と影』
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春節(旧正月)前、国家発展改革委員会は、大手自動車メーカーを含む数社のトラックメーカーを名指しで強く批判し、これらのメーカーが生産する 177タイプのトラックを「車両生産企業および製品告示」から削除した。批判の対象が、国の自動車政策にある程度影響力を持つ大手自動車メーカーにまで及ぶことは稀であり、政府(行政部門)と自動車メーカーの間のせめぎ合いが激しさを増しているものとも言える。

2004年、ほとんどの自動車メーカーが目標未達に苦しむ中、トラックの販売台数は、全体で前年比 23.2 %増と乗用車を上回る成長を記録しており、中でも大型トラックは前年比 40 %増と最も成長率が高いセグメントであった。この恩恵を受け、トラックを生産する各社は、我が世の春を謳歌するように業績を伸ばした。

しかし、この大型トラックの販売台数増加の要因は、単なる経済成長だけではない。この背後には、「違法登録」問題に関する、トラックメーカー各社と行政部門との間の長年に渡せめぎ合いがあるというのが通説である。

過去中国では、輸送業者が最大積載量を「過小申告」する手法が横行していた。例えば、「10 トン積載」トラックであるのに、「8 トン積載」として登録する。これによって、輸送業者は、高速料金、税金等諸費用を節約することが可能であった。

これを見かねた行政部門は、2004年、交通公安部門と連携し、「過積載」トラックの取り締まりを強化した。これにより、これまで「過小申告」を横行してきた輸送業者は、従来通りの輸送力を確保するために、大型トラックに買い替えざるを得なくなるケースが多発し、昨年の大型トラック販売台数増加に繋がったと見られている。

こうして「過小申告」が影を潜めつつある中で、新たに「過大申告」という手法を取る輸送業者も出てきた。例えば、「10 トン積載」トラックであるのに、「12 トン積載」として登録する。最大積載量が 10 トンであっても、能力的には 12 トン分の貨物を積載可能であるため、車体価格の安い「10 トン積載」トラックを購入し、12 トン分の仕事をさせる。車体購入費用を節約することが可能となる。

ここで、大きな問題となっているのは、輸送業者の「過小申告」「過大申告」といった行為に、これまで多くのトラックメーカーが加担してきたと言われていることである。これらのトラックメーカーは、自社の販売台数を伸ばすために、輸送業者の「違法登録」を裏側で支援してきたとされている。

行政部門も多発する苦情・批判に耐えられず、この「違法登録」問題を解決するために、重い腰を上げ、トラックメーカーに対しても本格的な取り締まりに乗り出したというのが、今回の冒頭のニュースである。

トラックメーカーとしても、「既得利益」を簡単には捨てられず、これまでも様々な対抗策を繰り出してきた。行政部門と自動車メーカーのせめぎ合いは、当面終わりそうにない。

<張 浩群>