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コラム

ハイブリッド車の方向性

◆ホンダ、ハイブリッドスポーツカー「CR-Z」
量産ハイブリッドカーとして、世界で初めて6速MT搭載モデルも用意

ホンダは2月26日、新型ハイブリッドスポーツカー「CR-Z」を発売する。ベースグレードの「β」と装備を充実させた「α」の2グレードを設定し、それぞれに6速MTとCVTを用意する。価格は6速MT、CVT共にαが249万8000円、βが226.8万円。

<2010年02月25日号掲載記事>

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【ホンダの新型ハイブリッド車】
ホンダの新型ハイブリッド車「CR-Z」が先週発売となった。インサイトに続くハイブリッド専用車種で、今回はスポーツカーらしさを全面に打ち出した製品となっている。月産 1,000台の計画となっているが、既に発売前に 4,500台の予約受注を獲得しており、好調な立ち上がりが期待されている。

ホンダとしては、インサイト、シビックに続く 3 車種目のハイブリッドカーとなるが、これまでとは路線を大きく変えてきた。ホンダのプレスリリースにも「ハイブリッドカーの可能性をより広げ、新しい楽しさを全身で感じて頂きたい」とあるが、先進的で軽快そうなデザインや、実質二人乗りのパッケージからも、単なるエコカーとしてこのクルマを売り出したいわけではないことは伝わってくる。

今回は、こうしたハイブリッド車の方向性について考えてみたい。

【ハイブリッド車の成熟度】

ハイブリッド車が発売されて 10年経ち、製品としての成熟度も確実に高まっていると考えている。昨今のトヨタのリコール問題で、電子化や電動化の問題点にも議論が及んでいる報道を見かけるが、企業としての対応に関する問題と電子化や電動化に関する技術的な問題については、切り分けて議論するべきであろう。少なくても、今回の問題でハイブリッド車や電気自動車のような回生ブレーキ機構を搭載し、ブレーキ制御を電子化すること自体が危険だとか技術的に未成熟だと結論付ける必要はないと考えている。

この 10年間で、各自動車メーカーは無数の技術的な課題にも取り組んできているし、現在のハイブリッド市場の拡大も、こうした製品としての成熟度が高まってきたことも大きな要因であろう。勿論、昨今の環境意識の高まりや、世界各国での政策的な補助の貢献もあるであろうが、仮にそうした後押しがあっても、製品として未熟なものであれば、ここまでのハイブリッドブームには至らなかったと考える。

いずれにしても、現在、先進国市場を中心に大きな需要を抱えるハイブリッド市場には、多数の自動車メーカーが新商品を開発し、投入しようと開発を進めている。トヨタに追従し、早くからこの市場に参入してきたホンダであるが、2年前までは、トヨタに大きく差をつけられていた。しかし、昨年の 2 代目インサイト発売によって勢いを取り戻し、国内市場にハイブリッドブームを巻き起こしたことは記憶に新しい。

【多様化が進むシステム】

ハイブリッド車を開発する自動車メーカーが増えたことで、ハイブリッドシステム自体の多様化も確実に進んでいる。元々、ハイブリッド車の定義は、二つの動力源を持つクルマのことであったが、現実的には、エンジンとモーターの両方の動力源を持つクルマのこととして認識されている。

そのエンジンとモーターのそれぞれの役割が各社のハイブリッドシステムによって異なっており、エンジンの依存度が高いシステムもあれば、モーターの依存度が高いものもある。例えば、トヨタのプリウスの駆動システムは、ストロングハイブリッドと呼ばれるものであり、エンジンだけでもモーターだけでも走行が可能である。一方で、ホンダのインサイトのシステムは、マイルドハイブリッドと呼ばれるものであり、モーターはエンジンの動力補助を行うのみで、モーターだけでの走行はできない。

それぞれのシステムに特徴があり、どちらが良くてどちらが悪いということでもなく、顧客のニーズに合わせて選択すべき問題である。もっと言えば、100%ガソリンエンジンで走る既存のガソリン車や、100 %モーターで走る電気自動車も含めて、市場・用途ごとに使い分け、それぞれの長所を活かす形にしていくべきであろう。

【ハイブリッド車の方向性】

参画する自動車メーカーも、その駆動システムも多様化が進んでいるハイブリッド車であるが、商品コンセプト自体は、ハイブリッド専用車種もガソリン車からの派生車種も、まだそこまで多様化が進んでいなかったのかもしれない。環境性能に優れたハイブリッド車の特徴をどう活かすか、そう考えることで、これまでのハイブリッド車は、大きく以下二つに分類できると考えている。

(1)コスト重視型商品(エコロジー×エコノミー)
燃費性能を追求し、コストメリットを打ち出している商品。環境性能を追求した結果、一目でハイブリッドカーと分かる外観になっており、環境意識が高いユーザーの満足度も高めるという利点もある。プリウス、インサイトなど。

(2)ステイタス重視型(エコロジー×ステイタス)
既存車種よりも環境性能に優れることを付加価値として提供する商品。ハイブリッド化に伴い、バッテリーやモーター等の部品を搭載する結果、派生車種の場合、ガソリン仕様のものに比べて、高価になるため、ハイブリッドシステム以外の部分でも装備を追加し、高級感を高めているものも多い。LS600h、クラウンハイブリッドなど。

もちろん、この二つの中間商品のようなものもあるだろうが、基本的には環境性能に優れるという性能によって、コストメリットを提供するものと、ステイタスを演出するものとの二つの方向性にあると考えている。

こうした自動車メーカー側のマーケティングの方向性の影響により、ハイブリッド車は燃費性能に優れる、高級感があってカッコイイ、という消費者イメージが醸成されつつある。そこにエコカー減税のような政策的支援も加わり、ハイブリッド車のお買い得感が高まった結果、空前のハイブリッドブームに至ったと考えている。

【新たな方向性へのチャレンジ】

今回発売になった「CR-Z」は、前述の二つのコンセプトとか異なる、新たな方向性へのチャレンジと考えている。ハイブリッド車の加速性能を活かしたスポーティな演出、いわばエコロジー×スポーティである。勿論、これまでも、ハイブリッド車の加速性能を特徴として謳ってきた車種はあったが、あくまでも特徴の一つであり、スポーティであることを全面に打ち出したものではなかった。

こうした新たなチャレンジが市場を開拓できるか、注目している方も少なくないであろう。ハイブリッド車に限らず、今後、クリーンエネルギー車を普及させていく上でも、環境性能を活かして実現する付加価値の方向性を模索し、チャレンジしていく必要があるはずである。

今回のメールマガジンの冒頭に、このテーマに関する 1 クリックアンケートを掲載させて頂いた。読者の皆様にも、忌憚ないご意見を賜りたいと願っている。

<本條 聡>

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