中国ビジネスの達人(6)『下戸が中国人の本音を引き出すに…

今や自動車業界にとって避けて通れないテーマの一つである中国進出。住商アビーム自動車総研のアドバイザーであり、過去 15年の中国駐在・ビジネス経験を経て現在も浙江省杭州にある日産ディーゼルの製造会社に出向中の三木辰也が、中国進出に携わる方々に対して中国ビジネスのヒントを伝授するコーナーです。

第6回 『下戸が中国人の本音を引き出すにはどうする?』
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中国で相手の本音を引き出すとなると、まずはお酒という話になることが多いと思います。でも、中にはほんとに体質的にお酒は駄目とか、そこそこは飲めるが中国の人たちのペースにはついていけないという方は多いと思います。今回は、そんな下戸の方々が中国で上手くやっていくためのヒントです。
本音を引き出すと言っても、社外なら相手が売り手か買い手か、社内なら相手が上司か部下かによっても異なりますよね。その中でも難易度が高いのは、相手が買い手の場合、相手が社内の上司の場合というのは中国でも例外ではありません。

中国では相手が買い手の場合(即ちこちらが何かを売ろうとするとき)、先方を食事に誘っても、一対一になることはあまり多くありません。こちらが中国語が話せない場合は通訳が入るのは当然としても、相手方も通常お付きを従えて複数どうしでの会食になることが多いものです。そうなると、相手も警戒して、あるいは周りの目もあって、あまり本音をしゃべってくれないケースが多く、苦労します。

社内でのコミュニケーションの場合、相手が部下の場合は、内容によりますが、中国でも部屋に呼び単刀直入に本音を聞くことが多いようですが、相手が上司になると日本のように二人で食事や一杯飲りながら本音を語り合うということはあまりありません。

ということは、この国では酒がのめるからといって相手の本音を引き出せるわけではないということになりそうですね。 実際に、中国人同志の間でも本音を引き出すのは、酒の席でというよりも会社を出た後で電話を入れて話すとか、自宅に呼んで話すなど、他人に知られないような形で行われることが多いようです。そこには、文化大革命から引きずっている警戒心からの行動様式が背景にあると言われています。
また、若い世代や都会の人たちは、かなりオープンになっていますので、単刀直入に聞いてもズバッと本音を語ってくれる人たちも徐々にですが、増えてきています。

じゃあ、「お酒は不要なの?」とほっと安心されるかもしれません。がっかりされるかもしれませんが、やっぱり飲めた方がいいのは確かです。
本音を聞くというよりは、人間関係を作る、相手の性格を知る、本音を聞くときのタイミングを見極める、機嫌のよしあしを測る尺度を持つ、といった意味でお酒の力は絶大です。自分が飲めなければ飲める人を送り込んでそこらの見極め術をヒアリングしておいてから、本音トークに臨むのがいいかもしれません。

<三木 辰也>