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コラム

電子化がもたらすものづくりへの影響

◆日産、国内4工場一時停止。日立オートモティブシステムズ製ECUの納入遅れ

日産は14日から3日間、栃木工場、追浜工場、九州工場、日産車体九州の計4工場で生産ラインを停止する。計1万5000台の生産に影響が出る模様。他の国内メーカー2社の生産にも影響が出る見通し。

日立が外部調達している集積回路(カスタムIC)の1つの納入が、7月に入って遅れているという。調達先のメーカー名は明らかにしていない。

カスタムICの調達先は1社で「開発に2~3年かかる為、調達先を増やすことは難しい」と日立製作所の本田恭彦専務。納入先は9割が日産といい、「他の2社への影響は数千台程度」としている。日産はECUの購入を継続する方針だが、損害賠償などの対応については「まだ分からない」という。

<2010年07月12日号掲載記事>

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【1社への調達依存】

日立オートモーティブ製 ECU の納入遅れに伴い、日産では 3日間、4 工場で生産ラインを停止することとなった。現時点で、1.5 万台の生産に影響が出ると報道されているが、北米工場での生産にも影響が及ぶ可能性も示唆されている。カスタム IC の調達が遅れていることが原因とされているが、この部品を日立に供給しているという海外の半導体メーカーの生産状況次第では、更なる生産量への影響も懸念されている。

このカスタム IC だが、専用設計されている集積回路のことで、開発に時間がかかることもあり、1 社から全量調達することが一般的だという。この 1 社に依存していることが、今回のトラブルの最大の原因となっている。

【調達で重視すべきテーマ】

本メールマガジンでは、毎回冒頭で読者の皆様のご意見を頂くべく、1 クリックアンケートを実施している。前回のテーマは「ハイブリッド車・電気自動車用の二次電池の調達について」で、今後の二次電池の調達に関する方向性を質問させて頂いた。1 社から全量調達するべきか、複数社からの調達としるべきか、「大量生産によるコストダウン」「競争原理によるコストダウン」「多様化への対応」「リスク回避」という 4 つの方向性を選択肢として、ご意見を伺った。

結果詳細については、本メールマガジン末尾の結果発表を参照して頂きたいが、「大量生産」「競争原理」「多様化」という 3 つの選択肢への意見が多数を占めた。「リスク回避」については、この 3 つに比べて選択された方は少なかったが、今週同じ質問をしていたら、もっと回答者が増えたかもしれない。いずれにしても、どれか一つを重視するというよりは、これらの課題を総合的に捉えて判断していくことが求められる、というのが現実的な選択肢であり、前述の 4 つの中から選択肢として一つを選んでもらう、という質問自体に無理があったのかもしれない。ここについては、システムの都合上、ご容赦いただきたい。

この 1 クリックアンケートでは、読者の皆様にご意見を記述頂く欄も設けているが、今回読者の皆様から寄せられた意見の中で、いずれの選択肢を選んだ方にも共通して多く見られたキーワードが二つあった。「規格化」と「コモディティ化」である。質問のテーマが二次電池という、自動車部品としては特殊性の高いものがテーマとなっていたことも考慮せねばならないとは思うが、電子化が進む自動車部品全体でも、この二つのキーワードを考慮して今後の方向性を考えていくべきだと考える。

【電子化がもたらすものづくりへの影響】

ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)への注目が高まる昨今、近い将来、クルマは家電化(もしくは PC 化)すると言われるようなこともあるが、現実的にはそんなに簡単に変わるものではないと筆者は考えている。この議論は、いわゆるものづくりのアーキテクチャ論に関するものであり、現在のクルマは、各構成部品が複雑に擦り合わせられて一つの機能を成立しているインテグラル型製品であるが、将来的には、白物家電やパソコン、自転車のように、独立した機能を持つ各構成部品を組み合わせれば成立するモジュラー型製品になるのではないか、という意見もある、ということである。例えば、電気自動車であれば、信頼できるメーカーから、モーターやバッテリー、その他主要部品を買い集めてこれば、誰でも作れる時代が来るのでは、というようなことである。

クルマという製品が、人命をも左右する移動手段として利用される以上、高いレベルでの性能、品質、信頼性が求められるため、現実的には、誰でも作れる時代、というのは考えにくい。走る、曲がる、止まるという走行性能そのものも、一つの構成部品がそれぞれ機能を果たしているわけではなく、複数の部品が複雑に連携して成立していることも、その難易度を高めている。だから、筆者は、クルマが家電化するわけではない、と考えている。

勿論、クルマという製品概念自体の多様化も進むと考えられ、中には、家電化(PC 化)が進んだ形態の製品も出てくるとは思うが、全てのクルマが家電化(PC 化)するわけではないという意味である。

しかしながら、各構成部品の電子化が進む中、ある程度の領域で、こうしたモジュラー型ものづくりの要素を取り入れていくことになるとも考えている。

市場・消費者ニーズの多様化が進む中、これまで以上に多様なパワートレインで、多様な大きさ・価格帯のクルマを開発し、グローバルに拡大する市場に販売していくことを自動車メーカーは求められている。結果、自動車業界では慢性的な開発リソース不足に陥っており、自動車メーカー同士の提携関係も、かつてのような全面的な資本提携という形から、お互いの補完関係を重視した緩やかな提携を各社と結ぶ新たな局面で動き始めている。そういう意味では、業界構造そのものの方が家電化が進んでいるのかもしれない。

このある程度の領域でのモジュラー型ものづくりの要素という方向性を考える上でのキーワードになるのが、前述の「規格化」と「コモディティ化」の二つだと考えている。不足する開発リソースを補う上で、製品の差別化領域とはならない領域では、業界を横断する形での規格化を積極的に活用していくことが不可欠になるであろう。また、こうした規格化が進む領域では、コモディティ化も進行する可能性があると考える。

現時点でも、交換需要があるタイヤ、補機用 12V バッテリー、スパークプラグ等の部品は規格化が進んでおり、純正部品だけでなく、アフターパーツメーカーも参入することで、コモディティ化も進んでいる。また、車載ソフトウェアの開発等においては、JASPER に代表されるように、業界全体での標準化も始まっている。開発リソースを少しでも補うためにも、こうした流れは、徐々に浸透していく可能性があろう。

【規格化と共通化の活用】

今回題材として取り上げた調達の問題も、最大の要因は 1 社のサプライヤーに対する高い依存度にあることは間違いない。そもそも、なぜ 1 社のサプライヤーに依存していたかといえば、開発費やそこからくる製品コストを削減することが最大の要因であろう。今後、各部品の電子化が増々高まることを考えれば、ある程度の領域までは、自動車メーカー各社がそれぞれ取り組むというよりは、業界全体で規格化、共通化についても考えていくべきではないかと思う。少なくとも、一つの方向性の選択肢として、考える価値があるはずである。逆に、電子化が進むということは、ハードの部分やある程度のソフトの部分で規格化や共通化を進めても、残ったソフトの部分で各社毎の差別化を図ることも可能ではないかと考える。

サプライヤーの立場にたっても、単独で自動車メーカーの生産ライン停止による損害賠償リスクを抱えながら、そのリスクも見越した供給体制を作るというよりは、これまで以上に規格化、共通化を進めることで、万が一のトラブルの際は、他のサプライヤーが補完できる、といった形で、サプライヤー同士でリスク分散を図れる方が、健全で持続可能な業界を構築できるように思える。いずれにしても、今回の問題は、日立や日産に限らず、業界全体であるべき姿を考えるべきテーマだと考える。

<本條 聡>

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