中国フラッシュニュース(45)『VOLVOの中国現地生産と長安汽車の野望』 

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第45回『VOLVOの中国現地生産と長安汽車の野望』

今年 4月に開催された上海モーターショーにおいて、VOLVO (乗用車)のハンス会長は、年末までに VOLVO 社の(中国)国産化計画を発表できると言明した。そして 6月、VOLVO 社の上層部と Ford 社の担当者が重慶を訪れた。

VOLVO は 1994年に中国進出を開始した。現在約 40 都市に代表事務所もしくはディーラーを構えており、2004年には約 3 千台を輸入販売している。

VOLVO の国産化誘致を巡り、南京、重慶、深センの三都市が激しい競争を繰り広げていた。一時、深センが有力と伝えられていたが、ここに来て、重慶(長安 Ford の工場)がほぼ「当確」になったといわれている。

VOLVO の誘致は、長安汽車の尹(イン)会長の悲願であった。中国自動車業界一の戦略家といわれる尹会長は、着々と「フルライン戦略」を進めてきた。まず、1984年にスズキから微型車(軽自動車)を導入し、長安汽車を中国における最大手の微型車メーカーに押し上げた。そして、2001年から Ford と合弁会社を設立し、中級セダン車の Mondeo の生産を始めている。更に、2004年に長安汽車が江鈴汽車を傘下に納め、SUV 車も手に入れた。

長安汽車は、乗用車のフルラインナップを構築し、上位三社(第一汽車、上海汽車、東風汽車)を追撃するために、現在欠けている 40 万元以上の「高級車」を手中に入れなければならないと考えている。長安汽車が VOLVO と提携を進める理由がここにある。VOLVO の国産化計画は、長安汽車が渇望していたものであり、同社の乗用車戦略の集大成と位置づけられるものであろう。

<張 浩群>