中国フラッシュニュース(86)『三大グループの「自主品牌」(自主ブランド)戦略』

アップダウンを繰り返しながらも、今年にも日本を上回るとされる中国自動車市場。
住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

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第86回『三大グループの「自主品牌」(自主ブランド)戦略』

2006年に入り、「自主創新・自主品牌」(自主ブランド)という言葉は、中国の自動車業界だけではなく、産業界的にも最もホットな話題となっている。

自主ブランド車開発で先行している民族メーカー(吉利汽車、奇瑞汽車等)に比べ、海外メーカーとの合弁生産で規模拡大を図ってきた国有三大メーカー(第一汽車、東風汽車、上海汽車)は国からの優遇政策に恵まれ、高い利益を上げながら、自主開発が一向に進まない状況であり、世論・マスコミからも厳しいプレシャーを受ける立場に陥っている。
勿論、これまで三大メーカーが「自主ブランド」に全く関心がなかったというわけではない。
様々なアプローチを試みたものの、決して胸を張って成功したといえるようなものは生まれていないのが現状である。今回は、各社の戦略と現状を振り返ってみたい。

1.第一汽車
第一汽車は、第十一五ヵ年計画期間中に、117 億元を投入し、6 つのプラットフォームを整備し、自主ブランド車の生産を現在の年間 55 万台から 100 万台まで引き上げる壮大の計画を打ち出した。
第一汽車は、そのほとんどが自主ブランド車である商用車(トラック等)で順調に販売台数を伸ばしている。しかし、乗用車の自主ブランド戦略は出だしで大きな壁にぶつかっている。

すでに老朽化した「紅旗」ブランドの後継車として新紅旗(開発コード HQ3)の開発を進めている。
当初、天津トヨタのクラウン生産ラインで共同生産する計画であったが、国家発展改革委員会から、「トヨタの Crown Majesta との区別がつかない。」「自主ブランド車としての要素が足りない。」として、長春での生産を命じられた。そのため、発売時期が大幅に遅らせざるを得なくなっている。

さらに、10 億元、3年間を費した「奔騰」も、マツダ 6 の要素を多く取り入れたため、世間では、一汽の自主ブランドは単なる外国車のコピーというイメージが付きまとってしまっている。

2.東風汽車
東風汽車は、本来、トラック専業メーカーとして、すべて「自主ブランド」を生産してきた。近年、フランスの PSA、日本の日産、ホンダと合弁企業を設立し、乗用車の生産を行っており、乗用車については専ら外国ブランドに全面依存すると思われている。

しかし、東風汽車は、国の自主ブランド奨励政策を受けて、密かに乗用車の開発を始め、2007年末か 2008年初めに発売する計画があるとも噂されている。

3.上海汽車
上海汽車は、三大メーカーの中で最も自主開発に注力してきたものの、これまで紆余曲折な道を歩んできた。当初、上海汽車は、合弁相手である VW に期待を寄せていた。サンタナのプラットフォームを VW からもらい、自主開発を進めようという計画であったが、最終的には VW 側に拒否されてしまった。

その後、GM から多目的車を導入し、生産したものの、ヒット商品とはならなかった。しかし、聡明な上海汽車は、GM からチャンスを得た。
GM が苦境に陥った大宇汽車を買収し、多くの開発が完了した車種を入手したことである。これにより、中国にも GM ブランドで新型車を投入することができたのである。

そして自主ブランドでの車両開発を本格化させる。上海汽車は、まず 2005年1月、韓国の双龍汽車の過半数株を取得した。さらに英 MG Rover からローバー75、ローバー 45 のプラットフォームとエンジンの知的所有権を購入した。
その後、元 MG ローバーの R&D 部隊を受け入れ、上海汽車の自主ブランド車の開発を急いでいる。

上記のように、三大メーカーのそれぞれ苦悶に満ちた自主開発へのロードマップを見ると、今後、中国メーカーの自主開発車の市場投入が決して平坦ではないことを伺わせる。

<張 浩群>