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コラム

中国ビジネスの達人(4)『リースによる設備調達は有効?』

住商アビーム自動車総研のアドバイザーであり、過去 15年の中国駐在・ビジネス経験を経て現在も浙江省杭州にある日産ディーゼルの製造会社に出向中の三木辰也が、自動車業界にとって避けて通れないテーマの一つである中国進出に携わる方々に対し、中国ビジネスのヒントを伝授するコーナーです。

第4回 『リースによる設備調達は有効?』
『代金回収で困らないためには?』
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今回もお金にまつわる話を二つ書きます。
一つは調達サイド、もう一つは運用サイドに関連する話ですが、それらの核心部分は別の機会に譲り、今回はリースによる設備調達と代金回収のトラブル解決策についてお話しします。

● リースによる設備調達は有効?

「中国にはリースという概念がないと聞きましたが本当ですか?」「中国にはリース会社がないそうですが間違いありませんか?」とご質問を受けることがあります。

正解はいずれも「No」です。
「リース」という概念自体はあります。中国語では「租賃」と言います。また、外国資本はもちろん、中国資本のリース会社も存在しています。

しかし、こういう質問が出てくるくらいにリースが普及していないのは事実です。

実際、中国の地場企業が設備調達の手段としてリースを利用することはあまりありません。日本もかつてそういう時代がありましたが、機械や設備は自社で購入・所有している方が、もっといえば資産規模は大きければ大きいほど銀行からの資金調達時の担保価値・信用力が強まって有利だという意識を持つ経営者が少なくありません。

また、リース会社側も現在はまだ保全措置・換価システムが不十分だと見ているようで、代金不払いの際にリース資産の保全、引揚げ、処分がうまく機能しない、時間が掛かるという意識から慎重姿勢を崩していないことも背景にあるようです。

海外資本の場合、90年代初めにリース専業系や銀行系など多数の日系リース会社が合弁のリース会社を設立し、中国の地場企業向けにリース事業を開始しましたが、その多くが焦げ付き、90年代半ば頃には多くが撤退を余儀なくされました。その後、90年代後半から再び日系リース会社が進出していますが、多くはほぼ日系の進出企業向けに限定した事業展開になっています。

そういう意味で中国地場企業にとってはリースはまだまだ将来の話かもしれません。日中合弁での進出を検討されている、もしくは進出済みの企業にはぜひ日本のバランスシート経営の考え方や、その中でのリースの活用を中国側に移植してほしいと個人的には思っています。

● 代金回収で困らないためには?

資金立替が全く発生しないビジネスモデルを作ることができればそれに越したことはないのですが、なかなかそうもいかないのがビジネスですので、予防的に契約で歯止めを掛けるか、運用面で管理体制・保全体制をしっかりするか、事後的なトラブルシューティングシステムを設けるか、をまずは考えておく必要があります。

まず予防措置についてですが、通常、中国での裁判は地域保護主義、つまり、地元の企業に有利な判決を出す場合が多いと考えておかなければなりません。従って、自社に有利な裁判管轄を把握し、契約書にも盛り込んでおきたいものです。

また、事後措置についても、最悪の場合にはリスケや割引など多少の損失や費用は覚悟して一部でも代金回収できるような法的効力のある文書を相手方から取り付けることが必要でしょう。特に相手方有利の裁判管轄になってしまった場合や、自社にも非があって訴訟で必ずしも有利とは言えない場合です。

いずれの場合も契約や法律の問題になりますから、きちんとした顧問弁護士を雇っておくことが出発点になります。顧問弁護士抜きではかなり苦労すると思います。(トラブルシューターとして地元の有力者や党・政府機関に仲介に入ってもらう方法もあり、実際そうして成功している日本企業もありますが、これは他の新たなリスクを抱える可能性もあるので慎重に対応したいところです。)

中国固有の問題として、大元の法律は全国共通ながら細かい法体系は地域まかせのため、(あくまで日本人的・個人的な見解ですが)地域ごとの法体系は整備されていないか、整備されていても混乱・矛盾も結構あり、解釈になると各地で全くマチマチという状況があります。しかも、上海、北京、広州等の大都市では裁判官も優秀・公平なことが多いのですが、地方に行くと法知識や訴訟経験を疑いたくなるような裁判官も多い(自社の顧
問弁護士が地方の裁判官に法律を教えることも結構ある)といわれます。

どうやって顧問弁護士を如何に選ぶかですが、サプライヤーの場合と同様に、他の日本企業の顧問弁護士をしている弁護士の起用は比較的安全な方法と言われます。近くにそのような弁護士がいない場合は、スポットベースの簡単な案件で相談してみて、弁護士の対応や成果で判断してみる方法をお勧めします。いずれの場合も、顧問契約はまず年間数万元程度で結び、日頃からよくお互いにコミュニケーションし、自社の販売方法や客先筋等
を弁護士に理解してもらっておくのが、適切な対応、迅速な解決の糸口になると思われます。

最後に運用面での代金保全策ですが、これは万国共通です。与信情報を必ずリアルタイムで把握・対応できる社内管理システムを作り、初期動作で誤らない・遅れないこと、相手の信用力を過信せず、変化があればにすぐに供給を減らすとか、回収条件を変更する等、機動的な方策を日頃から取っておくことが効果的というのは中国でも例外ではありません。

<三木 辰也>

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