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コラム

消費者嗜好とコンパクトカー販売戦略

(5月車名別新車販売、「ヴィッツ」が4ヶ月連続首位。)

日本自動車販売協会連合会が発表した乗用車車名別販売台数(登録車)によると、トヨタの「ヴィッツ」が10,848台でトップとなった。2位カローラ、3位フィットで1~3位は前月と同順位であった。

<2005年06月06日号掲載記事>

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【引続き販売好調な小型車販売】

5月月間の車名別販売ランキングのトップ 5 はコンパクトカーが独占する状態である。今年の 2、3月も同様の車種が上位を独占しており、コンパクトカーブームはまだ終わりそうにない。

<2005年 5月 国内乗用車単月販売台数>
1 位 トヨタ  ヴィッツ  10,848台
2 位 トヨタ  カローラ  10,694台
3 位 ホンダ  フィット   8,775台
4 位 日産   ティーダ   7,209台
5 位 日産   ノート 7,067台

出所:日本自動車販売連合会

上記傾向が昨年度から継続していることは、以下の’04年度の車名別販売ランキングのトップ 10 より明らかである。

<2004年度販売台数(04年4月~05年3月累計)>
1 位 トヨタ  カローラ   163,181台
2 位 ホンダ  フィット   147,435台
3 位 日産   キューブ   114,563台
4 位 トヨタ  ウィッシュ  112,437台
5 位 トヨタ  クラウン   100,391台
6 位 トヨタ  パッソ    97,567台
7 位 日産   マーチ    88,274台
8 位 トヨタ  アルファード 83,887台
9 位 トヨタ  ヴィッツ   82,050台
10 位 ホンダ  オデッセイ  78,813台

出所:日本自動車販売協会連合会

トップ 10 位の内、コンパクトカーは 7 車種ランクインしており、中でもトヨタは 4 車種と多く、ホンダのフィット、日産のキューブとビックスリーで上位を独占しており各社が鎬を削るクラスとなっている。

自動車の性能面でも他の中大型クラスに引けを取らない技術を駆使しており、エンジン性能の向上、低燃費等の高い経済性、車内空間の拡大、コンパクトカーらしからぬ外観デザインが最新コンパクトカーの共通ワードと言えよう。

何故近年になってコンパクトカー販売が好調を維持しているのか、その理由について以下考察したい。

【ブランドの嗜好性】

現代人のブランド嗜好性を纏めたブランドデータバンク(出典:ブランドの達人 3 万人のブランドデータバンク Water Studio+EPS Engine 著)より、コンパクトカーを保有するオーナーのブランド嗜好性を抜粋して紹介したい。(フィット、ヴィッツのオーナーデータを中心に抽出。)

平均年齢:   35 歳
男女比率:   4 対 6 (女性好みのマーケティングの影響あり)
平均世帯年収: 600~ 700 万円
嗜好の特徴:  保守的が基本。カジュアルな自由さも持つが出来るだけ多くの人が納得するものを選び、はみ出さないように心掛けている。

上記データはマーケティングで最も幅広い層をカバーするターゲットゾーンと一致する。つまり最も多くの日本人の嗜好をカバーする=保守的をベースにカジュアル(カワイイ)をエッセンスとして加えた絶妙なポジショニングにあることが販売好調の要因といえるのではないだろうか。

【嗜好対象についての共通項】

次にオーナーのライフスタイルに関する嗜好の代表例について見てみたい。

ファッション: バーバリー、ラルフ・ローレン、ユニクロ
バック:    ルイ・ヴィトン、コーチ、吉田カバン
ショッピング: セレクトショップ
量販店:    ヤマダ電機、コジマ
パソコン:   シャープ Mebius、ソニー VAIO
テレビ:    フジテレビ、日本テレビ
雑誌:     日経ビジネス、週間ダイヤモンド、ダイム、
アンアン、with

(以上、同 3 万人のブランドデータバンクより)

上記ブランドに共通することは、社会的に評価を勝ち得ているモノ及び、多様化するニーズを捉え流行をきっちりと追うことが出来るという安心感を与えるモノであるということである。

自動車分野ではコンパクトカーがその嗜好に合致している結果となっている訳であるが、確かにコンパクトカーはデザイン、カラー、使い方に幅を持たせることで様々なライフスタイルに受け入れられることを強調し、且つ可能としている。自動車という社会的評価のあるモノをより身近な存在(ライフスタイルの一部)へと意識を変化させたことがハヤリ(流行)モノとして受け入れられ、好調な販売を牽引しているのである。

【コンパクトカーは欧州戦略の担い手になる】

そのコンパクトカーが日本メーカーの欧州市場攻勢への起爆剤となる可能性が高い。欧州市場は一般的に道幅が狭いので中大型車の拡販は難しい。一方で個人の所有物を車に詰め込む傾向があるので日本のコンパクトカーの持つキャパシティーは充分に受け入れられるものである。デザイン性についても欧州車から学んでいる点も多く欧州市場で着実に受け入れられつつある。

事実、欧州自動車工業会(ACEA)のデータでは 2004年の欧州 18 カ国の乗用車新車登録台数は 14,516,879台で前年比 2.1 %増で、うち日本車は1,910,722 台で前年比 5.8 %増と好調である。中でもフランスで現地生産しているヤリス(日本名:ヴィッツ)は前年比 9.7 %増の 916,000台を販売しており、欧州市場において突出した伸びを記録している。

トヨタは欧州においても米国市場と同様、企業の現地化を開始している。(既に 5 工場を稼動)そこで生産する戦略車は主にコンパクトカーであり、欧州における環境基準をクリアする上でも燃費の良いコンパクトカーを足掛かりに先日発表したラグジャリーラインの「レクサス」販売のシナジー効果へと繋げたい意向であろう。

他のビックスリーもトヨタ同様にコンパクトカーを主力に欧州市場での販売拡大を虎視眈々と狙っており、コンパクトカーは各メーカーにとって収益性の低さから脇役的な存在であった過去から脱却し、戦略上の主役として頭角をメキメキと現している。

<大谷 信貴>

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